思考の部屋

日々、思考の世界を追求して思うところを綴る小部屋

羽ぐくむ

2009年02月19日 | ことば

NHKの「日めくり万葉集」で、

 葦辺行く 鴨の羽がひに 霜降りて 寒き夕へは 大和し思ほゆ 
   
  志貴皇子  (巻1・64)
 
 葦辺を泳いで行く鴨の背に霜が降って 寒い夕暮は 大和が思われる

が紹介されました。

 昨年の10月のブログで「鴨の羽がひ」と題し掲出しましたが、
この歌に使われている「霜」という言葉で

 旅人(たびびと)の宿(やど)りせむ野に霜降らばわが子羽ぐくめ天の鶴群(たづむら)

巻9ー1791番 「遣唐使の母の歌」があります。

 大事なわが子が中国に旅することになりました。お母さんは心配しながら見送ります。子どもが遠く離れたところに行って、寒いときにはどうするのかなあ、と心配しています。そんなとき、空を飛んでいる鶴よ、その羽で包んでやってちょうだい、とお母さんはいっています。お母さんは何を願うのか。

 「心の温かさが本当のあたたかさ。」
 
  着るものも大事ですが大事だけれども、本当に大事なのは心だ。セーターはセーターの程度にしか暖かくならないけれど、心のあたたかさを思うと、その温かさがプラスされますね。とくにお母さんを思い出すと心が温かくなる。
「中西進の万葉のみらい塾 朝日新聞社P237から」

 歌の全体から心に響く母の愛情を感じます。
  またこの歌の中に登場する「羽ぐくむ【他マ四】」という言葉。漢字で書くと「育む」と書きます。

 ①親鳥が羽の下で雛を育てる。羽で包みこむ。
 ②子どもを大事に育てる。大切に世話をする。
という意味の言葉です。

 羽で包むという具象的な世界に、なんと温かみの情景を浮き上がらせる言葉でしょうか。


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