毎日新聞の今朝の第一面、右上に5段抜きで、全国教委に教職採用の不正無しとの活字が躍っていた。全国の教育委員会からの回答によるのだが、何処だって、採用に不正ありと回答はしないだろうに。これじゃ、県政の回覧板といわれても仕方がない。
不正採用も昇進登用も権力を使った、地位のドロボー、人物の産地偽装、品質欺瞞であるが、それにくらべると、船場吉兆で、食い残りをまわされて、ありがたがっていたセレブお客と、吉兆のおもてなしは笑えてしまう。そんな有名につられて高い金払って、食ったやつがアホでしかない。結果は、だれも人生が転落するわけでもないし・・。
故人となったロシア語通訳、エッセイスト、米原万里の文庫本「魔女の1ダース」のなかの第3章、<言葉の呪縛力>で,福島県の山菜袋詰めの喜劇を書いている。話というのは、知人がそばが好きで、この福島県山採れならではの、購入した山菜入りのそばを料理、家人一同大喜びで大好評だった、ところが、後で残りのビニールをみて、悲鳴を上げた、空豆大の黒々としたかたまり、まがうことなくゴキブリの胴体だったのだ。もはや吐きながら、怒り心頭にはっし、ゆるせぬと袋の電話番号に電話した。
その顛末が凄い、飛んできた販売会社の社長、作業服の50過ぎの男は、その対応のまさに見事さには、読者も大道芸をみるように面白い、圧倒される。以下、本文から抜書きさせていただく。この展開、読者よどう判断されるか。
「イヤー、奥さん!悪かったねえ。いやだったろうねえ。気持ち悪かったろうねえ。」
「だどもねえ、奥さん。無理もないのよ。あの山菜はねえ、中国からドラム缶詰めで来るの。・・・ベルトコンベアにドラム缶の中のものを開けて、まず、その上を何度も強力な磁石を走らせるの。なぜだかわかるかね。」
・・・・・・・
「釘やら、ブリキの端っきれやら、錆びた工具やら、いろんな鉄クズが山ほど吸い寄せられて出てくるのよ。つぎに強力な扇風機を当てるの。なでだかわかるかね。」
「したらば、奥さん、出てくるわ、出てくるわ!髪の毛とか、藁とか・・・」
「次がパートのおばちゃんたちの出番。おばちゃんたちの目と手先で、選り分けていくのね。ここでまた出てくるのよ、ピラピラしたのとか、ヌルヌルしたのかとか、色々。ゴキブリなんていいほうだよ、奥さん。ヌルヌルしたのなんか、イヤでしょ!」
「だからして、ゴキブリ入ってくるっなんて無理ないのよ。許してね。・・」
・・・・・
(筆者註・このセリフのなんと素晴らしいこと、まるで、良質のアングラ芝居を視聴するごとしではないか。しかもこれ12年前の実話らしいのだ、12年前すでに産地偽装はあったのだ!)
そして、その奥さんは、この耳を疑いたくなるような話の展開に好奇心いっぱいで聞き入り、いつのまにか怒りも忘れ去り、あっというまに代わりの袋をもらって、男は風のようにさって行った。あとで、気がつくと、山菜の「販売元」が福島県で「産地」ではなかった。福島は山国、なら山菜との連想、この偏見に満ちた、
東京人のイマジネーション、その言葉の呪縛にわれを失ったのである。
全国教育委員会の教職採用に不正なしとは、回答用紙に回答されたことであるのだが、そうおもえた読者がどれほどいたのだろうか。だから、新聞を読んで、信じてはいけないと思うのだ・。まあ、出来れば読まないこと、これしかない。
不正採用も昇進登用も権力を使った、地位のドロボー、人物の産地偽装、品質欺瞞であるが、それにくらべると、船場吉兆で、食い残りをまわされて、ありがたがっていたセレブお客と、吉兆のおもてなしは笑えてしまう。そんな有名につられて高い金払って、食ったやつがアホでしかない。結果は、だれも人生が転落するわけでもないし・・。
故人となったロシア語通訳、エッセイスト、米原万里の文庫本「魔女の1ダース」のなかの第3章、<言葉の呪縛力>で,福島県の山菜袋詰めの喜劇を書いている。話というのは、知人がそばが好きで、この福島県山採れならではの、購入した山菜入りのそばを料理、家人一同大喜びで大好評だった、ところが、後で残りのビニールをみて、悲鳴を上げた、空豆大の黒々としたかたまり、まがうことなくゴキブリの胴体だったのだ。もはや吐きながら、怒り心頭にはっし、ゆるせぬと袋の電話番号に電話した。
その顛末が凄い、飛んできた販売会社の社長、作業服の50過ぎの男は、その対応のまさに見事さには、読者も大道芸をみるように面白い、圧倒される。以下、本文から抜書きさせていただく。この展開、読者よどう判断されるか。
「イヤー、奥さん!悪かったねえ。いやだったろうねえ。気持ち悪かったろうねえ。」
「だどもねえ、奥さん。無理もないのよ。あの山菜はねえ、中国からドラム缶詰めで来るの。・・・ベルトコンベアにドラム缶の中のものを開けて、まず、その上を何度も強力な磁石を走らせるの。なぜだかわかるかね。」
・・・・・・・
「釘やら、ブリキの端っきれやら、錆びた工具やら、いろんな鉄クズが山ほど吸い寄せられて出てくるのよ。つぎに強力な扇風機を当てるの。なでだかわかるかね。」
「したらば、奥さん、出てくるわ、出てくるわ!髪の毛とか、藁とか・・・」
「次がパートのおばちゃんたちの出番。おばちゃんたちの目と手先で、選り分けていくのね。ここでまた出てくるのよ、ピラピラしたのとか、ヌルヌルしたのかとか、色々。ゴキブリなんていいほうだよ、奥さん。ヌルヌルしたのなんか、イヤでしょ!」
「だからして、ゴキブリ入ってくるっなんて無理ないのよ。許してね。・・」
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(筆者註・このセリフのなんと素晴らしいこと、まるで、良質のアングラ芝居を視聴するごとしではないか。しかもこれ12年前の実話らしいのだ、12年前すでに産地偽装はあったのだ!)
そして、その奥さんは、この耳を疑いたくなるような話の展開に好奇心いっぱいで聞き入り、いつのまにか怒りも忘れ去り、あっというまに代わりの袋をもらって、男は風のようにさって行った。あとで、気がつくと、山菜の「販売元」が福島県で「産地」ではなかった。福島は山国、なら山菜との連想、この偏見に満ちた、
東京人のイマジネーション、その言葉の呪縛にわれを失ったのである。
全国教育委員会の教職採用に不正なしとは、回答用紙に回答されたことであるのだが、そうおもえた読者がどれほどいたのだろうか。だから、新聞を読んで、信じてはいけないと思うのだ・。まあ、出来れば読まないこと、これしかない。