つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

凍凪(いてなぎ)

2015-01-31 13:16:56 | ジャズ


  雪をともなわない冷たく乾いた強風が「空っ風」

  霜の上を渡る寒風が「霜風(そうふう)」

  寒くて襟を立てるような風が「さむ風」、北風は「朔風(さくふう)」

  福井県以北の日本海沿岸では、冬の北西の季節風を「束風(たばかぜ)」または「玉風」と呼んで

  しけになるのを警戒するそうです・・・



  今日聴いたジャズ・・・


  SWEET JAZZ TRIO with ISABELLA LUNDGREN・・・「WHY TRY TO CHANGE ME NOW」



  本作は、ストックホルムを中心に活動を繰り広げてきた ”SWEET JAZZ TRIO(SJT)”、コルネット、ギター、ベース

  という変則アコースティック・トリオと、スウェーデンの西部、ヴェルムランド地方の生まれ、まだ20代前半の若さである、

  ヴォーカリスト、イザベラ・ラングレンが織りなす、珠玉のスタンダード集。

  SJTにとっては、デビュー作「ヴェリー・スウェーディッシュ」以来多くの作品をリリース、本作は「スイート・バラード」以来

  の2年ぶり、11枚目のアルバムになる。


  全12曲中、イザベラ・ラングレンは6曲(1、4、6、8、10、12)に参加、、他の6曲はSJTだけの演奏になっている。

  タイトルチューンの「WHY TRY TO CHANGE ME NOW」は、ピアニストとしても知られるサイ・コールマンがジョセフ・マッカー・シー

  と共作したナンバーでフランク・シナトラのキャピトル盤「ノー・ワン・ケアーズ」などでとりあげられている。


  他は、リチャード・ロジャース、、デューク・エリントン、、カウント・ベイシー、、、ジョージ・ガーシュウィンたちの、

  名曲、中には、隠れた名曲を選曲し、これまで一貫して感じてきた、SJTの”暖炉のような暖かさ”と形容されるように、温かく、

  派手さなはないものの、緊張を強いることなく聴き手の心をとらえて離さない演奏がここにもある。


  娘ほども歳の離れた、ラングレンを優しく見守り、彼女の歌唱を引き立てるSJTならではの演奏を聴かせる。


  ラングレンも敬愛する3人のサポート、コルネット、ギター、ベースをバックに、のびのびと、穏やかに20代前半とは

  思えないほどの落ち着きがあり、ひとつひとつのフレーズを丁寧に紡いでいる。

  

  彼女は、ビリー・ホリデイが大好きらしく、ビリーの愛唱曲として知られる 「DAY IN DAY OUT」、「EMBRACEABLE YOU」、


  「THESE FOOLISH THINGS」の3曲をとりあげて歌っていることも聴きどころ。

  そういえば、どこかビリー・ホリデイの声、歌唱に似ているフレーズが随所で感じられる。


  ※ イザベラ・ラングレンは18歳でニューヨークに旅立ち、4年間ジャズを学んだあと帰国。
    現在はストックホルムに拠点を移してクラブやコンサート活動をおこなっている。




1・WHY TRY TO CHANGE ME NOW・・・2・THE BLUE ROOM・・・3・SOPHISTICATED LADY・・・4・THOU SWELL
5・SOMEONE TO WATCH OVER ME・・・6・DAY IN DAY OUT・・・7・BLUE AND SENTIMENTAL・・・8・EMBRACEABLE YOU
9・DROP ME OFF IN HARLEM・・・10・I’M THROUGHT WITH LOVE・・・11・NOBODY’S HEART・・・12・THESE FOOLISH
  THINGS・・・



    ラッセ・トゥーングヴィスト(CNT)
    マッツ・ラーション(g)
    ハンス・ハッケンルート(b)

    イザベラ・ラングレン(vo)



    2013年6月 ストックホルムにて録音・・・


   

 

  

つむじ風

2015-01-28 12:13:40 | ジャズ


  にわかに吹きおろしてくるつむじ風は「天狗風」。

  つむじ風の別名を「辻風」ともいいます。

  世俗に媚びずにつかみどころのない、風のように生きる人を「飄(ひょう)々とした人」という言い方をしますが、

  本来「飄々」とは風に吹かれてひるがえすさま、あるいは風の吹く音をいいます・・・




   今日聴いたジャズ・・・


   CLAIRE MARTIN・・・「TOO DARN HOT!」




   本作は、イギリスのヴォーカリスト、クレア・マーティンのリーダー作。

   前回書いた、ケニー・バロンをフィーチャーした「TOO MUCH IN LOVE TO CARE」とは趣が変わって、

   4ビート、ブルース、アカペラに挑戦するなど、幅広い歌唱力を披露している。


   サポート陣には、ガレース・ウィリアムス(p)、ジェフ・ガスコイン(b)、クラーク・トレーシー(ds)、

   ナイジェル・ヒッチコック(sax)、ゲストには、ジェフリー・キーザー(p、elp)、ザ・タペストリー・ストリング・カルテット

   他、実に多くのアーティストが参加している。

   アルバム全体は、アップテンポで軽快な曲が多い中、5”IT’S RAINY IN MY HEART”、10”WHEN I FALL IN LOVE”、

   11”I CAN LET GO NOW”(マイケル・マクドナルド作)、12”FOUR WALLS”(ジェフリー・キーザー作)は、

   しっとりと歌っていてとても美しい。

   また、5、10は、バイオリン、ビオラ、チェロなどのストリング入りでアレンジは映画音楽の仕事で有名なイギリスの

   作曲家、リチャード・ロドニー・ベネットによる。


  ※ RICHARD RODNEY BENNETTは、1936年3月29日、ケント州生まれ、2012年12月24日に亡くなった。


   8”NOIR”では、サックス、ドラムスが炸裂、アルバムの中で一番アグレッシヴなトラックになっている。

   軽快な曲で聴かせるマーティンのパンチがあって、キレのある歌唱も聴きどころだと思う。




1・SOMETHING’S COMING・・・2・LOVE AT LAST・・・3・THE GENTLEMAN IS A DOPE・・・4・THESE FOOLISH THINGS
5・IT’S RAINING IN MY HEART・・・6・TOO DARN HOT・・・7・BLACK COFFEE・・・8・NOIR・・・9・LOVE IS A
 NECESSARY EVIL・・・10・WHEN I FALL IN LOVE・・・11・I CAN LET GO NOW・・・12・FOUR WALLS
13・BLUE MOTEL ROOM・・・




     CLAIRE MARTIN(vo)

     GARETH WILLIAMS(p)
     GEOFFREY KEEZER(p、elp)
     RICHARD COTTLE(key、org)
     GEOFF GASCOYNE(b)
     LAURENCE COTTLE(b、g)
     CLARK TRACEY(ds)
     IAN THOMAS(ds)
     NIGEL HITCHCOCK(as、ts、ss)
     PHIL ROBSON(g)
     MILES BOULD(perc)
     IAN SHAW(vo)
     THE TAPESTRY STRING QUARTET




     2002年4月2-5、5月6、7日録音・・・


   


   

風花(かざはな)

2015-01-24 12:23:51 | ジャズ


  ふいに夜中に初雪が降り、林床に白いじゅうたんが敷かれ、

  その上に色とりどりの落葉が散りばめられる風情が「冬紅葉」。

  霜除けや趣を添えるために枯れ松葉を置くのが「敷き松葉」です。

  冬の風が吹き、雪や雨がひらひらと舞うことを「風花」といいます・・・




   今日聴いたジャズ・・・


  EAST BOUNCE・・・「KISSES ON THE WIND」
           (キスは風にのって)




  本作は、日本が誇るベーシスト、鈴木良雄(チンさん)が率いるグループ、イースト・バウンスのリーダー作。


  以前書いた「COMING BACK TO AMERICA」は1994年録音、、「MISTRAL」は1999年に録音された作品だった。

  ピアノを大石学さんが担当していたけれど、

  今回の『キスは風にのって』は2作品より前の1993年に録音されたもので、ピアノ、キーボード、アレンジを

  野力奏一さんが担当している。


  イースト・バウンスはチンさんが現在のグループ「BASS TALK」を結成する前のグループで、メンバーに、藤陵雅裕(sax)、

  そして、数年前に惜しくも事故死したドラマーのセシル・モンロー、大石学(p)という魅力的なアーティストが参加している。

  イースト・バウンスの作品はどれを聴いても優しく、胸に響く。

  メンバーそれぞれも、そうであるようにリーダーの鈴木良雄さんの穏やかで優しい人柄が滲み出ている。


  今回のアルバムには、ヴォーカリストの神谷えりが「キスは風にのって」、、「IT’S THE THOUGHT OF YOU」を歌っている

  ことで、アルバムに華を添え、作品全体がより魅力のあるものに仕上がっている。

  特に「IT’S THE THOUGHT OF YOU」の憂いを含んだ歌は心に沁みる滋味ある曲でこの一曲を聴きたいがために、

  ターンテーブルに載ることもたびたび。。。


  
1・SOMEWHERE I NEVER TRAVELLED・・・2・FIRST LOVE・・・3・WINTER DAYBREAK・・・4・KISSES ON THE WIND
5・IN LOVE FOR LONG・・・6・AUTUMN RAIN・・・7・IT’S THE THOUGHT OF YOU・・・8・MIKOSHI
9・IN YOUR DREAM・・・10・EAST BOUNCE・・・



    鈴木良雄(b)
    野力奏一(p、key、arr)
    セシル・モンロー(ds)
    藤陵雅裕(sax)




    1993年3月録音・・・

  


  

  


 

銀世界

2015-01-21 12:20:58 | ジャズ


  「しろがね」とは「白金」のこと。

  銀色に輝く雪を「銀雪」、山峰を頂く銀雪を「銀嶺」、

  降る積もる雪の美称を「銀花」というように、雪は白というより「銀」で表現されます。

  あたり一面が「白一色」になっている光を「皚皚(がいがい)」といい、

  見渡すかぎりの雪化粧が「銀世界」です・・・




   今日聴いたジャズ・・・


   SERGE DELAITE・・・「SWINGIN’ THREE」



   本作は、澤野工房を代表するピアニストの一人であるセルジュ・デラートのリーダー作。


   セルジュ・デラートの洗練されたメロディとロマンティシズム、、心地よいスムーズなスゥイングが

   聴ける12曲。


   幅広い選曲で、チャーリー・パーカー、、マイルス・デイヴィス、、ミシェル・ルグラン、、レノン&マッカートニー、、

   J・J・ジョンソン、、コール・ポーターたちの代表曲が収録されている。


  個人的には、3曲目からが好きで、特に、「NARDIS」、「風のささやき」、「MICHELLE」、「LAMENT」、が気に入っている。


  中でも、ベースラインが美しいJ・J・ジョンソンの「LAMENT」は、この曲の良さを巧く表現されていていると思う。

  ピアノ、ベース、ドラムス、それぞれが寄り添いながら、バランスのとれた聴きやすいピアノトリオに仕上がっている。



1・IF I LOVE AGAIN・・・2・MY LITTLE SUEDE SHOES・・・3・NARDIS・・・4・THE WINDMILLS OF YOUR MIND
5・BESAME MUCHO・・・6・THE BOY NEXT DOOR・・・7・MICHELLE・・・8・YOURS IS MY HEART ALONE・・・9・LAMENT
10・BLUES OF J・M・・・11・WHAT IS THIS THING CALLED LOVE・・・12・GEORGIA ON MY MIND・・・



      SERGE DELATE(p)
      PASCAL COMBEAU(b)
      JEANーMARC-LAJUDIE(ds)



    2007年6月25、26、27日録音・・・


   

時ならぬ

2015-01-18 11:50:23 | ジャズ



   小春日和に背中を押されたように、季節を間違えて咲く草花があります

   「帰り花」「返り咲き」「忘れ花」といい、つつじや山吹、すみれまでもが時ならぬ

   春の賑わいを見せてくれます

   「帰り花」というのは、本来は桜の花に限られていたようでした。

   古くから花の盛りより散り際に哀れを感じさせてきた桜が、ふと「狂い咲き」をして

   はかなさを見せつけてくれます・・・




    今日聴いたジャズ・・・


    GEORGE MRAZ・・・「JAZZ」



    本作は、1944年9月9日生まれ、チェコ出身のベーシスト、ジョージ・ムラーツのリーダー作。

    現在活躍するジャズ・ベーシストの中でも、優れた技巧を誇り、特にクラシック音楽を学んだ音感の良さと

    アルコ弾き(弓弾き)の技術は高く評価されている。


    サポート陣に、ビリー・ハート(ds)、リッチー・バイラーク(p)、2曲、”INFANT EYES”、”PEPPER”には


    スティープルチェイスの人気サックス奏者、リッチ・ペリー、、”YOUR STORY”にはラリーウィルス(p)が


    バイラークと代わって参加している。


    全11曲、スタンダード、ウエイン・ショーター、、ジョン・アバークロンビー、ビル・エヴァンスたちの曲にオリジナルを2曲

    織り交ぜ(4、8)、スロー、ミディアム、アップテンポと曲調を変えながら、随所でベースソロ、ドラムソロなどもあり、

    飽きることのない、ジョージ・ムラーツのリーダー作らしい作品に仕上がっている。


    また、リッチー・バイラークのタイトで端正な演奏も目を見張るものがある。


   

1・MOONLIGHT IN VERMONT・・・2・CIMEMA PARADISO(LOVE THEME)・・・3・INFANT EYES・・・4・HAPPY SAINT
5・FOOLISH DOOR・・・6・YOUR STORY・・・7・SPRING HERE・・・8・PEPPER・・・9・TIME REMEMBERED
10・THE PEACOCKS・・・11・CIMEMA PARADISO・・・





       GEORGE MRAZ(b)
       BILLY HART(ds)
       RICHIE BEIRACH(p)
       LARRY WILLIS(p 6)
       RICH PERRY(ts 3、8)


     1995年9月、10月 ニューヨークにて録音・・・