ジョージ・ロイ・ヒル『明日に向かって撃て!』(1969年)を観る。アメリカン・ニューシネマの名作だが、わたしにとってはリアルタイムの映画ではない。とは言っても、1990年くらいにレンタルヴィデオで観て以来。
ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス、それぞれのキャラクター作りがハマっていて、みんなが好きになってしまう。
ブッチ・キャシディ=ニューマンは、頭脳明晰で、いつも余裕たっぷりに冗談を口にする。しかし、実は、「人を撃ったことがない」。サンダンス・キッド=レッドフォードは豪放で弱いところは見せない。しかし、保安官たちに追いつめられて崖から川に飛び込まざるを得ないとき、実にバツの悪い顔をして、「俺は泳げない」。エッタ=ロスは、自立していて、可愛くて、セクシー。
時代は19世紀末、米西戦争のとき。旧時代の権力であるスペインは、アメリカに敗れ、カリブ海やフィリピンでの支配権を失うことになる。ブッチやサンダンスも、自らを旧世代の消えゆく存在だと認めつつ、それに抗って個性を振りまいている。ちょうど、サッカーのワールドカップにおいて、古いシステムでの強さを妄信したブラジルチームに重ねあわせてしまったりして。
当初、三部作(「俺たちに明日はない」「明日に向かって撃て!」「スティング」)として企画されていて、ほんとうはロバート・レッドフォードではなく、ウォーレン・ビーティーの予定だったのを、大金持ちのビーティーはもう仕事はやりたくないといって、断ってしまったという逸話があります。本当の理由はよくわからないそうなのですが。そんなことはあっても、いずれもアメリカ映画を代表する名画ですね。
『俺たちに明日はない』については、ビーティもフェイ・ダナウェイも好みでないというだけなんですけど。でも、確かにまた観たくなります。