つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

逝く夏を惜しんで

2012-08-31 00:42:32 | ジャズ

 酷暑だった八月が終わる・・夏の終わり・・秋の到来・・・
 日没が早くなり、蝉の鳴き声から、ひぐらしの鳴き声に変わった。。
 
 「白連さきて風は秋・・・ねざめ切なく見かへれば・・・雲あしはやき夕ぞらの・・・夜半や片しく袖に降るらん」

  王氏女の詩を、佐藤春夫はそう訳している。

 夏の終わりを告げる風が吹くと、蓮は葉を白くひるがえし、はたはたと音をたてるという。
 大きな葉が花の柄にぶつかると、花は驚いたように身をふるわせるらしい・・・


 今聴いているジャズ・・・

  MARIELLE KOEMAN&JOS VAN BEEST TRIO・・・「FROM THE HEART」


  四葉のクローバーのようなハートのデザインも鮮やかなジャケットが印象的。
  本作はジャズ・ヴォーカリスト、マリエル・コーマンのリーダーアルバム。
  彼女は、澤野工房の看板ピアニストの一人、ヨス・ヴァン・ビーストの奥様でもある。

  もちろん脇を固めるのはご主人のヨス・ヴァン・ビースト・トリオ。
  

1・EARLY AUTUMN・・2・MOONLIGHT IN VERMONT・・3・I’VE GOT THE WORLD ON A STRING・・4・CORCOVADO・・
5・BROADWAY・・6・ESTATE・・7・DEIN IST MEIN GANZES HERZ・・8・RETRATO EM BRANCO E PRETO・・
9・EVERYTHING HAPPENS TO ME・・10・YOU MUST BELIEVE IN SPRING・・・

 ピアノトリオはマリエルのヴォーカルを引き立てるかのようにサイドメンに徹している。
 全曲、選曲が素晴らしくマリエルのヴォーカルも聴けるし、ヨス・ヴァン・ビーストのピアノも聴けるまさしく一石二鳥の
 有難い作品。ピアノトリオのみで演奏される『ESTATE』が何とも言えず美しく心に沁みる。。

 『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』を最後にしっとりと聴かせてくれる彼女は飾らない自然のままの魅力が溢れている。

 他にもご夫婦でのアルバムがあるので機会があれば聴いてほしい・・・

百花譜

2012-08-30 16:16:40 | ジャズ

 以前、故福永武彦さんの画文集「玩草亭百花譜」のことは書いたけれど、詩人、木下杢太郎さんにも『百花譜』という
 写生集がある。その作品に福永さんは一文を寄せている。

 ”木下さんは、ひそかにその命の焔の長くは燃え続きそうにないことを知って、最後の夢を写生に託し情熱の一切
  を傾けたのではないか”と。

 自分の命の燃えつきる日を知って、野草の命を写生集にとどめておきたい、と念じたのは福永さん自身でもあった。
 そして野の花は最期まで福永さんを励ました。
 
 画文集は作家の魂と小さな命との交流の記録だ・・・


  今日聴いたジャズ・・・

  BOGDAN HOTOWNIA・・・「ON THE SUNNY SIDE」


 1957年ポーランド生まれ、古都トルン出身の名ピアニスト、ボクダン・ホウォヴニャが1997年に
 GOWI RECORDSに残したピアノトリオの隠れ名盤。スタンダード集。


 1・SUMMERTIME・・2・ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET・・3・ORNITHOLOGY・・4・NEVER LET ME GO・・
 5・SECRET LOVE・・6・MERCY、MERCY、MERCY・・7・INVITATION・・8・ROSEMARY’S BABY・・9・DOLPHIN DANCE・・
 10・ON BROADWAY・・


 中には、チャーリー・パーカーの3、ジョー・ザビエルの6、ジョージ・ベンソンの10などスタンダード集ではあまり
 聴けない曲も収められてる。
 とてもユニークな解釈で、月並みでないアレンジのスタンダードが聴ける。
 正直なところ何回か聴いてみたけれど、もう一つしっくり来ないので隠れ名盤と言われる本作については時間をかけて聴いてみようと
 思っている。

 BOGDAN HOTOWNIA(p)
 DAVE CLARK(b)
 SKIP HADDEN(ds)

 1995年10月22&23日録音

 また、”LOS ANGELES TRIO”として「CARISSIMA」をリリースしている。
 こちらはムーディな仕上がりのようなので機会があれば聴いてみたい・・・
  

炎天下に咲く花

2012-08-29 16:18:12 | ジャズ

 残暑のきびしい光と熱の中で健気に咲く花は多い。

 その中で、我が家の近所の民家に十本ほどの百日紅(さるすべり)があり、後から後から、もこもこと
 花を咲かせている。
 
 くれない、薄紅、白と三種類の花が重なり合って咲いている。巨大な氷いちごが並んでいるようにみえたり
 するのは暑さのせいだろう。

 さるすべりをみたらば

 たくさんに

 いい花がさきみだれてゐた

 紅くて

 そっとわたしの肩をたたくようなきがした・・(八木重吉)・・・

 今日聴いたジャズ・・・

  「QUIET NIGHT with LOVE NOTES」


 チェット・ベイカーは自然体でスイートなラヴ・ソングを表現する。そんなチェットの音楽に共鳴した二人、井上”マギー”真紀(vo)
 ヒロ川島(tp vo)のアーティストが出会って誕生したのが、「LOVE NOTES”愛の音符たち”(ユニット名)」

 実は最晩年のチェット自身が自分の新しいバンドにつけようとしていた名前で、それが、果たされないままチェットが亡くなった
 翌年、1989年に、実際にチェットと交流のあった彼らが、その名を引き継ぎ、日本でラヴ・ノーツというバンドを結成したもの。

 本作はラヴ・ノーツのスタンダード・アルバム、ラヴ・バラード&ボサノヴァ全12曲で構成されている。
 PP&Mのポール・ストゥーキーとのLAセッションから、「EVERY FLOWER」・「BUT A MOMENT」の2曲が特別収録されている。


1・MOOD AND SAND・・2・MY FOOLISH HEART・・3・QUIET NIGHT OF QUIET STARS・・4・ALFIE・・5・BUT A MOMENT・・
6・EVERY FLOWER・・7・PHOTOGRAPH・・8・CAN’T HELP LOVIN’DAT MAN・・9・SO IN LOVE・・10・DINDI・・
11・DEEP IN DREAM OF YOU・・12・ETERNITY・・


  クリス・コナーをアイドルに歌ってきた井上真紀、そしてチェット・ベイカーを師と仰ぐヒロ川島。彼らの特徴は、何と言っても
  そんな素敵な”ルーツ”を持った二人の、歌詞や曲に対する深い理解と、その意識の高さにある。
  二人は「チェットやクリスの音楽の素晴らしさは、その緊張感と集中力にある」と言っている。

  そしてその彼らと同じ視点を持つアーティストたちが集まったユニットがラヴ・ノーツ(愛の音符たち)だ。
  この姿勢に共感した、モダン・フォーク・トリオ、ピーター・ポール&マリーのノエル・ポール・ストゥーキーも、本作に参加
  して、前述したように2曲のオリジナル5、6を提供している。


  井上”マギー”真紀(vo)
  ヒロ川島(tp vo)
  田辺充邦(g)
  松本雄二(b)
  ソミー正和(ds)
  森田潔(p)
  リュージ・オサキ(p)
  NOEL PAUL STOOKEY(g)
  里村美和(perc)
  永野武(cello)

  
  静けさに包まれた夜も更けたころ、そっと取り出して聴いてみる。”愛の音符”が舞い降りてくる”そんな魅力ある作品・・

 

秋の便り

2012-08-27 22:53:42 | ジャズ

 秋の訪れを告げる、絹雲や絹積雲は、氷晶のあつまりである。

 白く、すきとおるように輝くのはそのためだ。

 自在に姿を変え、遊び戯れながら空をただよう雲を見ていると、

 「雲は、あらゆる漂泊と探究と、渇望と郷愁との、永遠の象徴だ」というヘルマン・ヘッセの

 言葉を思い出す・・・


 今日聴いたジャズ・・・

  GREGG KALLOR・・・「THERE’S A RHYTHM」

 本作は、ピアニスト兼作曲家、指揮者であるグレッグ・カラーの初リーダー作。
 2002年に自主制作した作品で、これから約10年ほど経って、アメリカで最も栄誉ある中の一つ「コープランド賞」を
 受賞している。本作が隠れ名盤であることがこのことからも分かる。

 また、カラーはブラッド・メルドーに非常に心酔しており、メルドーを通じて彼の師匠であるフレッド・ハーシュに師事している。

 デビュー作である本作には、そんな彼の一途な想いが凝縮されている。
 

1・THE VOICE OF REASON・・2・ON GREEN DOLPHIN STREET・・3・THERE’S A RHYTHM・・4・DOUBLE DOWN・・
5・EVERY TIME WE SAY GOODBYE・・6・255・・7・LOST・・8・SO IN LOVE・・9・YOU’RE MY EVERYTHING・・
10・CORAL PEAK・・11・THE LAST WORD・・12・255・・


  1、4、6、7、10、11、12はカラーのオリジナル、他は馴染み深いスタンダードで構成されている。

  オリジナルの一曲一曲が素晴らしい出来であり、スタンダードの選曲も個人的に好きなものばかりで興味深い。

  一枚を通して聴いてみると、確かにメルドーやフレッド・ハーシュの作品に通じるところも感じられる。

  基本的にクラッシクの要素がベースになっているので、ジャズだけでなくクラッシックの好き方にも気に入って貰えることと思う。

  これだけの名盤をリリースしながらも他にリーダー作が見当たらないのは残念。加えて消息も分からない。

  カラーのようなピアニストに是非、新作を出して欲しいと願うばかり・・・

四葉のクローバー

2012-08-27 15:58:40 | ジャズ

 四葉のクローバーを見つけた人には幸運が訪れるといわれている。

 
 四葉のそれぞれの葉には 「名声」・・「富」・・「満ち足りた愛」・・「素晴らしい健康」という願いがかけられ

 四枚そろって、TRUE LOVE (真実の愛)を表している・・・

 今聴いているジャズ・・・

 SINNE EEG・・・「WAITING FOR DAWN」


 デンマークの歌姫、シーネ・エイのセカンドアルバム。
 スウェーデンのピアニスト、ラーシュ・ヤンソン、デンマークの重鎮ベーシスト、マッズ・ヴィンディング、
 ドラムスのモーレン・ルンドという、ピアノトリオをバックに、全曲オリジナルを歌っている。

 スローテンポでしみじみと聴かせる曲、スゥィンギーな曲を織り交ぜた質の高いジャズヴォーカル・アルバムに
 仕上がっている。

1・WHAT IT MEANS TO ME・・2・LET’T STAY AWAKE・・3・WAITING FOR DAWN・・4・MY TREASURE・・
5・SUDDEN CHANGE OF WEATHER・・6・SNOW・・7・STUCK・・8・HOURS OF OURS・・9・BETTER THAN ANYTHING・・・
10・BRIEF HESITATION・・11・BETOUR AHEAD・・・

1、3、4、6、7、8、11などは、ゆったりとした曲調で滋味あふれる趣の歌唱を楽しめる。
2、5、10はミディアムテンポで、ここでもバックを務める三人のサポートが冴える。
9はアップテンポの曲で唯一、ドラムソロが聴ける。
ほとんどの曲でピアノソロ、ベースソロが聴けてシーネ・エイの歌と共に実にうれしい作品になっている。


 SINNE EEG(vo)
 LARS JANSSON(p)
 MADS VINDING(b)
 MORTEN LUND(ds)

  2007年録音


 シーネ・エイ:


 1977年デンマーク生まれ。
 1997年20歳の時に国立音楽アカデミーで音楽を学ぶ。2003年にデビュー。
 2007年にリリースした全曲オリジナル楽曲に挑戦したセカンドアルバム 「WAITING FOR DAWN」が、その年の
 デンマーク音楽賞、ジャズヴォーカル部門賞を獲得した。
 
 日本のジャズ界に大きな反響を巻き起こしたのは、第4作「ブルーな予感」であった。
 バラードに彼女の力は遺憾なく発揮されているが、バラード良し、軽快なスゥィングも良し、オリジナル良しの北欧で
 今後、最も期待される若年イチオシのシンガーだろう・・・