国際基督教大学教養学部、毛利勝彦教授の「国際関係学」の講義を抜粋したものです。この講義ではケース・メソッド法による対話型式により授業が進められている。
グローバル社会における政府や市場のひずみの中で、新たな民主化の担い手である国際NGOが直面して来た問題を仮体験させながら、民主的リーダーシップに必要な論理的・批判的思考力とコミュニケーション力を高めて行くもの。
今回は途上国の貧困問題解決を目指し活動する国際NGOワールド・ビジョン・インターナショナル(WV)が直面したHIV(エイズ)問題を取り上げた。
ワールド・ビジョン・インターナショナル(WV)はキリスト教宣教師ボブ・ピアスの「すべての人々に何もかもはできなくとも、誰かに何かはできる」と言う信念の下に、1950 年9月、アメリカのオレゴン州で創設された。
やがて、WVはチャイルド・スポンサーシップ(里親制度)を確立すると、それを拡大して教育、保健衛生、農業指導、水資源開発、収入向上、指導者育成など幅広い分野で長期的な支援を行う総合地域開発プログラム(ADP)を事業の中心にすえる。
そして、「連邦モデル」と呼ばれる上下関係で無く、契約に基づいた組織を構築出来たが、新たな難問、エイズが立ちはだかり、エイズ対策プロジェクトをする、しないでもめた。
この議論「エイズ対策プロジェクトの賛否」をする事で、ロジックシンキング(論理的思考)や、クリチカルシンキング(批判的思考)を養う事。
また、学生に意見を求める上で、ロジカルの三角形(主張・証拠・論拠)を明確にする事を求められた。
まず、WVアメリカ支部がエイズ支援の賛否を取った結果が発表された。賛成派7%、反対派50%であった。
次にHIV/エイズ・ホープ・イニシアチブ(予防・ケア・アドボカシー)が問われ、まず初めにサービス・ラーニング(ボランテアの体験学習)を受けた学生に意見を求められた。
■賛成を主張する意見
アフリカの政府基盤が軟弱である。WVのビジョンが子供支援、なぜならキリスト教の三位一体だからである。宣伝に成る。会員の命を守る事ができプロジェクトが進む。アフリカのQOLを改善できる。
などのWVだから出来る資金や集金力・ネット・プログラム・ミッションの達成・効果的救済策が出された。
■反対を主張する意見
資金提供が受けられなくなる。厳格なプロテスタントのアメリカでは受けいれられない。エイズは「罪人の永遠の刑罰」と言うイメージがあり、ブランドに傷が付く。専門家がいない。地域開発で支持を受けて来ているので別な目的では支持者が集められない。
トップダウンだけではローカル会員は動けない。UNAIDS(国連合同エイズ計画)に相談する。ミレニアム開発目標(MDGs)がやっているのでやる必要が無い。MDGsを支援している事を主張すれば良い。
■結果
意見が出尽くしたところで、学生にエイズのホープ・イニシアチブの賛否を取ったが、賛否の差に明確な違いは無かった。
WVは色々な論議を重ねながら、各国の事情に合わせて徐々にコンセンサスを取りながらエイズ支援に乗り出していった。
急激に進んだのはリッチスタン(新富裕層)と呼ばれる支持者が現れた事や、現地アフリカの声を重要視する事が大きかった。
宗教に関しては、アメリカではカトリックの影響があったが、ヨーロッパでは嫌がられるのでWV全体では差ほど問題にならなかった。
グローバルなアウトリーチ(現地での奉仕活動)は、地域に密着したグラスルーツのプレゼン(草の根運動)を施し、人の心を信じるようにした。
更にホープ・イニシアチブのアドボカシーを大きくし、地域に合ったサービスデリバリーをした。
以上、ザット取り上げた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます