つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

楓(かえで)

2012-10-31 16:13:45 | ジャズ

 楓の紅葉が他の木のどれよりも美しいので、一般に「もみじ」といえば楓をさす。
 葉の形がカエルの手に似ているところから、「かえるで」といわれている。
 
 『和名抄』には「加位天乃岐」「加比流乃木」が用いられている。秋に紅葉する種類のなかでとくに美しい。
 葉は五裂になっており、鋭い鋸(のこぎり)歯がある。

 楓の原産地は中国、日本を含む北半球。園芸種を含めて、日本には30種ぐらいある。


 ”かへるでのしづくに星の宿るべし ”(谷 雅子)・・・


 今日聴いたジャズ・・・

 THE ART FARMER QUINTET・・・「BLAME IT ON MY YOUTH」
 (フィーチャリング・クリフォード・ジョーダン)


 1928年8月21日、アメリカ合衆国アイオワ州カウンシル・グラフ生まれ、ジャズ・トランペット、フリューゲルホーン奏者
 アート・ファーマーのリーダーアルバム。

 ファーマーが1988年2月にコンテンポラリー・レーベルに吹き込んだ作品。彼とコンテンポラリーとは、1950年代から
 結びつきがあった。イースト・コーストを中心に活動を繰り広げていたアート・ファーマーと、西海岸のコンテンポラリー・レーベル
 とは接点がないようにも思えるが、かつてのコンテンポラリーのプロデューサー、レスターケーニッヒはファーマーの音楽性を高く
 評価して、58年に『ポートレイト・オブ・アート・ファーマー』をニューヨークで吹き込んだ。

 またこのレーベルは、一時活動を中断していたこともあったが、活動を再開した76年には、ファーマーは白人アルト・サックス奏者
 のアート・ペッパーと一緒に『オン・ザ・ロード』をコンテンポラリーへ録音している。さらに87年初めにも
 『アート・ファーマー・プレイズ・ミュージック・オブ・ビリー・ストレイホーン』が同レーベルより発売されており、本作はそれに
 続く作品ということになる。

 アルバム内容は、くつろいだ中に、リリカルでメロディアスなファーマーの音楽の魅力を、充分に楽しむことができるものになっている。


1・BLAME IT ON MY YOUTH・・2・FAIRYTALE COUNTRYSIDE・・3・THE SMILE OF THE SNAKE・・4・THIRD AVENUE・・
5・SUMMER SERENADE・・6・PROGRESS REPORT・・7・I’LL BE AROUND・・・

  4はクリフォード・ジョーダン、6はジェームス・ウィリアムスのペンによるもの。

 ファーマーとジョーダンの二人は50年代から一緒にプレイを重ねてきている間柄でもある。また、50年代にホレス・シルヴァー・
 クインテットに籍を置いて以来、レコーディングなどでもしばしば顔を合わせている。
 
 前作の『ミュージック・オブ・スレイホーン』にも、ジョーダンはサイドマンとして演奏に参加していた。同じく前作にも参加していた
 ピアニストのジェイムス・ウィリアムスは、10年ほど前にジャズ・メッセンジャーズのレギュラーを務めたこともある逸材。
 このアルバムでもウィリアムスの参加が、演奏全体をフレッシュなものにしているのは見逃せない。

 また随所で聴かれる、ベテラン、ルーファス・リード(b)、ビクター・ルイス(ds)のプレイも忘れてはならないと思う。

 プロデューサーはかつてはビル・エヴァンスのマネージャーとしても有名だったヘレン・キーン女史。
 そして全曲のアレンジはファーマー自身が担当している。

 温和で律儀、人柄の良さで有名なアート・ファーマーの誠実なプレイは、リーダー作はもとより、サイドマンとしてのアルバムでも
 充分に感じ取れる。長年にわたり、多くの人々に愛し続けられた所以でもあると思う。


 アート・ファーマー(flh)
 クリフォード・ジョーダン(ts ss)
 ジェイムス・ウィリアムス(p)
 ルーファス・リード(b)
 ビクター・ルイス(ds)


  1988年2月4、8日 N・Y・C・録音・・・
 

晩秋

2012-10-30 15:14:06 | ジャズ

 
 しみじみと

 秋がこころにしみいる日は

 怒っても かなしんでも

 しょせんは みづからをみるほかのこころが

 みづからのかたわらにしづかにすわり

 かなしみと いかりとをささげいつき

 うつくしいおどろきにひざまづいてゐる・・・(八木 重吉)寂寥三味より・・


  今日聴いたジャズ・・・

  JAN LUNDGREN TRIO・・・「BLUE LIGHTS」

 本作は、ヤン・ラングレン・トリオによるマシュマロ第4作であり、マシュマロレコード設立25周年を記念して立ち上げられた
 マシュマロ・エクスポートの第一作目にあたる作品。
 
 ヤン・ラングレン(p)、イエスバー・ルンゴー(b)、アレックス・リール(ds)という黄金トリオによる一枚。
 限りなく美しい北欧の詩情あふれる曲が続く。ヤン・ラングレンはピアノが巧いだけではなく、実によい選曲をする人だと思う。
 

1・TAKE ME IN YOUR ARMS・・2・BLUE LIGHTS・・3・LOVE OF MY LIFE・・4・EASILY FOUND・・5・STRANGER IN PARADISE・
6・WINTER MOON・・7・A SUNNY RAIN・・8・FAIR WEATHER・・9・SKYLARK・・10・OUT OF THE PAST・・
11・WE COULD MAKE SUCH BEAUTIFUL MUSIC TOGETHER・・・


 1は1932年、ドイツ生まれの古い曲でとても魅力的なメロディ。原題は「LIEBE FS NIE」”それは恋ではなかった”という意味の曲。

 タイトル曲の2はジジ・グライス作曲のマイナー・ブルース。三者一体となった躍動感が素晴らしい。

 3はクラリネット奏者、バンドリーダーのアーティ・ショーが作曲したもので、ピアノトリオで聴かれるのは珍しい。

 4はラングレンのオリジナル、バップ風な曲調でアップテンポで演奏されている。

 5はROBERT WRIGHT作曲の馴染み深い曲。本作の中でよいアクセントになっている。

 6は”スターダスト”を作曲した、ホーギー・カーマイケルの曲で知名度は低いかも知れないけど、ラングレンはこのルビーのような
 ”宝石”を見逃さない。・・・冬の空に寂しく青白い光を放つ ”冬の月”・・・

 7はふたたび、ラングレンのオリジナル。こちらもアップテンポでサンバのリズム。どちらもリズムセクションの素晴らしさを味わえる。

 8はテナー奏者、ベニー・ゴルソンの書いた優れた名曲。タイトルどうり、三人によって叙情豊かに表現されている。

 9はふたたび、ホーギー・カーマイケルの曲。馴染み深い曲。

 10はふたたび、ベニー・ゴルソンの曲。タイトルからして哲学的な趣のある、美曲。

 11はHENRY MANNERSの書いた〆にぴったりの”皆で一緒でこの素晴らしい音楽を作り上げた”という意味の美しい曲。

 ヤン・ラングレン(p):
 1966年スウェーデン生まれ。今やスウェーデンのNO・1のピアニストだあるだけではなく、広くワールドワイドの人気者になり
 つつある。また、シビアなイギリスの評論家たちがこぞってラングレンを非常に高く評価しているのも注目されて良い。

 イェスバー・ルンゴー(b):
 デンマーク、ヒローの生まれ。(1954年)。同じデンマークの巨人ベーシスト、ペデルセンと並んで、ヨーロッパのベストベーシスト。
 また、マシュマロのハウスベーシストでもある。理知的で心優しい好人物。

 アレックス・リール(ds):
 デンマーク・コペンハーゲン生まれ。(1940年)60年代からデンマークを訪れるアメリカ人奏者のバックを務めた北欧きっての
 名手。2001年、2002年と日本を訪れ、そのスティックワークで日本のファンを魅了している。

 
 

 


  JAN LUNDGREN(p)
  JESPER LUNDGAARD(b)
  ALEX RIEL(ds)


   2003年1月20、21日 ”SUN STUDIO”COPENHAGENにて録音・・・

銀杏(ぎんなん)

2012-10-29 16:11:58 | ジャズ

 四月末ごろに芽吹き、十月ごろ受精、実は一か月ほどのうちに育つ。イチョウ科の落葉高木。
 中国原産。雌雄異株。種は雌木にしかできない。

 晩秋に美しく黄葉し、落葉する。落葉のころ実も黄熟して落ちる。やわらかい外種皮には強い悪臭があり、触れるとかぶれることもある。
 白色の堅い実はよく洗い乾燥し食用とする。
 実を焼いて食べるのも楽しい。独特の風味と色合いが茶碗蒸しなどに重宝される。


 ”銀杏が落ちたる後の風の音 ”(中村 汀女)・・・


  今日聴いたジャズ・・・

  IVAN PADUART・・・「FOLIES DOUCES」


 ベルギー・ジャズ界の貴公子、ピアニスト、イヴァン・パドゥアのリーダーアルバム。

 「イリュージョン・サンソリエル」と同じメンバーによるもの。
 リシャール・ガリアーノのアコーディオンをフィーチャーし、哀愁味溢れるメロディと欧州然としたロマンティシズム溢れる
 演奏が聴ける。
 本作でもイヴァン・パドゥアのピアノは秀逸で、イリュージョン・サンソリエルと同様、彼らしい抒情味のある音色は健在で
 どの曲も感動的。

1・HORLOGERIE・・2・JOAILLERIE・・3・FOLIE DOUCE・・4・PEAU DE PECHE・・5・INTEMPORELLE・・6・20.000 LIEUES
  SOUS LES MERS・・7・LE NAUTILUS・・8・LES FRUITS DE MA PASSION・・・


 IVAN PADUART(p)
 RICHARD GALLIANO(accordeon)
 PHILIPPE AERTS(contrebasse)
 BRUNO CASTELLUCCI(batterie)
 CHRIS JORIS(perc)


  1994年11月2、3日録音・・・

美男葛(びなんかずら)

2012-10-28 16:26:36 | ジャズ

 モクレン科の常緑蔓性植物。関東以西の山野に自生するが、庭園などにも鑑賞用として植えられる。
 昔、この茎から粘液をとって頭髪を整えたのでこの名がある。

 光沢のある葉雌株につく赤い実が美しい。夏、葉腋に淡黄白色の五弁花を下向きにつける。直径五ミリほどの小さい実が
 集まって、十、十一月ごろに紅色に熟す。葉も色づくと美しい。

 漢方ではこの成熟した果実を採集し、乾燥させたものを南五味子といって、滋養強壮や鎮咳(ちんがい)薬にする。
 五味子という名は酸味、塩辛味、甘味、苦味などの味があるからだという。
 また、五味子には黒い実を結ぶものと赤い実を結ぶものとあって、前者を北五味子、後者を南五子と呼ぶ。

 夏の間、青い実を蓄えていた美男葛や梅擬、蔓梅擬などが秋になり実を赤くするのは美しい。秋は実ものの季節。

 ”会ひにけり美男葛を見るために ”(高橋 悦男)・・・


 今日聴いたジャズ・・・

 MATTHIAS VOST TRIO・・・「COMING UP FOR AIR」


 本作は、数々のヒット・アルバムを生み出したリ・ジャズの中心人物であり、モーターシティソウル名義ではディープ・ティク・ハウス
 も制作するドイツの才人マティアス・フォーク率いるピアノ・トリオ作品。

 06年のデビュー作『CHANGING COLOURS』以来3年ぶりとなるセカンド・アルバム。

 一曲(#6)を除いて、11曲中10曲は、マティアス・フォークのオリジナル。
 美しいメロディと透明感溢れるピアノの音色が作りだすリリシズムに満ちた世界、豊かな情感と洗練された知性が融合した一枚。
 アンドレアス・マンズ(b)、フォルカー・シュミット(ds)という編成。

1・INHALE・・2・MEU AMOR・・3・SHELTER・・4・STOP&GO・・5・APPROXIMATION・・6・SUCH A SHAME・・7・THE RAINY
  SEASON・・8・COMING UP FOR AIR・・9・THE FIFTH DAY・・10・VOYAGER・・11・THERE SHE GOES・・


 #2はリザ・ダ・コスタというラテン系の女性シンガーが歌うボッサ・ジャズで全体に漂う優しくて穏やかな空気が心地よく、
 #7では同じく女性シンガー、ユタ・ガッケルの歌がこの曲をメランコリックな情感のあるものにしている。
 ラストの#11では、マティアス自身がヴォーカルを披露し、淡々と、また切々とした心情を運んでくれる。

 オリジナル曲は決して難解なものではなく、美旋律にただただ身をゆだねて聴くと心地よい。
 ベースもドラムも存在感はあっても、決して自己主張せず、アルバム全体をより良いものにしている。


  MATTIAS VOGT(p)
  ANDREAS MANNS(b)
  VOLKER SCHMIDT(ds)

  LIZA DA COSTA(vo on2)
  JUTTA GUCKEL(vo on7)


  2008年2月21、23日録音・・・




蔓梅擬(つるもどき)

2012-10-27 16:36:08 | ジャズ

 ニシキギ科の落葉低木。山野に自生。蔓は左巻きで、他の木に絡んだり、藪を巻いたり、地上を這いまわったりしている。
 
 初夏に淡緑色の小さくてあまり目立たない花の咲いたあと実を結ぶ。
 実ははじめ緑色、しだいに黄色に熟し、十月ごろ橙赤色に熟して美しくなる。雌花にできる豌豆(えんどう)ぐらいの球状の果実は
 熟すと三つに裂けて黄赤色の種が顔を出す。

 生け花などに用いられる。梅擬に似ていて、つるになるのでこの名がついた。ウメモドキ科ではない。

 ”蔓もどき情けはもつれ易きかな ”(高浜 虚子)・・・


  今日聴いたジャズ・・・


  FRANK MORGAN・・・「LISTEN TO THE DOWN」


  本作は、ジャズ・アルトサックス奏者、フランク・モーガンの1993年の作品。

  アルバム名は、ケニー・バレルの曲(10月12日に書いています)#3もケニー・バレルの曲を取り上げていて
  #4のみが、ここでベースを担当している、ロン・カーターの曲、他はスタンダード、全8曲で構成されている。

1・LISTEN TO THE DOWN・・2・GROOVEYARD・・3・REMEMBERING・・4・LITTLE WALTZ・・5・IT MIGHT AS WELL BE SPRING・・
6・WHEN JOANNA LOVED ME・・7・I DID’T KNOW ABOUT YOU・・8・GOODBYE・・・


  1、5、8はモーガンとケニー・バレルのデュオで他はロン・カーター、グラディ・テイトも参加しているけれど、全曲、
   デュオのような趣があり、ベース、ドラムの音色は聴こえてこない。
   ケニー・バレルのギターは、限りなく優しく、モーガンを包み込むかのような愛情のあるフレーズを聴かせる。

  どの曲も穏やかで、心に沁みるものがある。晩秋の宵に耳を澄ませて聴くと得もいわれぬ味わい深さがあって、じみじみとしてしまう。


  FRANK MORGAN(as)
  KENNY BURRELL(g)
  RON CARTER(b)
  GRADY TATE(ds)


   1993年4月19、20日 11月27日、ニューヨークにて録音・・・