オリヴィエ・アサイヤス『クリーン』(2004年)を観る。
ロック業界。ドラッグで夫を亡くし、自らもドラッグ中毒で収監された女性(マギー・チャン)は、慣れない仕事を探し、いまだ見たことのない真っ当な生活を引寄せようとする。全ては、夫の両親のもとに預けている息子と一緒に暮らすためだった。記憶がこびりついたロンドンを避けてパリへ、そしてヴォーカリストとして録音のオファーがあったサンフランシスコへ赴く。
このときマギー・チャンは40歳前後。斜に構え、虚勢を張る傲慢な態度を変えることができないながら、弱さを暴発させそうな愚かな女性の演技が良い(アサイヤスと離婚したばかりだった)。また、感情を抑える夫の父親を演じたニック・ノルティも良い。口がでかくけだるい感覚のベアトリス・ダルも良い。
しかし何よりも、ライヴ感のあるカメラワーク、アンビエントな音楽とアンビエントなノイズ、短いセンテンスをスピーディーに鋏で断ったような編集が絶妙だった。感動も感情移入もしないが魅せられたことは確かだ。