Sightsong

自縄自縛日記

沙柚『憤青 中国の若者たちの本音』

2010-10-08 00:21:58 | 中国・台湾

今回の反日運動ではまるで自分が責められているかのような息苦しい思いを抱いていた。それは反日そのものよりも、かなりの人たちが、マスメディアと同じ論調で反中を説きはじめたことによるものだったと思う。こうなれば何を言おうとも無駄。

毒入り餃子事件、反日デモ暴動など、過去何年かの間でも同じようなことはあって、共通している点は、中国人とあまり接した体験がない人に限って、まるで国家・国民を一枚岩であるかのように見がちであるという側面だった。実はこれは合せ鏡であり、中国でも、日本人を歴史的抽出、ないしはドラマに出てくる凶暴な軍人というフィルタを通してのみ見て判断する人は確かに多いようだ(ホテルで多くのチャンネルを一巡すると、大概は旧日本軍が登場する)。しかし、実際に接する人たちは、そんなカリカチュア化された極端な人物ではない(もちろん、そうでない場合もある)。良い人たちは多い。当たり前の話である。しかし実は当たり前が当たり前でない、それで息苦しい。

沙柚『憤青 中国の若者たちの本音』(新潮社、2005年)は、そんな中国の断片を数多く見せてくれる。報道されるデモとは無関係に存在する世界。教育やインターネット情報のみによって持つ意見。その中での真っ当な少数意見(あるいは多数意見)。政府への批判と憤り(「上には政策があり、下には対策がある」)。デタラメな行政。カネで解決するシステム。格差。自国の歴史への無反省。愚かな大衆。そして日本軍の蛮行の直接的な記憶。これまで見聴きしたような話も含め、いちいち胸が痛くなってなかなか読み進められない。もちろん、合せ鏡という言葉はここでも生きてくる。

答えはない。今回の件で喜んでいる奴は誰なのか、ポイントはそこである。


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