六本木のタカ・イシイギャラリーで、アーヴィング・ペンの肖像写真群を展示している。ジャンルのパイオニア的な存在であることもあって、被写体との関係にまだ文脈がないような印象で面白い。ただ、ここの展示方法には工夫が必要である。有名人のポートレイトなのであるから、何処の誰兵衛ということくらい表示しなければならないのではないか(クリスチャン・ディオールの顔なんて知らないよ)。
ジャズファン的には、ディジー・ガレスピーの姿を観ることができたのは嬉しかった。
同じ建物のワコウ・ワークス・オブ・アートでは、ジェームズ・ウェリングがかつてアンドリュー・ワイエスの描いた場所を訪れ、ワイエス的にそれらを撮影した作品群『WYETH』を展示していた。ワイエスの作品は自分も好きだったのだが、あまりにも痛く、寒いため、作品集も手放してしまった。この写真もまさにそのアウラを纏っている。井戸の水はキンキンに冷えた硬水のようであり、もし似たように「硬気」という言葉があるのだとすれば、感じられるアウラはそれである。ドキュメントでも真似でもない、同じ場を身体的に共有するというユニークな作品だと思った。