つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

秋の七草

2014-09-29 09:31:19 | ジャズ


  山上憶良が詠んだ秋の七草は「萩が花尾花葛花なでしこの花女郎花また藤袴朝貌の花」である。

  ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、そして最後のアサガオはキキョウのことだといわれている。

  それぞれの人にそれぞれの「私の七草」があるだろうけれど、丸谷才一によると、佐藤春夫に

  「からすうり / ひよどり上戸 / あかまんま / かがり /つりがね / のぎく/ みづひき」というみごとな

  自選七草の歌があるそうだ。

  ここの「かがり」とは、彼岸花の異称、とのこと。春夫はこの異称を好んだらしい・・・



   今日聴いたジャズ・・・


   GRANT STEWART・・・「PLAYS JAZZ BALLDS」
  

The Shadow Of Your Smile/Grant Stewart

   1971年6月4日、カナダ・トロント生まれ、ジャズ・テナーサックス奏者、グラント・スチュワートの

   リーダーアルバム。ワンホーンクインテット編成。

   スチュワートは豪快でかつ、ソウルフルなブローを聴かせるテナーマンであることは良く知られている。

   本作は、バラード集ということで、一音一音を丁寧にメロディアスにプレイしている。

   全8曲、オープニングの「I’M A FOOL TO WANT YOU」の出だしの一音がたまらなくいい!これでもうこの曲の

   良さが想像できた。デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、ピーター・バーンスタイン(g)のソロも心のこもった

   プレイを聴かせる。

   続く2曲目の「LUIZA」・・・A・C・ジョビンの名曲。テナーバージョンでは他に知らない。

   ピアノでは、スティーヴ・キューン、、トランペットでは、パオロ・フレス、、ギターでは、ロイ・ベンハー、あたりが

   この曲を採りあげている。

   ここでもステュワートのテナーに、ヘイゼルタインのピアノ、バーンスタインのギターが巧くからんでステキな曲に

   仕上がっている。


   続く3曲目「YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS」、、この曲もフェイバリットの一曲。


   エリック・アレキサンダーの ”バラッズ集 ”の中でのこの曲を聴き比べるのも面白い。

   ステュワートの方が少し早いテンポで演奏している。


   全体的に、ベース、ドラムは控え目なサポートで味わいのあるプレイを聴かせている。今回は、ヘイゼルタインがピアノを

   務めているところも聴きどころだろうか。バーンスタインは他のアルバムにも参加している。

   ステュワートはまだまだ若手、これからが楽しみなテナーマンとして注目している。



1・I’M A FOOL TO WANT YOU・・・2・LUIZA・・・3・YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS・・・4・FLAMINGO・・・
5・I’VE GROWN ACCUSTOMED TO YOUR FACE・・・6・EVERYTHING HAPPENS TO ME・・・7・SOPHISTICATED LADY・・・
8・煙が目にしみる・・・



     グラント・ステュワート(ts)
     デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)
     ピーター・バーンスタイン(g)
     ピーター・ワシントン(b)
     フィル・ステュワート(ds)



     2009年3月5日 NYにて録音・・・
     

秋の色

2014-09-27 13:14:09 | ジャズ


  秋気に心が染まるということは、移ろいの姿を心に刻むことだろう。

  九月は、月の初めと終わりの温度差が激しい月だ。

  「秋涼」が「やや寒」に移ろい、時には「冷気が身にしみる」夜を迎える。

  ザクロの実が日々、赤みをまし、ムラサキシキブの実が緑色から紫色に移る。

  夏の盛りから冬の盛りへと移ろう姿を心に刻むとき、私たちは、わずらわされることのない自分自身の時間の中で

  遊んでいる。寒山詩の中にある「天然無価の宝」をかいまみる気持ちになる。

  無価の宝とは、価値を超越した宝物の意味だという・・・



  今日聴いたジャズ・・・


  QUIET NIGHT WITH LOVE NOTES・・・
  



    井上真紀(vo)
    ヒロ川嶋(tp、vo)
    田辺充邦(g)
    松本雄二(b)
    田鹿雅裕(ds)


   スペシャル・ゲスト: NOEL PAUL STOOKEY(vo、g)他



     MOON AND SAND 


    底知れず深い真夜中の海
    温かく、かすかに香る大地
    あなたの口づけは限りなく甘く
    まるで月と砂浜のように柔らかい

    ああ、今度はいつ会うことができるのか
    夜は二人を置き去りにして
    ただ不吉な予感だけを残してゆく

    たとえ波がふたりの間を引き裂こうとも
    たとえもう二度とくちづけを交わすことができなくても
    今夜だけはこの二人の思うまま

    月と砂漠
    ・・・そして愛の魔法








































 

望み

2014-09-25 11:27:11 | ジャズ


  「望み」とは理想とするものを心に描き、実現するまで大切に抱きつづける心根のこと。

  思いが成就したときは「叶う」といいます。

  「願ったり叶ったり」というように「願い」も「望み」と同列にあります。

  「願う」の古形は「ねぐふ」で、「ねぐ」には「祈」や「労」の字があてられます。

  神仏の心を慰め、自らの精神を和らげる行為、それが「望み」です・・・



  今日聴いたジャズ・・・


  SERGE DELAITE TRIO・・・「TIME AFTER TIME」
  

  本作は、澤野工房を代表するピアニストの一人、セルジュ・デラートのリーダー・アルバム。

  ”LOOKING’ UP”の次作で6作目にあたる作品。


  ベースにジョージ・ムラーツを迎えて、より一層、セルジュ・デラートの作品としてもピアノトリオの作品としても

  クオリティの高いアルバムに仕上がっている。

  全10曲、選曲も多彩で曲順でも成功しているのではないだろうか。

  2曲目、8曲目には、短めながら、バッハのインベンションを採りあげ続いて”MOON AND SAND”、、”IN A SENTIMENTAL

  MOOD”にさりげなく変わっていくところなど、デラートのセンスの良さを感じる。

  曲によっては、ほどよいスウィング感あり、スローに展開する曲ではピアノの美しさ、またベースソロ、ドラムソロなど

  随所随所で聴くことができて、各々の巧さを堪能できる、ピアノトリオの好盤といえる。

  また、ジョー・ヘンダーソンの”RECORDAME”から、レノン・マッカートニーの”ミシェル”に変わる辺りも面白い選曲

  だな・・・と思う。


  ラストの「WHAT’S NEW」でのデラートのピアノがしみじみとしていて、とてもいい。

  数多くあるこの曲の中でも、デラートの演奏は高く評価したいと思う。



1・TIME AFTER TIME・・・2・INVENTION NO・13/ MOON AND SAND・・・3・RECORDAME・・・4・MICHELLE・・・
5・WITHOUT A SONG・・・6・THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES・・・7・STARDUST・・・8・INVENTION NO・4/
IN A SENTIMENTAL MOOD・・・9・ON THE TRAIL・・・10・WHAT’S NEW・・・




      SERGE DELAITE(p)
      GEORGE MRAZ(b)
      JEANーMARC LAJUDIE(ds)



      2009年3月3、4、5日録音・・・





  

   

秋分

2014-09-23 12:32:34 | ジャズ

  
  「暦便覧」には「陰陽の中分となれば也」とあります。

  秋の彼岸の中日で、昼夜の長さがほぼ等しくなります。春分の日と比べて平均気温は10°C以上高め。

  夏の名残りがまだあります。

  台風が多くなり、虫たちは地中に身を隠します・・・



  今日聴いたジャズ・・・


  TIERNEY SUTTON・・・「DANCING IN THE DARK」

  サポート陣は、お馴染みクリスチャン・ジェイコブ(p)、トレイ・ヘンリー(b)、レイ・ブリンカー(ds)の三人が務めている。

  5曲(1、4、5、7、12)にはオーケストラが入っているものの、きわめて控え目で、ベース、ドラムスも、彼女の歌唱を

  引き立てているかのごとく、控え目なサポートに徹している。


  クリスチャン・ジェイコブもさすがに長年、彼女の歌伴をしているだけあって、あ、うん の呼吸ともいうべき息の合った

  ピアノを披露している。

  全12曲、どの曲もしっとりしていて、シナトラの歌唱と比べてみると興味深いものがある。


  一曲一曲が”シナトラがこの曲を歌っていたかな?”と思うほどに、ティアニー・サットンの個性がよく出ている。

  傾向としては、彼女のアルバム 『BLUE IN GREEN』に通じるものがある。

  因みに、「WHERE OR WHEN」、、「DANCING IN THE DARK」などは、ダイアナ・クラールも好んで歌っていて、彼女の歌も愛聴

  している。二人とも、聴いていて疲れない、耳障りにならない点でも共通するところがあるかもしれない。


1・WHAT’S LL I DO・・・2・ONLY THE LONELY・・・3・I’LL BE AROUND・・・4・ALL THE WAY・・・5・I THINK OF YOU
6・WHERE OR WHEN・・・7・WITHOUT A SONG・・・8・I COULD HAVE TOLD YOU・・・9・AMILY・・・10・LAST NIGHT
  WE WERE YOUNG・・・11・FLY ME TO THE MOON・・・12・LAST DANCE / DANCING IN THE DARK・・・





      TIERNEY SUTTON(vo)
      CHRISTIAN JACOB(p)
      TREY HENRY(b)
      RAY BRINKER(ds)


      WITH 

      ORCHESTRA CONDUCTED BY CHRISTIAN JACOB



     2003年6月8、9、10日録音・・・




悲風(ひふう)

2014-09-18 11:39:16 | ジャズ


  秋風は「色なき風」。 

  平安時代の歌人紀友則の和歌「吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな」に詠まれて定着した言葉で、

  五行思想で秋を白に配したことに基づいた歌です。

  ことさらに切なげに寂しげに吹く秋風は、ほかの季節にない独特の風韻があり、「悲風」という哀愁にみちた風名があります。

  もの寂しく吹く風のさまを「蕭蕭(しょうしょう)」と表現します。

  てのひらをあわせて鳩の鳴き声に似た音を出す「鳩吹」遊び。

  この音のような秋の西風が「鳩吹く風」です・・・



  今日聴いたジャズ・・・


  ROBERT LAKATOS TRIO + 1・・・「BUMERANG」




  本作は、澤野工房を代表するピアニストの一人、ロバート・ラカトシュのリーダー・アルバム。

  ピアノトリオにハンガリー出身のテナー・サックス奏者、ガボール・ボラを3曲(3、6、9)に起用した、ワンホーン・カルテット

  作品。


  全10曲中、ミシェル・ルグランの1、マイルス・デイヴィスの4、ヴィクター・ヤングの5、リチャード・ロジャースの8、と

  スタンダードを採りあげて、ほかはメンバーのオリジナルで構成されている。

  ラカトシュのアルバムでは、「NEVER LET ME GO」を最初に聴いてすっかり惚れ込んでしまい、次に「あなたと夜と音楽と」、、

  「SO IN LOVE」、、「MARMOSET(ソロ)」、、「BUT NOT FOR ME」と聴いてきた。

  ラカトシュのピアノは、タッチが美しく、端正で、いつも真摯な演奏を聴かせてくれる。


  本作は、”YOU MUST BELIEVE IN SPRING”~ ハンガリーの流行歌である”涙腺を刺激するようなメロディの”FELTENI KELL”が、

  とりわけ美しく、オリジナルでも旋律に滲みでている安定感、さわやかさ、美しさは言うまでもない。


  ただ、一つ疑問に思うのは、何故、ピアノトリオでなく+1にしたのか、ホーンを入れたのはラカトシュの意向だったと思うけれど、

  ガボール・ボラが参加している、「BUMERANG」、「STEPS OF THE ROAD」、「PASSING MONTHS」では、それまでピアノトリオで

  リスナーの心に寄り添うような演奏から、曲調が、がらりと変わって、ボラをフィーチャーしたような演奏になり、個人的には、

  がっかりさせられた。そう思うのは私だけでしょうか?

  記憶に新しいところでは、イヴァン・パドゥア盤の”バート・バカラック集”・・・BOB MALACHが参加していることで、

  期待していただけに、一度聴いただけで、2度聴こうとは思わない、ハズレも甚だしいアルバムだった。

  ワン・ホーン・カルテットでは、ステキな作品が数多くある。


  イヴァン・パドゥア、、ロバート・ラカトシュはフェイバリット・ピアニストなので、失望も大きかったのかも知れない。

  ラカトシュ盤では ”ROBITHOLOGY” ”SEPIA”には食指が伸びない。次回はぜひ、ピアノトリオでの作品を作って欲しいと願うばかり・・・。


1・YOU MUST BELIEVE IN SPRING・・・2・FELTENI KELL・・・3・BUMERANG・・・4・SOLOR・・・5・LOVE LETTER・・・
6・STEPS OF THE LORD・・・7・BUTTER AND SOL・・・8・SPRING IS HERE・・・9・PASSING MONTHS・・・10・HOMEGE TO
  BACH・・・



      ROBERT LAKATOS(p)
      CHRISTIAN LAKATOS(b)
      DRE PALLEMAERT(ds)
      GABOR BOLLA(ts)



     2010年11月21、22日録音・・・