つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

TRIO’ ” COME RAIN or COME SHINE ”で暮れる年

2012-12-31 01:17:59 | ジャズ

 花屋さんの店頭に、シクラメンの鉢が並んでいる。白い炎、
 唐紅の炎、ぼたん色の炎、べにふじ色の炎、と多彩な炎の色だ。

 かがり火花とか、かがり火草とか呼ばれるこの花には常に炎の
 感じがある。

 葉は密生していて、深い森を思わせる。その深い森の暗がりから
 すっくとくきが伸びて花をつける。花のつけ方が一風変わっていて、
 萼(がく)がうつむいているのに花びらは反り返って、上を向く。

 見事なほど、一斉に上を向く姿がかがり火にたとえられるのだろう。

 がんと闘って亡くなった著名な解剖学者、細川宏さんは、病床を
 飾る数々の花を見つめながら歌った。

 ”夜になると / シクラメンの花に灯りがともって / やわらかい
 ピンクの彩色光が / ハイウェーをくまなく照らす / シクラメンは /
 花の国のハイウェーを飾る / スマートなデザインの照明灯りだ ”

 病床の窓辺にあって、この花はどれほどたくさんの人々を励まし続けた
 ことだろう。もろくてかよわい花に見えるが、葉も花びらも厚くて
 触るとたけだけしい感じさえある。

 葉をかきわけると、大小のつぼみが、噴き出る生命力を抑えるように
 して出番を待っている。
 炎や照明灯になって一隅を照らしだすこの花の強靭な命が、病者にも
 伝わるのだろうか。

 銀座で花屋を経営する鈴木昭さんによると、甘やかされたシクラメンは
 逆境に弱いが、自然児として育てられたシクラメンは葉も堅く、砂漠の
 ように乾いた室内でも強さを保つという。

 過保護の戒めは人間と同じで、栽培さえきちんとすれば強靭な花らしい。


 年が暮れる。大地を裂いて、福寿草の芽が姿をのぞかせている。

 ”逝く年のわが読む頁限りなし ”たくさんの宿題を残したような、

 中途半端な気持ちのまま、今年もまた、除夜の鐘をきくことになるのだろうか。



  今年もいろいろなミュージシャンのライブに出かけた。
  印象に残る、ライブが甦る。その中で、12月に聴いた、TRIO’のライブ
  は昨日のように鮮やかに、まだ三人の醸し出す音色が耳に残っている。


  今年の最後に、とっておきの一枚を聴こう。。

  ”雨が降っても晴れた日も、君を愛してみせる・・・。
   僕は君といつも一緒さ・・・雨が降っても晴れた日も・・・”


  TRIO’ COME RAIN or COME SHINE・・・

  全11曲中、福田重男(p)のオリジナルが2曲、他は、スタンダードで
  構成されている。ナット・シモンの 「ポインシアーナ」ジョビンの
  「フォトグラフィア」も収録されている。

  福田氏のオリジナルは、学生時代に書いたという、美曲 「LULLABY」
  布川俊樹とのデュオ盤のアルバムタイトルにもなっている 、
  「CHILDFOOD’S DREAM」・・なんと良い曲を書く人だろう・・・

  スタンダードの一曲、一曲のアレンジにも創意工夫がされていて、
  月並みな曲で終わらないところも、三人のアーティストとしての
  クオリティの高さを思う。


1・IT’S ONLY A PAPER MOON・・・2・LULLABY・・・3・ALL THE 
  THINGS YOU ARE・・・4・POINCIANA・・・5・WHAT A DIFFERENCE
  A DAY MADE・・・6・COME RAIN OR COME SHINE・・・
7・HERE’S THAT RAINY DAY・・・8・WHEN LIGHT ARE LOW・・・
9・FOTOGRAFIA・・・10・CHILDFOOD’S DREAM・・・11・MY SHIP・・


  福田重男(p)
  森泰人(b)
  市原康(ds)


  2006年10月9、12日録音・・・


   みなさま よいお年をお迎えくださいませ 


  


  

じわ

2012-12-30 00:41:36 | ジャズ

 寒くなってきている分、せめて言葉だけでも温もりが欲しい。
 けれども、日本語には「寒い」に比べて、「あたたかい」の語彙が
 少ないらしい。「ぬるい」の変化が「ぬくもる」「ぬくまる」。

 「水ぬるむ」は春の言葉。「温温(ぬくぬく」は、不自由がない方の意味で
 つかわれることが多い。「ほかほか」は温まっている意味のほかに、軽率な
 さまや「うかうか」の意味もある。「ほんわか」はのんびりと心がなごんで
 いる様子。「じわ」とは劇場用語で「最高潮の場面で客席にざわめきが起こること」
 らしい。

 「じわじわ」と歳暮れの「ざわめき」が押し寄せることから、「じわする」も
  師走の語源説のひとつに加えられないものだろうか。。


  今日聴いたジャズ・・・


  PETER NORDAHL TRIO・・・「THE NIGHT WE CALLED IT A DAY」


 
  本作は、北欧のジャズ・ピアニスト、ペーター・ノーダールのリーダーアルバム。
  バラード集。全9曲中、ノーダールのオリジナルは一曲(3)、
  他はヘンリー・マンシーニ、バート・バカラック、マット・デニス(表題曲)、
  そして、チャーリー・ミンガスの曲が、一曲おきに配置されている。

 ”ミンガスという人は、終生ひたすら自身の理想とするジャズを追い求めた音楽家だった。
  しかし、その一方で彼は、美しさと切なさと倦怠が入り交った音楽を書いたメロディスト
  でもあった。ここでのノーダールは、マンシーニやバカラック、マット・デニスと
  いったポピュラーなコンポーザーの名品と並べることによって、彼の音楽がそれらに
  比肩し得る現代性、普遍性を持っていることを証明してみせる ”ライナーノーツより。。


  繊細なタッチと哀愁に満ちたメロディー・・・一音一音に魂のこもったバラードが
  心にしみる。
  
  やや弾んで演奏されるのは、ノーダールのオリジナルのみで、アルバム全体に
  静謐感が漂う。
  特に、最後の2曲、ミンガスの”WEIRD NIGHTMARE”マット・デニスの表題曲は限りなく
  美しい。


1・酒とバラの日々・・・2・DUKE ELLINGTON’S SOUND OF LOVE・・・3・POPCORN・・・
4・DIANE(ALICE’S WONDERLAND)・・・5・MOON RIVER・・・6・THE MAN WHO
  NEVER SLEEPS・・・7・WHAT THE WORLD NEEDS NOW・・・8・WEIRD NIGHTMARE・・
9・THE NIGHT WE CALLED IT A DAY・・・


  PETER NORDAHL(p)
  HARRY WALLEN(ds)
  PATRIK BOMAN(b)
  PONTUS LUNDGREN(b)



   2004年3月31日 ストックホルムにて録音・・・

  

冬木立

2012-12-29 16:02:27 | ジャズ

 冬の樹木を総称して冬木というが、冬木立はその冬木の立ち並んだものをいう。
 あまり低い木には用いず、ある高さ以上の冬木の群立に用いる。
 繁茂した夏木立とは違い、葉の落ち尽くした冬木立は、いかにも蕭条(しょうじょう)
 たる感じである。

 『栞草(しおりぐさ)』(1851年)にも”夏木立は茂りたるをいひ、
 冬木立は葉の脱落したるさまなどいふべし”と記述してある。

 俳諧時代にすでに季題として登場している。
 蕪村の 「斧入れて香におどろくや冬木立」、几薫(きとう)の”冬木立月骨髄に
 入る夜かな”などに冬木立の凄愴(せいそう)感と生命力への新鮮な驚きが
 感じられる。

 関連する季語として、「枯木立」「冬木」「寒林」などがある。
 近、現代俳句では、「寒林」が多く用いられている。

 葉をことごとく落とした落葉樹の並木などは、都会でもよく目にすることがある。
 冬の澄んだ空に映し出された小枝は、寂しげだけど美しい。木立の中の道を冬木道、
 枯木道ともいう。


 ”あかつきの 息をひそめて 冬木立”(石原 舟月)・・・


  今日聴いたジャズ・・・


  FREDDIE HUBBARD・・・「BLUES FOR MILES」




  本作は、ジャズ・トランペット奏者、フレディ・ハバードのリーダー・アルバム。

  全篇をミュート・プレイで展開したマイルスへのトリビュート作品。
  ワン・ホーン・カルテット・アルバム。

  マイルスへのトリビュート作品は多い。キース・ジャレットはマイルスの死から
  2週間後に 『バイ・バイ・ブラックバード』(ECM)を録音している。
  かつて、マイルスのグループで、オルガンやエレクトリック・ピアノを担当した
  キースのマイルスへの思いが、それだけ強かったのだろう。


  ハバードも彼の死から一か月も経たない10月24日に、ポーランドのワルシャワで
  マイルスに捧げるコンサートを行っている。その時の模様は、”アット・ジャズ・
  ジャンボリー’91~ア・トリビュート・トゥ・マイルス ”のタイトルで国内発売
  がされた。

  そして、翌年の4月に、トリビュートをする為、レコーディングを行う。
  それが、この作品である。


  アルバム内容は、全8曲、一曲(タイトル曲)を除いて、スタンダードを選曲している。
  中には、滅多に、ジャズ・ミュージシャンがとり上げない、”縁は異なもの”を書いた
  マリア・グレベールの ”ジプシー・ラメント ”が収められていて、スパニッシュ調
  のプレイで迫るハバードがいい。

  タイトル曲にもなっている ”ブルース・フォー・マイルス”はいかにもハバード
  らしいプレイで、8ビートを混在させたようなシャッフル風のリズムに乗って
  ミュート・プレイが表情も豊かに、フレーズを綴る。

  また、本作の魅力は、メンバーの良さにもあると思う。

  ビリー・チャイルズ(p)、トニー・デュマス(b)、ラルフ・ペンランド(ds)
  という布陣がバックをしっかり固めている。特に嬉しいのは、ビリー・チャイルズを
  起用していることにある。


1・THE THRILL IS GONE・・・2・I’M A FOOL TO WANT YOU・・・
3・降っても晴れても・・・4・枯葉・・・5・GYPSY LAMENT・・・
6・BLUES FOR MILES・・・7・SKYLARK・・・8・TENDERLY・・・


  フレディ・ハバード(tp)
  ビリー・チャイルズ(p)
  トニー・デュマス(b)
  ラルフ・ペンランド(ds)


  1992年4月3&4日 東京にて録音・・・


  ”大きな存在だった。そのひとがいなくなってしまったんだから、
   心にぽっかりと穴が空いた気分だ。目標を失ってしまったからね。
  わたしも含めて、みんなマイルスを目指して音楽をクリエイトしていた。

  時代が変わって、音楽のスタイルが変わって、とにかくいろいろなことが
  起こった。その中で、マイルスは常にトップを走っていた。
  そんな存在は二度と現われないだろうし、誰にも真似ができない ”


   ・・・・フレディ・ハバード・・・・




   

侘助(わびすけ)

2012-12-28 00:23:14 | ジャズ

 唐椿の園芸種。葉が細めで艶がある。花が一重で、花数も少なく、いかにも詫びた姿を
 示すところからこの名がついたという。

 また豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、加藤清正が持ち帰ったものを、千利休と同じ時代に生きた
 茶人侘助がこよなく愛したところから、この名がついたともいわれる。

 晩秋から早春にかけて、白い斑(まだら)の混じった紅色の一重の花が、ラッパ状に咲く。
 花弁はふつう五枚だが、まれに六枚のものもある。
 椿に似ているが、椿のように花数は多くない。

 その清楚なたたずまいから、茶花として茶人に好まれ、庭園などに植えられた。
 種類も白侘助、紅侘助、赤地に白が散在する小蝶侘助などがよくしられている。

 京都の大徳寺には 「豊公遺愛の侘助」という侘助の大木がある。また、京都の椿寺として
 名高い西京極の長福寺には、小蝶侘助の大木があり、花時には供花散華(くげさんげ)が
 行われる。

 侘助は椿の一種だが、俳句では別季語あつかいにしている。花期は、12月ごろから
 4月ごろと長い。


 ”侘助が咲けば この年 かへりみる ”(森 澄雄)・・・


 今日聴いたジャズ・・・


 ドミニク・ファリナッチ・・・「アドロ」


 本作は、1983年、オハイオ州クリーヴランド生まれ、ジャズ・トランペット奏者 ドミニク・
 ファリナッチのリーダーアルバム。M&Iレーベルから第5作目となる作品。

 ファリナッチのアルバムを書くのは、何枚目になるだろうか・・・

 ウィントン・マルサリスが彼のライブを聴いて惚れ込み、リンカーン・センタージャズ・
 オーケストラとの共演を実現させた、といういわば折り紙つきのトランペッター。

 バラードの巧さには定評があり、歌の国イタリア系ということもあって、その天性の歌心は
 他の追随を許さない。本作の録音当時、まだ23歳になったばかりという若さ。

 
 全10曲中、彼のオリジナルは2曲(7、8)、他は、アストル・ピアソラやイヴァン・リンス、
 ガーシュウィンらの曲も取り上げている。”アドロ”とは英語の”アドア”すなわち「あこがれ」
 「渇望」といった意味らしい。


1・ADORO・・・2・SUMMERTIME・・・3・ADIOS NONINO・・・4・BODY&SOUL・・・
5・UN CANCION PARA MATILDE・・・6・LOVE DANCE・・7・JANUARY・・・
8・CONTEMPLATION・・・9・MEA CULPA(夜は恋人)・・・10・I WISH YOU LOVE・・


  ドミニク・ファリナッチ(tp)
  ミルトン・フレッシャー(p)
  ヤスシ・ナカムラ(b)
  カーメン・イントレJr(ds)


  2006年3月22、27、28日 録音・・・


    侘助


  

 

深山樒(みやましきみ)

2012-12-27 16:35:21 | ジャズ

 ミカン科の常緑低木。関東以西、四国、九州などの山中樹下に自生する。
 茎は直立し、高さは一メートルほど。葉は輪生して長さ七~十センチの
 長楕円形。厚く、光沢がある。葉が樒に似ているところから名づけられた。

 樒はモクレン科の小高木で、まったく別種。四月ごろ、枝先に芳香のある
 小さく白い四弁花を円錐状につける。雌雄異株で結実は雌株だけである。

 花のあと約八ミリぐらいの球状の実を、晩秋から冬にかけてつける。
 冬になると真っ赤に熟し、美しい。有毒植物とされるが、乾燥させた
 葉は疝気(せんき)や足腰の痛みに効くといわれ、江戸時代は珍重された。

 「太山樒」「深山樒」などの表記もある。江戸俳諧には数多くの例句がある。
 
  冬になると、炭を焼いたりして、人間の素朴な営みがあった。山仕事の
 帰りに、上品で美しい深山樒などを折りとって、家苞(いえづと)にしたのが、
 日本の農民生活の原風景であった。


 ”降る雪に 深山樒は 高くあれ”(乙 二)・・・


  今日聴いたジャズ・・・


  ALAN BROADBENT TRIO・・・「’ROUND MIDNIGHT」


  本作は、ジャズ・ピアニスト、アラン・ブロードベントのリーダーアルバム。

  ベースに、ブライアン・ブロンバーグ、ドラムに、ジョー・ラバーベラを迎えての
  ピアノトリオ作品。

  全8曲中、アラン・ブロードベントのオリジナル2曲(4、5)他はスタンダードで
  構成されている。全曲でベースソロ、3曲でドラムソロが聴ける、三者三様、ベテラン
  らしいプレイを存分に堪能できる趣向になっている。


1・GROOVIN’HIGH・・・2・SERENATA・・・3・LAMENT・・・4・DIE VEREINBARUNG・・・
5・JOURNEY HOME・・・6・I’M OLD FASHIONED・・・7・’ROUND MIDNIGHT・・・
8・THE MAN I LOVE・・・


  オープニングにふさわしく軽快に演奏されるディジー・ガレスビーの名曲・・1
  穏やかで、しっとりしつつも楽しいルロイ・アンダーソンの代表曲・・2
  しみじみとした三人のプレイが美しいJ・J・ジョンソンの曲・・・3
  穏やかに演奏されるアラン・ブロードベントのオリジナル・・4
  同じく、アラン・ブロードベントのオリジナル、ミディアムテンポで演奏される・・5
  ジェローム・カーンの名曲、ピアノの美しさが際立っている・・・6
  タイトルにもなっている、セロニアス・モンクの代表曲、ここでもピアノが美しい・・7
  ラストはガーシュウィンの名曲。アグレッシヴにプレイする各々のプレイが凄い・・8


  ALAN BROADBENT(p)
  BRIAN bromberg(b)
  JOE LaBARBERA(ds)


  ロス・アンジェルスにて録音・・・