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自縄自縛日記

林博史『暴力と差別としての米軍基地』

2014-11-26 06:23:28 | 沖縄

林博史『暴力と差別としての米軍基地 沖縄と植民地ー基地形成史の共通性』(かもがわ出版、2014年)を読む。

軍事基地の要・不要論というものがある。本書はそこには敢えて踏み込まず、世界中の米軍基地が、いかに植民地主義と差別政策のもと形成されてきたかを検証している。

本書での引用によれば、植民地主義とは、「中核による周辺の支配と収奪の一形態」と定義されることがある。まさに、沖縄は、アメリカにとってのさまざまな周辺のひとつとされ、日本の「本土」(ヤマト)にとっての周辺とされてきた。もちろん、その思考様式は前近代的で野蛮なものである。しかし、その支配は今にいたるまで暴力的にとり行われ、沖縄は常に「周辺」であることを強制され続けている。

アメリカは、第二次世界大戦中から、世界規模で、戦後を見越した基地計画を策定してきた。本書において如実に示されることは、明らかに、沖縄もそのコマであったことだ。沖縄には施政権返還まで核兵器が配備され、他の基地と連動して、ソ連や中国への攻撃プランの一部をなしていた。

沖縄だけではない。

プエルトリコの小島ビスケス島では、そのほとんどを米軍基地が占め、多くの住民が土地と生活を奪われた。しかし、プエルトリコ出身のアメリカ連邦議会の議員やアメリカ本土に住んでいるプエルトリコ人たちの活動によって、この基地がもたらす問題がアメリカの政治課題となり、2004年に、基地の閉鎖がなされている。

キューバのグアンタナモは、テロリスト容疑者に対する厳しい扱いによって悪名高い。オバマ大統領による一部閉鎖命令は、いまだ実行されていない。

ミクロネシアのマーシャル諸島は、大規模な住民移転、核実験と、それによる人体影響を調べるための場となった。(前田哲男『フクシマと沖縄』に詳しい。)

グリーンランドでは、アメリカ政府の意向を汲んだデンマーク政府が、基地建設のために住民を強制退去させた。

インド洋のディエゴガルシアでは、アメリカ政府の要請により、英国政府が島民全員(!)をモーリシャスに強制移住させた。この問題は現在、モーリシャス政府によって、ハーグの国際仲裁裁判所に持ち込まれている。

韓国のピョンテクでは、やはり、親米政権によって国内への強引な基地建設が行われている。

こうして示される諸事例を見ると、冷戦が終結した今も、米軍の「周辺」における世界戦略が、沖縄を含めた米軍基地の上位概念であることがよくわかる。すなわち、このことは、米軍の戦略に照らせば、沖縄の米軍基地をもはや不要なものと位置づけることが可能ということや、アメリカの「本土」において前近代的な統治の是非を問うことが有効であることも示しているのではないか。

●参照
太田昌克『日米同盟』
前田哲男『フクシマと沖縄』
琉球新報『普天間移設 日米の深層』
琉球新報『ひずみの構造―基地と沖縄経済』
沖縄タイムス中部支社編集部『基地で働く』
前泊博盛『沖縄と米軍基地』
屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』
渡辺豪『「アメとムチ」の構図』
渡辺豪『国策のまちおこし 嘉手納からの報告』
高野孟『沖縄に海兵隊はいらない!』
宮城康博・屋良朝博『普天間を封鎖した4日間』
エンリコ・パレンティ+トーマス・ファツィ『誰も知らない基地のこと』
押しつけられた常識を覆す
来間泰男『沖縄の米軍基地と軍用地料』
佐喜眞美術館の屋上からまた普天間基地を視る
いま、沖縄「問題」を考える ~ 『沖縄の<怒>』刊行記念シンポ
ガバン・マコーマック+乗松聡子『沖縄の<怒>』
由井晶子『沖縄 アリは象に挑む』
大田昌秀『こんな沖縄に誰がした 普天間移設問題―最善・最短の解決策』
浦島悦子『名護の選択』
浦島悦子『島の未来へ』
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』
『世界』の「普天間移設問題の真実」特集
久江雅彦『日本の国防』
久江雅彦『米軍再編』、森本敏『米軍再編と在日米軍』
『現代思想』の「日米軍事同盟」特集


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