つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

カトレア

2012-11-30 17:12:36 | ジャズ

 ラン科の一種、洋蘭の代表花として知られる。その豪華さから花の女王ともいわれている。
 中南米の熱帯高地が原産地で、岩や樹皮に着生して花を開く。原種の交配から数百にのぼる品種が生まれた。

 その後、近似の他属との交配に成功し、さらに美しい多くの改良種が出現した。日本では温室栽培され、明るく豊かな花様と色彩を
 日の出の美しさに見立てて、「日の出蘭」と名づけられた。

 カトレアの名は、イギリス人の植物収集家ウィリアム・カトレアの名にちなむ命名。
 高価で高級な花だったが近年は栽培が盛んになり、需要も多く、鉢植えや切り花として多く出回るようになった。

 花期は長く一か月ぐらい咲きつづける。多くは冬から春にかけて花を開く。
 花は直径15センチぐらい。花色は白、桃、紅、黄、紫紅、橙黄色などがある。夏咲きの種類もあるが、俳句では華麗で美しい冬に開花
 するものを季語としている。


 ”カトレアやローマにふるきシャンデリア ”(鎌田 正男)・・・


 今日聴いたジャズ・・・


  JAN LUNDGREN TRIO・・・「PLAYS THE MUSIC OF VICTOR YOUNG」


  本作は、スウェーデンの貴公子、ジャズ・ピアニスト、ヤン・ラングレンのリーダーアルバム。
  ヴィクター・ヤング集。
  全13曲中、ボーカリストのステイシー・ケントが3曲(1、6、13)デボラ・ブラウンが3曲(5、9、12)
  テナー・サックス奏者のジョニー・グリフィンが2曲(2、10)に参加。ピアノトリオの曲5曲(3、4、7、8、11)という
  編成になっている。実にバラエティに富んだ、ヴィクター・ヤング集。


1・I DON’T STAND A GHOST OF A CHANCE WITH YOU・・・2・A WEAVER OF DREAM・・・3・SONG OF DELILAH・・・
4・GOLDEN EARRINGS・・・5・A HUNDRED YEARS FROM TODAY・・・6・STREET OF DREAM・・・7・SWEET SUE・・・
8・LOVE LETTERS・・・9・STELLA BY STARLIGHT・・・10・WHEN I FALL IN LOVE・・・11・ALONE AT LAST・・・
12・BEAUTIFUL LOVE・・・13・MY FOOLISH HEART・・・


  ゲストもそれぞれ、華を添えて味わいのある作品に仕上がっている。ヴィクター・ヤングの曲ではあまり取り上げられない曲を
  収められているところも聴きどころだと思う。


  LAN LUNDGREN(p)
  MATTIAS SVENSSON(b)
  RASMUS KIHLBERG(ds)

  special guest:

  DEBORAH BROWN(vo)
  STACEY KENT(vo)
  JOHNNY GRIFFIN(ts)


 2000年8月17日、10月12日、11月28日録音・・・



帰り花(かえりばな)

2012-11-29 15:14:03 | ジャズ

 初冬のころ、小春日和が続くと草木が季節はずれの花を咲かせることがある。
 これを帰り花、あるいは返り花、帰り咲、狂い咲、二度咲などという。この現象は、気温が高くなったために、花芽が急に発育して
 開花するのだけど、梅、桜、梨、躑躅(つつじ)、山吹、タンポポなど、日当たりを好む草木に多い。

 また、藤や木蓮など春に咲くはずの花芽が十分に発育しないで、冬の暖かさによって開くものもある。
 いずれも異常現象だけど、奇なる風情を楽しむことができる。

 古く「日本書紀」に履中天皇三年冬十一月の遊宴の折り、さかずきに桜の花が落ちて、天皇が「この花、非時(ときじく)にして来たれり」
 といってその珍しさをすこぶる喜ばれたとある。

 また、浮世草子「男色大鑑(なんしょくおおかがみ」には、”ある時、長田山の西念寺の庭に復花(かへりばな)咲きて、家中春の心に
 なりて見にまかりぬ”と桜の帰り花を見に出かけ、酒宴をする場面がある。

 葉の落ちた梢に一、二輪咲く花にはわびしい趣がある。


 今日聴いたジャズ・・・

 ENRICO PIERANUNZI / CHARLIE HADEN / PAUL MOTIAN・・・「SPECIAL ENCOUNTER」


 本作は、エンリコ・ピエラヌンツィ(ピアノ)チャーリー・ヘイデン(ベース)ポール・モティアン(ドラムス)
 三人が織りなす、滋味あふれるアルバム。一枚をとうして聴くと、ドラムスの音色が聴こえるのはラストの曲だけで、殆ど、ピアノと
 ベースのデュオのような趣向になっている。

 どの曲もスローテンポで演奏されていて、癒しの一枚、なごみの作品として重宝している。


1・MY OLD FLAME・・・2・YOU’VE CHANGED・・・3・EARLIER SEA・・・4・NIGHTFALL・・・5・MOーTI・・・6・LOVEWARD・・・
7・WALTZ FOR RUTH・・・8・MIRADAS・・・9・HELLO MY LOVELY・・・10・WHY DID CHOOSE YOU・・11・SECRET NIGHT・・


 11曲中、エンリコ・ピエラヌンツィが書き下した5曲(3、5、6、8、11)チャーリー・ヘイデンの曲(4、7、9)
 それに、スタンダード3曲で構成されている。

 ヘイデンの名曲、#4、奥様に捧げて書いたという#7が、とりわけ美しく、ピエラヌツィの書いた曲々がまた心に沁みる。
 

  ENRICO PIERANUNZI(p)
  CHARLIE HADEN(b)
  PAUL MOTIAN(ds except8)


   2003年3月6、7、8日録音・・・
 
 

 

紅葉散る

2012-11-28 16:52:53 | ジャズ

 秋の野山を美しく彩った紅葉の散るさまをいう。霜や風雨に傷み散り始めたり、地に散り敷いているさまもいう。
 散り敷いた紅葉を散紅葉という。

 秋の季語に「紅葉且つ散る」があるが、これは紅葉しながら一方で散る紅葉もあるという意。
 川の面に散って流れるさま、池の底に沈んだものが水を透かして見えるさま、地上に錦を敷くもの、いずれも樹上の紅葉に勝る趣がある。

 自然界が見せてくれる、「もののあわれ」の一例といえよう。


 ”紅葉また散り重なりし音を立て ”(清崎 敏郎)・・・


  今日聴いたジャズ・・・


  井上信平・・・「FIRST TAKE」



  本作は、1957年10月18日生まれ、日本を代表するフリュート奏者、井上信平のリーダーアルバム。

  メンバーに、大石学、坂井紅介、トミー・キャンベルというベテラン、ミュージシャンを迎え、各々のプレイが光る。
  溢れるスピード感とテイスティーな音色・・井上信平がくりひろげるJAZZフリュートの世界を堪能できる一枚。


1・ONLY TRUST YOUR HEART・・・2・SLEEPLESS NIGHT・・・3・NEARNESS OF YOU・・・4・WHISPER・・・5・WHEN THE MEADOW
  WAS BLOOMING・・・6・LIKE OLD TIME・・・7・I WISH YOU LOVE・・・8・TWO FOR THE ROAD・・・

 馴染み深い曲に加えて、井上信平が2曲(2、4)提供している。ラストの”TWO FOR THE ROAD”のしみじみとしたフリュートが
 心に沁みる。


  井上信平(afl fl bfl)
  大石学(p fender rhodes)
  坂井紅介(b)
  トミー・キャンベル(ds)


 井上信平:

 東京芸術大学付属高校卒業後、アメリカへ留学、ボストンのバークリー音楽院、ニューヨーク、マネマ音楽院に学び、卒業後、ニューヨーク
 にて活動を開始。著名なジャズクラブやアメリカ各国のジャズフェスティバル、レコーディングプロジェクト等で演奏を重ね、
 90年カーネギーコンサート、91年全米でCDをリリースするなど着実に活動の場を広げる。

 91年より定期的に日本へ戻り、全国コンサート、ライブ、スタジオミュージシャンとして、CM、ドラマなど幅広いジャンルで活躍。
 94年よりソウルを始め、東南アジアにも活動の範囲を広げる。

 97年にはジャズと邦楽を融合させたCD「中村喜春&小唄メッセンジャーズ」をプロデュース。98年にはクラウンレコードより
 「スケッチ・ブック」をリリースし大きな話題を呼ぶ。

 2000年には、ROLANDO主催でプロデュースも兼ねた4都市ツアーや小野リサ全国ツアー、小柳ゆき、織田祐二、ゴンチチなどとの
 レコーディング等で、アレンジャー、プロデューサーとしても注目を浴び高い評価を得た。

 2001年には、世界的なフリュートの巨匠、ハービーマンとの共演を実現させた、「スケッチ・ブック」が8月にリリースされた。
 現在、国内及びニューヨークなどのライブハイスで精力的に活動を続けている・・・

柿の木

2012-11-27 17:21:35 | ジャズ

 夏の間は一向にめだたなかった柿の木が、いまの季節になるときわだってくる。みごとに実っていたものが半分になり、四分の一になり、
 五つ、六つを数えるだけになると、ヒヨドリのとまっている姿がよくみえてくる。
 明るくってどことなく陰のある風景だ。

 昔から柿色という表現があるが、初冬の日に映える柿の実の色は何といったらいいのだろう。
 「四季をこの一瞬にあつめて冷たく光ってゐるこの色」といった人がいる。冷たさのある朱色の実には夕暮れ時の光がふさわしい。

 正岡子規の「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の鐘も、朝を告げる鐘ではなく夕べを告げる鐘であったろう。
 「柿などといふものは従来詩人にも歌よみにも見放されてをるもので」と子規は書いている。

 唐木順三氏になると、柿は礼賛の対象になる。”まことに一顆(か)明珠、あゝ、これが柿だ。柿の実だ。日本の秋だ。生命の充実だ。
 ・・・・・・柿は母の心をつたへる。ふるさとの色をつたへる ”(飛花落葉)

 エノコログサが枯葉色に染まりだしたのに、アカマンマの花はまだ赤い。道ばたのザクロの木に、かっと口を開いたままの実が一つ、
 ひからびてぶらさがっている。・・・・・師走が近い・・・


 今日聴いたジャズ・・・


 PER DANIELSSON TRIO・・・「TIME WILL TELL」


 スウェーデン出身、オスカー・ピーターソン、ビル・エヴァンスを聴いて育ち、BENGT HALLBERG などに習ったという経歴を持つ、
 PER DANIELSSON率いるピアノ・トリオ作品。
 エヴァンス・トリオのドラマーとして活躍したマーティ・モレルを迎えてのアルバム。

 DANIELSSONは、芯が通ったタッチとジャズ・ピアノの伝統的な美しさを兼ね備え持った逸材。
 スタンダードもあり、MARTY MORELLが書いた曲、”SONG FOR BILL”という美しいバラード・・ベースのRICHARD DREXLERが書いた、
 心温まる ”HEART COMMUNION”も美しく感動的。。聴くほどに、素晴らしさを感じる作品に仕上がっている。


1・OUTPOSTED・・・2・CONTRASY・・・3・YESTERDAY’S GARDENIAS・・・4・TIME WILL TELL・・・5・MY WISH・・・
6・HERE’S THAT RAINY DAY・・・7・SECOND CHANCE・・・8・SONG FOR BILL・・・9・IN YOUR OWN SWEET WAY・・・
10・HEART COMMUNION・・・11・STEP BY STEP・・・12・OLD FOLKS・・・


 all tracks written by per danielsson unless otherwise noted・


  PER DANIELSSON(p)
  RICHARD DREXLER(b)
  MARTY MORELL(ds)


  2010年11月6&7日録音・・・

茶の花

2012-11-26 15:36:51 | ジャズ

 江戸時代の俳人・山口素堂は「茶の花や利休が目にはよしの山」と詠っている。貞門、談林俳諧の特色である見立ての面白さを
 狙った作品といえる。
 「茶の花が咲いている。茶人利休の目には、これが吉野山の花盛りとも映るだろう」との意。
 茶の花を吉野の桜にたとえているのである。

 茶は葉を飲用とするツバキ科の常緑低木。チベットから中国南西部の山岳地帯が原産。インドの野生種には15メートルに達するものが
 あるという。中国では紀元前10世紀の周代に薬用とされ、日本へは8世紀の天平時代に薬用として伝わったという。

 僧栄西が12世紀に宋から種子を持ち帰り、宇治に栽植させたのが日本における本格的な茶のはじまりだといわれる。

 花は晩秋から初冬にかけて白色五弁に小さく咲き、濃い金色の蘂(しべ)を多数持ち、芳香を放つ。花の色や木の姿が茶人の嗜好にかない、
 「わび」「さび」の世界へと発展していった。また俳諧の題詠としても取り上げられた。


  ”茶の花の咲くまで忘れられし径(みち)”(小川 笹舟)・・・


  今日聴いたジャズ・・・


  JIM TOMLINSON・・・「BRAZILIAN SKETCHES」



 
  本作は、1966年9月9日生まれ、イングランド出身、ロンドンで活躍中のテナー・サックス奏者、ジム・トムリンソンの
  リーダー・アルバム。
  11曲中、A・C・ジョビンの曲9曲(1、2、3、4、5、6、8、9、11)コール・ポーターの曲、一曲(7)ルイス・ボンファ
  の曲、一曲(10)で構成されている。
  4曲には、奥様のステイシー・ケントが参加し、さすがに息の合った、心憎いばかりの歌が聴ける。

  トムリンソンはオックスフォード大学でPPE(政治、哲学、経済)の学位も取得している。音楽を本格的に学ぶようになったのは、
  20代からで、スタン・ゲッツ、レスター・ヤングなどから影響を受けている。


1・DREAMER・・2・十字架・・3・リジア・・4・SO NICE・・5・SO DANCO SAMBA・・6・ONCE I LOVED・・7・I CONCENTRATE
  ON YOU・・8・黒と白の肖像・・9・SHE’S CARIOCA・・10・THE GENTLE RAIN・・11・NO MORE BLUES・・・

 本作は、テナー、ヴォーカルを引き立てている、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスの存在が大きいことも特筆すべきことだと思う。
 個人的には、ジョビンの楽曲の中でもとりわけ好きな、黒と白の肖像をトムリンソンのテナーで聴けるのが嬉しい。


  JIM TOMLINSON(ts)
  COLIN OXLEY(g)
  JOHN PEARCE(p 1、4、6、11)
  DAVID NEWTON(p 2、7、10)
  SIMON THORPE(b)
  CHRIS WELLS(ds perc)

  STACEY KENT(vo 1、4、7、10)


  2001年4月13、14日録音・・・