つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

翳り(かげり)

2014-10-31 11:11:56 | ジャズ


  花は咲いても果実を結ばず、地に還る散り花は「徒花(あだばな)」ともいい、

  はかなさを感じさせます。

  暮れゆく秋の里は「翳り」を見せ始めています。

  錦の色をなしていた色も「くすみ」を増していきます。

  くすみとは地味で渋くみえること。黒ずんで目立たない色になることをいいます。

  くすみを増した木々草花に目を向ける人はめっきりといなくなります・・・



  今日聴いたジャズ・・・


  EMILIEーCLAIRE BARLOW・・・「THE VERY THOUGHT OF YOU」




  本作は、1976年6月6日生まれ、カナダ・トロント出身のヴォーカリスト、エミリー・クレア・バーロウのリーダー作。

 ※ エミリー・クレア・バーロウは、父親、ブライアン・バーロウ(ジャズドラマー)の勧めで幼いころから歌を歌い、

  また、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、クラリネットも習う。

  7歳でテレビやラジオのCMで歌を披露する。

  音楽理論、編曲も学び、1997年父と共に ”ザ・バーロウ・グループ”を結成。

  カナダ中で活動を始める。1998年、20歳のときアルバム「SINGS」でCDデビュー。2001年には「TRIBUTE」

  をリリース。2003年には、3rdアルバム「HAPPY FEET」を発売。

  これまでの3作品は全て父との共同プロデュースにより制作されたが、2005年制作の通算4枚目、日本デビュー盤、


  「LIKE A LOVER」以降はセルフ・プロデュース作品となり、全曲のアレンジも彼女自身が担当している。

  6枚目の作品となる本盤も、自身のプロデュースにより、バンドのリーダーとして4人のソリストを起用した、ストリングス・

  アレンジから細部の音作りにこだわった意欲作になっている。ギターのレグ・シュワガーは、ダイアナ・パントンの全

  アルバムでも味わい深いプレイを聴かせるベテランギタリスト。

  全12曲、ジャズ・スタンダードからボサノヴァ、シャンソンまで、選曲も幅広く、寛いで聴ける内容に仕上がっている。

  個人的に、とくに好きなのは、タイトルチューンの「THE VERY THOUGHT OF YOU」、

  「I’VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE」・・・しっとり加減がたまらなくいい。



1・THE VERY THOUGHT OF YOU・・・2・ALMOST LIKE BEING IN LOVE・・・3・O PATO・・・4・DREAM A LITTLE
  OF ME・・・5・PENNIES FROM HEAVEN・・・6・WHAT A LITTLE MOONLIGHT・・・7・SURREY WITH THE FRINGE
  ON TOP・・・8・MY TIME OF DAY / I’VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE・・・9・C’EST SI BON
10・DE CONVERSA・・・11・THE BOY NEXT DOOR・・・12・SO MANY STAR・・・



      THE BAND:


     REG ScHWAGER(g)
     NANCY WALKER(p)
     KIERAN OVERS(b)
     MARK KELSO(ds)


     PRODUCED AND ARRANGED BY EMILIEーCLAIRE BARLOW



    2007年2月20、21日録音・・・






  


  

  

そこはかとなく

2014-10-28 11:15:27 | ジャズ


  ある雰囲気を「かもしだす」物象は、自然のままであって人工的なものではありません。

  「そこはかとなく」流れを作り、自然と雰囲気を作り出しています。

  もとは「其処此処(そこここ)と」が「そこはかと」に転化した言葉。

  打消しの「そこはかとなし」は、はっきりとした理由がない、「とりとめもない」の意味になりました。

  明確な移り変わりより、曖昧な「うつろい」を好み、徐々に「様変わり」していく姿に心を奪われたい、いにしえ人の

  美観が生んだ言葉です。

  類似語に「そぞろ」と「心なしか」があります。ちなみに室町時代に来日したポルトガルが作った日葡辞典には、

  「無限に」という言葉を書き記していたそうです。

  何とはなしにではなく、「かぎりなく」のニュアンスに近かったのでしょう・・・



   今日聴いたジャズ・・・


   DAVID NEWTON・・・「OUT OF THIS WORLD」




   本作は、スコットランド出身のピアニスト、デヴィッド・ニュートンのリーダー作。

   ピアノ、ベース、ギター3人による変則トリオ作品。


   全11曲、ニュートンのオリジナル3曲(3、7、9)、その他は、馴染み深い曲で綴られている。

   冒頭(タイトルチューン)はハロルド・アレンの曲、続いて、ジョージ・ガーシュウィン、サミー・フェイン、ジョビン、
 
   オスカー・ペッティフォード、J・J・ジョンソンたちの名曲を採りあげて、穏やかで落ち着きのある雰囲気が心地良い。

   アップテンポで軽快に演奏されるのは「LAVERNE WALK」のみで、全体的には、スロー~ミディアムテンポに展開されており、

   ベースはジョビンの”POR TODA MINHA VIDA”で味のあるフレーズを聴かせるものの、ほかの曲では、ごく控え目で、

   アルバム全体はピアノとギターのデュオを聴いている趣がある。

   先日も書いたように、デヴィッド・ニュートンはステイシー・ケントの歌伴でも知られるけれど、ギターのコリン・

   オックスリーもまた、ステイシー・ケントのアルバムに参加している、ニュートンとは気心の知れた仲なので、

   本盤が自然に息の合った作品に仕上がっているのも頷ける。

   また、ジョビンの名曲を3曲も演奏されているのが嬉しい。



1・OUT OF THIS WORLD・・・2・WHO CARES?・・・3・VALSE JAQ・・・4・I’LL BE SEEING YOU
5・POR TODA MINHA VIDA / O GRANDE AMOUR・・・6・LAVERNE WALK・・・7・ALL GROWN UP・・・8・LAMENT
9・LOOKING AT YOU・・・10・A FELICIDATE・・・11・WHY DID I CHOOSE YOU?




     DAVID NEWTON(p)
     ANDREW CLEYNDERT(b)
     COLIN OXLEY(g)


            ・・・・・

秋時雨(あきしぐれ)

2014-10-24 11:49:07 | ジャズ


  秋が深まるころ、空模様は気まぐれになってきます。

  晴れたかと思えば曇り、降ったかと思えばにわかに陽が射しこみます。

  また「天気雨」のように、日が照っているのに雨がそぼ降るのも「時雨」の特徴です。

  まさに「時知る雨」。「秋時雨」「初時雨」をへて、本格的な冬の時雨どきを迎えます。

  時雨は「朝時雨」「夕時雨」「小夜時雨」と時間によって変わります。

  「村時雨」はひとしきり降る雨。「片時雨」はひとところに降る時雨。「横時雨」とは横殴りに降ってくる

  時雨をいいます・・・



今日聴いたジャズ・・・


  LOUIS VAN DIJK TRIO・・・「THE SUMMER KNOWS」



  本作は、1941年11月27日 オランダ生まれのジャズ・ピアニスト、ルイス・ヴァン・ダイクのリーダー作。

  彼は、最初はクラシック・ピアノを学び、ほどなくしてジャズに出会い、ジャズに傾倒して、独学でジャズの理論を

  マスターしたという。

  19歳のときにルースドレヒトのジャズコンクールで衝撃のデビューを果たすと、一躍トップピアニストの地位を得た。

  トリオでの演奏を得意とする一方、アン・バートンの「ブルー・バートン」では素晴らしい伴奏を聴かせるなど

  柔軟性を兼ね添えている。


  本盤は全13曲、馴染み深いものばかりを採りあげて、曲名ばかりを見ると何の変哲もないBGMにでもよさそうなアルバムに

  感じるけれど、前記したように、ルイス・ヴァン・ダイクは、クラシックの素養をしっかりと身につけているだけに、

  全曲が・・とくに”風のささやき” ”黒いオルフェ”で聴かれる彼の解釈は、凡庸なものではなく、クラシカルな響きを

  持つ味わい深いトラックに仕上がっている。

  中には、ミュージカル「南太平洋」のナンバー ”YOUNGER THAN SPRINGTIME”  子供向けにアーサー・ハミルトンが

  作曲し、ソウル・グループのデルズなどが歌っている、本作では異色のナンバー ”I CAN SING A RAINBOW ”を

  採りあげ、クラシック調の雰囲気で美しいタッチが印象的。


  この作品は「BALLADS IN BLUE」と同じメンバーで演奏されている。


  個人的には、おなじくオランダの”カレル・ボエリー・トリオ”を聴くことが多いので、滅多に、ルイスの作品がターン・

  テーブルに載ることがないけれど、久しぶりに聴いてみて、良さを再認識した。


1・恋に過ごせし宵・・・2・ONCE UPON A SUMMERTIME・・・3・シェルブールの雨傘・・・4・おもいでの夏
5・風のささやき・・・6・男と女・・・7・HERE’S THAT RAINY DAY・・・8・IN THE WEE SMALL HOURS OF THE
 MORNING・・・9・YOUNGER THAN SPRING TIME・・・10・I CAN SING A RAINBOW・・・11・黒いオルフェ
12・ヨコハマ・ワルツ・・・13・YOU’VE CHANGED・・・



    ルイス・ヴァン・ダイク(p)
    エドウィン・コージリアス(b)
    フリッツ・ランデスバーゲン(ds)




  

しのび寄る

2014-10-22 11:41:21 | ジャズ


  くれないの峰、しのび寄る向寒の気配。

  観楓(かんぷう)など『秋望』は風流ですが、秋気に彩られた暮秋の景色は、胸踊る春に比べてものわびしく、

  おもむき深い感慨があります。

  季節のうつろいが街なかよりも、はるか先んじて深まっていたことに改めて気づかされるときです・・・



  今日聴いたジャズ・・・


  BOB ALBERTI TRIO・・・「NICE ’N ’EASY」




 本作は、1934年 ブルックリン生まれのジャズピアニスト、BOB ALBERTIのリーダーアルバム。


 5代もつづく音楽一家で、親がアルベルティ楽団なるアマオケを持っていたこともあり、フォート・ハミルトン高校に

 進んだ16歳には彼もまた、チャーリー・スパイヴァック楽団に入って早くもプロ活動を開始している。


 全12曲、誰もが一度は耳にしたことのある曲ばかりを採りあげて、ミディアム・テンポに展開する、小粋でエレガントなピアノ、

 メロディアスで折り目正しいスタイルを貫いている。

 難しいことをせずに、素直で聴きやすいことも、彼の性格から来たものだろうか・・趣味の良さを感じる好盤。



1・”NICE ’N’EASY”・・・2・THE GENTLE RAIN・・・3・A BEAUTIFUL FRIENDSHIP・・・4・SPRING WILL BE A
  LITTLE LATE THIS YEAR・・・5・SQEEZE ME・・・6・A NIGHTENGALE SANG IN BERKELEY SQUARE
7・WONDER WHY・・・8・MY FOOLISH HEART・・・9・THIS HEART OF MINE・・・10・THE TOUCH OF YOUR LIPS
11・MY SHINING HOUR・・・12・EMILY・・・




     BOB ALBERTI(p)
     MARK HUSBANDS(b)
     DELBERT FELIX(ds)



      1995年 8月録音・・・



茜色の空

2014-10-19 12:08:05 | ジャズ


  空が澄む秋は、夕焼けもいっそう美しく、思わず散歩の足を止めて見入ってしまいます。

  まだ青い色が残る中、赤く染まっていく空。

  その夕焼けの色は「茜色」、雲は「茜雲」です。

  では、夜明けのうっすらと赤くなり始めた空の色はどういうのかといえば、こちらは「曙(あけぼの色」。

  夜明けの東の空の色ということで「東雲(しののめ)色」ともいうそうです・・・


  今日聴いたジャズ・・・


  GRACE MAHYA・・・「イパネマの娘」
  


  本作は、2006年、ファースト・アルバム『THE LOOK OF LOVE』を発表した後も精力的にライブを行い、

  充実した活動を続けているグレース・マーヤのリーダー・アルバム。

  ご存じのように、彼女はもともとクラシック・ピアノを学びドイツに留学、フライブルグ国立音楽大学を卒業し大学院

  にも進んだ才媛。。

  タイトルでもわかるように、この通算4枚目となる本盤は、ボサノヴァの名曲がレパートリーの軸になっている。

  これまでのアルバムでも、彼女はボサノヴァをレパートリーとして歌っている。

  また、今までになく、多彩なミュージシャンが参加しており、充実した愉しめる作品に仕上がっている。

  一貫して、彼女のアルバムで味のあるギターを担当している荻原亮はもとより、日本でも活動歴の長い、キーボードの

  パウロ・ゴメス(5曲のアレンジも担当)、パーカッションのフランシス・シルヴァ(#1ではヴォーカルでも参加)、

  他にも錚々たるメンバーがサポート陣として味わいを添えている。

  全11曲、ボサノヴァには欠かせない、ジョビンのナンバーが5曲(2、4、6、9、10)、加えてサンパウロのサンバ人、

  アドニラン・バルボーザが作ったという『トレン・ダス・オンゼ(11時の夜汽車)』がとてもいい。

  マーヤのヴォーカルに続き、途中から加わっているシルヴァのヴォーカルが哀愁を誘う。。

  確かに、本作は、ボサノヴァ・アルバムながら、シャーディーの名曲 ”スムース・オペレーター” スティングの歌唱で

  有名な ”イングリッシュマン・イン・ニューヨーク ”を採りあげて、ラストにはマーヤの弾き語りで ”マスカレード”

  で締めくくっている。ボサノヴァの中に、ポップな曲を入れても何の違和感もなく聴けるし、むしろ、より魅力的な

  作品に仕上がっているのは、マーヤの ”詩を大事に歌う ”先天的な巧さであり、バックアップしているサポート陣の

  力量にあるといってもいいと思う。



1・TREM DAS ONZE(11時の夜汽車)・・・2・CORCOVADO・・・3・CONSTANT RAIN・・・4・イパネマの娘
5・SMOOTH OPERATOR・・・6・DINDI・・・7・RECADO BOSSA NOVA・・・8・ENGLISHMAN IN NEW YORK
9・3月の水・・・10・ソ・ダンソ・サンバ・・・11・THIS MASQUERADE・・・



    編曲: パウロ・ゴメス
        森村 献
        グレース・マーヤ(1)

   プロデュース:伊藤八十八


    <パーソネル>

    グレース・マーヤ(vo、p)

    パウロ・ゴメス(key)
    森村 献(key)
    荻原 亮(g)
    阿部浩二(ag)
    須藤 満(eb)
    バカボン鈴木(ab)
    河村 竜(ab)
    坂田 学(ds)
    板東 慧(ds)
    ヤヒロ・トモヒロ(perc)
    フランシス・シルヴァ(vo perc)
    井上信平(fl)
    中村 誠一(sax)
    小池 修(ts)
    西脇 辰弥(harmonica on1)

  




    ・・・・・