Sightsong

自縄自縛日記

侯孝賢『ミレニアム・マンボ』

2010-09-23 22:22:01 | 中国・台湾


ポストカード

侯孝賢『ミレニアム・マンボ』(2001年)を観る。侯がはじめてスー・チーを起用した作品である。

台北、新大久保、夕張。過去と現在、想像とが混在する。過去の侯作品でも感じられたような音空間のアンビエント性だけではない。細部がplausibleかどうかではなく、時空間と記憶とを含めたatomosphereを生きたままに封じ込めることをリアルだと言うのだとすれば、この映画は極めてリアルだ。

それを生みだすカメラが本当に巧い。自宅の部屋のなかで漫然と過ぎ去る時間。クラブの中でスー・チーを見出さんとして壁を舐めるように移動する視線。異空間としての、夕張のおでん屋のお婆さん。台北の雑踏と、雪で音が消えたような夕張の夜。新大久保のホテル、頼る相手もなく窓際で休むスー・チーに射す光の移り変わり。そして想像の世界、夜の無人の夕張を捉えた長回し、去来するカラス。

天才だと言ってしまえばそれまでだが、息苦しいほどのアウラが充溢している。侯がスー・チーを起用した作品には『百年恋歌』(2005年)もあり、早く観たくてたまらないところだ。

ところで先週足を運んだ杭州の映画館には、アンドリュー・ラウの新作『精武風雲』のポスターが貼り出されていた。ドニー・イェンはともかく、スー・チーとアンソニー・ウォンの共演なんて、そそられる。

●参照 
侯孝賢『冬々の夏休み』
侯孝賢『レッド・バルーン』
アンドリュー・ラウ『Look for a Star』(スー・チー主演)
『スー・チー in ミスター・パーフェクト』(ジョニー・トー製作)


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