スケッチブック 〜写真で綴るスローライフな日々2

写真を撮りながら、日々の暮らしや旅先で感じたことを書いています。
2016年からは撮った写真をイラスト化しています。

スローミュージック SELECTION Vo.95

2012年07月15日 | スローミュージック
The Nightfly/DONALD FAGEN

いろんな意味でこのアルバムは絶賛され続けました。ロック史の金字塔とまで言われた名盤中の名盤を今一度聴き直してみたいと思います。1982年は実に多様な音楽が溢れていて、世界中のラジオ放送局のディスク・ジョッキー達はターン・テーブルを回すことにやっきになっていた時代でした。このアルバムを聴くか否かで、僕の音楽を聴く耳の感受性が変わってしまったことは当時から確信していることです。身体はビリビリに感電し、脳天が吹き飛び、目が覚めたような気がしました。それくらいインパクトのある音楽だったのです。ドナルド・フェイゲンに参ってしまうと彼の本来のグループであるスティーリー・ダンが気になって遡って聴くようになり、結局スティーリー・ダンのファンになりました。緻密な録音や凝ったアレンジが良かったのは言うまでもないことですが、それより乾いたサウンドにシニカルな歌詞が僕には新鮮に聴こえたし、アメリカ大陸独特の匂いを感じるメロディーとリズムは、洗練されたブルージーな響きと重なって抵抗も無く身体に入り込んできました。全8曲すべて傑作ぞろいで、今まで何度聴いたのかわかりません。ジャケットの写真もインパクトがありましたねえ。真似して自画像写真を撮っていた友人までいました。カッコいいからしょうがない。白人の手によるブルーズ。それが僕の第一印象でした。フェイゲンの声は鼓膜にくっつくとぺたりと吸着するような粘着性を持っていて、オーソドックスではあるけれどバックコーラスのハーモニーは危険な誘惑に満ちています。オルガン。ハーモニカ。ホーンセッション。ソリッド・ギター。どれも渋くて背筋を蛇に舐められているようです。ドナルド・フェイゲンの音楽的センスは最高です。5曲目の「ニュー・フロンティア」のイントロが始まると、反射的に僕の心はティーン・エイジャーに戻り、たくましさをまだ持ち合わせていないひ弱だった自分を思い出します。タイトル曲の6曲目「ナイト・フライ」の歌詞にもあるように孤独なディスク・ジョッキーが哀愁たっぷりにマイクに向かい深夜の静寂に怖れるシーンを思い浮かべてみたりして。だけど、あの頃は光り輝く何かを信じていた時期でもありました。このアルバムは、アメリカが活気に満ちた50年代後半から60年代にかけて、東北部の普通の若者が抱いていたはずのファンタジーがテーマなのだとドナルド・フェイゲンは語っています。僕はそのファンタジーに触れて感化された若者だったのかもね。やっぱり「ナイト・フライ」は傑作だ。

ナイトフライ

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