つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

十五夜

2012-09-30 00:05:40 | ジャズ

 旧暦八月の十五日夜の月、つまり中秋の名月は、新暦では九月中のこともあれば、十月初旬になることもある。
 ことしはきょう九月三十日が十五夜だ。

 『独り幽篁(ゆうこう)の裏に座し/琴を弾じて長嘯(ちょうしょう)す/深林人知らず/明月来たりて相照らす』(王維)。
 夏目漱石は『草枕』の中で、この五言絶句を絶賛している。幽篁とは奥深い竹やぶのこと。

 当地では、もう街灯やビルの灯りに消されて、月の影をふむことがめったになくなった。
 それでも十五夜が近づけば、一輪の月を求めて空を仰ぐ。

 さいわい風が大気の汚れを吹きはらってくれたときは、月の光がさえ、こよい月色、白し、の趣に近づくことがある・・・


 今日聴いたジャズ・・・

 NILSON MATTA&RONI BENーHUR victor lewis&cafe・・・「MOJAVE」


 TRIO DA PAZの参加をはじめ、ジャズ界における最重要ブラジル人、ベーシスト、ニウソン・マッタの2011年の作品。
 本作は気鋭ギタリスト、ロニ・ベンハーとの双頭リーダー作。

 タイトルにもなっている、A・C・ジョビン、ピシンギーニャ、バーデン・パウエル、バートバラックなどの曲に加えオリジナルも
 披露している。

1・MOJAVE・・2・LAVENTOS・・3・CARINHOSO・・4・SAMBA DO VELOSO・・5・COPACABANA・・6・ROSA・・7・BADEN・・
8・CANAL STREET・・9・P・D・ON GREAT JONES STREET・・10・THE LOOK OF LOVE・・11・ERETZ・・
12・THREE EXPRESS・・・

 1、ジョビン・・2、3、6、ピシンギーニャ・・4、バーデン・パウエル・・10・バート・バラック

 ブラジル音楽にビバップの要素を融合させたスピード感溢れる演奏が楽しめる。カフェの緻密なパーカッション・ワークも
 聴きどころ。ニウソン・マッタのリーダー作は他に聴いていないけど、ロニ・ベンハーのリーダー作はコンプリートしている。
 彼の暖かく太い音色、バッチリ・スイング感はバリー・ハリスに見いだされただけあって、魅力的な作品が多い。


 RONI BENーHUR(g)
 NILSON MATTA(b)
 VICTOR LEWIS(ds)
 CAFE(perc)


 2010年11月1&2日、録音・・・



感動的だったダーグ・アーネセンのライヴ

2012-09-29 15:43:35 | ジャズ

 アーネセン・トリオを生で聴けるとは思いもしなかったので、まるで夢のような至福のひと時だった。

 『NORWEGIAN SONG 3』

 最初、本作の一曲目から始まった。演奏される前に、アーネセンさんから曲紹介があったので大体分かったけれど
 全曲、曲名が聞き取れなかったのが残念。。

 ”NORWEGIAN SONG”シリーズからのものが、ほとんどだったと思う。

 それぞれのソロもあり、アーネセンさんの透明感のある抒情的な音色・・・

 PAL THOWSENさんの、味わいがあり、優しく、キレのあるドラミングは流石だった。

 女性ベーシスト、ELLEN ANDREA WANGさんの包容力のある美しいベースライン・・
 ”プレリュード”という曲を歌を交えながら、ソロで聴かせて頂いた。
 優しく、美しく、とても魅力的な女性だった。

 三人とも、お人柄が滲みる出る演奏で、感銘、感動・・・

 よく、日本にいらしてくださったと感謝の気持ちでいっぱい。。

 最後にお礼の言葉を伝えられなかったことが唯一、心残り・・

 忘れられない貴重なライヴを聴かせて頂き、ありがとうございました・・・

 

思草(おもいぐさ)

2012-09-28 15:01:55 | ジャズ

 ハマウツボ科の一年草。「ナンバンギセル(南蛮煙管)」が正式な植物名。
 初出は『万葉集』巻10の 「道の辺の尾花がしたの思ひ草今さらさらに何をか思はむ」の一首。

 平安時代に、和泉式部が 「野辺みれば尾花がもとの思ひ草枯れゆくほどになりぞしにける」と詠み、『新古今集』に入賞した。

 九月ごろ、20センチ前後の花茎に淡紅紫色の花をつける。物思いに沈んだように横向きに咲く。
 また、煙管に似ているので、きせる草ともいう。

 『七草の次のひとつに思草』 (藤村克明)・・・


 今日聴いたジャズ・・・

 TETE MONTOLIU・・・「TEMAS BRASILENOS」
 
 (テテ・プレイズ・ボサノヴァ)


 本作は、1933年、バルセロナ生まれ盲目のジャズ・ピアニスト、テテ・モントリューのリーダーアルバム。
 テテが地元のエンサヨ・レーベルのために録音したリーダー作のひとつ。

 興味深いのは、一曲ずつ演奏、録音するのではなく、3曲ずつのメドレーとしてまとめて、合計15曲を演奏している点にある。

1・フェリシタージ/黒いオルフェ/オルフェのサンバ・・2・イパネマの娘/コルコヴァード/ワン・ノート・サンバ
3・オ・カンガセイロ/バイーア/ブラジル・・4・オサーニャの歌/ウェイヴ/ソー・ダンス・サンバ
5・デサフィナード/メディテーション/トリステーザ・・・


 テテ・モントリュー(p)
 ペドロ・ディアス(perc)
 ミケランジェロ・リザンドラ(ds)
 アルベルト・モラレダ(b)


 1973年、バルセロナにて録音


 テテ・モントリュー:


 1933年3月28日、バルセロナ生まれ。
 世界に誇る稀有な才能の持ち主である。生まれながらにして盲目だった彼は、7歳で点字による譜面を読み、ピアノのレッスンを
 始める。目覚ましいスピードで腕を上げていった。

 1956年、22歳にして、スペインを訪れたライオネル・ハンプトンと共演。1958年には初リーダー作、
 「TETE MONTOLIU Y SU QUARTETO VOL・1」(SAEF)を録音。
 1963年には同じ盲目の天才リード奏者ラサーン・ローランド・カークの欧州ツアーにも同行した。

 テテの60年代は、ヨーロッパを訪れたアメリカ人ミュージシャンたちとの共演に象徴される。ケニー・ドーハム(tp)、
 デクスター・ゴードン(ts)、ベン・ウェヴスター(ts)、ラッキー・トンプソン(ts ss)、アンソニー・プラクトン(reeds)など
 スペイン最高のジャズピアニストとして、ひろく知られるようになっていった。

 70年代から80年代にかけてと、彼はデンマークのスティープルチェイスやドイツのエンヤ、イタリアのソウルノートといった
 ヨーロッパのジャズ・レーベルに、リーダー作をコンスタントに録音。その中でも、ダスコ・ゴイコヴィッチと共演した、
 「アフター・アワーズ」(enja)は、当時ジャズ喫茶の人気盤となり、サイドメンとして残した彼の代表的名演に数えられる。

 90年代に入ってからはバルセロナ・オリンピックの時期に合わせて、日本制作企画も起用されたり、来日公演を行うなど、オスカー・
 ピーターソン張りのテクニックとスケールの大きい躍動感あふれる演奏で魅了した。

 日本でも人気の高いピアニストだったが、1997年8月24日バルセロナで死去。享年64歳という若さだった・・・

葛の花(くずのはな)

2012-09-27 00:03:51 | ジャズ

 現代歌人釈迢空(しゃくちょうくう)の「葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり」一首によって、
 葛の花は伝統的類型表現から近代写実表現へと脱皮、多くの人々に共感を与えた。

 葛は『万葉集』や『古今集』『拾遺集』など古くから和歌に数多く詠まれてきた。

 葛はマメ科の蔓(つる)性多年草。八、九月ごろ、10センチほどの花穂を立て、紅紫色の蝶形花をつける。
 下から咲き、葉に隠れがちなので、ひかえめな美しさがある。

 山上憶良によって秋の七草のひとつに加えられた。いたるところに生え、野趣に富む。


 「あなたなる夜雨の葛のあなたかな」(芝 不器男)・・・


 今日聴いたジャズ・・・

 FERENCE NEMETH・・・「NIGHT SONGS」

 本作は、ドラマーである、フェレンクネメスのリーダーアルバム。

 何と言っても豪華なメンバーに驚く。マーク・ターナー(ts)、クリス・チーク(ts)アーロン・パークス(p)リオーネル・ルケエ(g)
 ジョン・パティトゥィチ(b)そしてリーダーのフェレンクメネス(ds)

 全9曲、フェレンクメネスのオリジナル・・スタンダードが一曲もないのも珍しい。

1・WAR・・2・A NIGHT・・3・INTRO TO VERA・・4・VERA・・5・NEW SONG・・6・BALLAD FOR THE STARS・・
7・THEME TO L・L・・・・8・L・L・・9・LULLABY・・

アルバム内容は、1枚を通して、各々のプレイの巧さを存分に聴ける。NIGHT SONGS・・というタイトルにふさわしいのか、どうか分からないけど、
全曲、沈鬱な曲調がつづく。曲によっては、浮遊感を感じるフレーズもあれば、クラシカルな趣を感じさせるフレーズもある。
アップテンポで演奏される曲は一曲もない・・抑揚がなく同じような曲調なので、メンバーだけを見て期待を膨らませて聴けば意外な一枚と言えるかも知れない。


 これだけのメンバーが集結し、完成されたアルバム・・というところに意味があるのだと思う。


 MARK TURNER(ts)
 CHRIS CHEEK(ts)
 AARON PARKS(p)
 LIONEL LOUEKE(g)
 JOHN PATITUCCI(b)
 FERENC NEMETH(ds)

 2005年11月録音・・・


  

竜胆(りんどう)

2012-09-26 00:14:55 | ジャズ

 リンドウ科の多年草。乾いた山地や草地に自生する。
 竜胆は漢名で根を噛むと苦く、竜の肝のようだというのでこの名がついた。
 九月~十一月、茎先に紫色の筒状の花をつける。花冠は星形に五裂している。

 日のあたるときだけ開き、夜間や雨天、曇天には花を閉じる。古い時代に使われた和名の衣也美久佐(えやみぐさ)は、
 病のときに薬になるという意味であった。
 根は健胃剤として用いられた。


 竜胆を見る眼かへすや露の中・・(飯田蛇笏)・・



 今日聴いたジャズ・・・TERJE GEWELT with CHRISTIAN JACOB・・『INTERPLAY』


 テリエ・ゲヴェルトとクリスチャン・ジェイコブの奇跡の3部作といわれる中の一枚。
 他の2枚、「HOPE」「DUALITY」については、以前書いたので、今日はこの”INTERPLAY”を繰り返し聴いていた。

 マイルス&エヴァンスの曲、ジョー・ザビエルの曲に加えて、テリエ・ゲヴェルトとクリスチャン・ジェイコブのオリジナルを
 織り交ぜた一枚。二人の会話をしみじみと聴ける、得も言われぬ美旋律に聴き入ってしまう。

 ”HOPE”にも”DUALITY”にも感銘を受けたけれど、本作も同様に素晴らしい。ピアノとベースのデュオは基本的に好きで、いろいろ
 聴いたけど、この二人によるアルバムは格別に心に沁みるものがある。

 たまに拍手が聞こえて、ライブ盤なんだなぁと思う。それだけ、聴衆が聴き入っているのが伝わってくる。
 これらの3部作を目のあたりに聴けた人々が羨ましくてならない。

1・BLUE IN GREEN・・2・VOILA VOILA・・3・A REMARK YOU MADE・・4・MIDNIGHT MOOD・・5・LITTLE EYES・・
6・THE FENS・・7・MAY-BE・・8・WHEN SHE CONSOLES ME・・9・SOLAR・・10・NOVEMBER・・


 6、7、10はテリエ・ゲヴェルトのオリジナル、2、5、8はクリスチャン・ジェイコブのオリジナル・・・
 二人の作曲家としての才能にも感動してしまう。


   2002年10月13日 オスロにて録音・・・