■『沖縄の島じまをめぐって』(沖縄地学会編著、築地書館、1997年)
これまで、沖縄の地学的な成り立ちを把握するために、これを読んでいた。解説だけでなく、実際にどこに行けば何を観察できるかが書いてある点がわかりやすい。しかし古い本なので、どこそこの裏手に露頭があって、などと書いてあるが、現在もそうなのかわからない。
3年ほど前、大宜味村の塩屋湾で、解説に従って砂浜を探った。確かに星の砂などと同様に有孔虫の殻である銭石をいくつも見つけることができた。コインがざっくざっく拾える浜というわけなのだ。(>> リンク)
良い本なので、図書館で使うシール状のビニールを貼って大事にしている。
参照
○星の砂だけじゃない(沖縄県の塩屋湾の銭石のこと)
■『琉球列島ものがたり 地層と化石が語る二億年史』(神谷厚昭、ボーダーインク、2007年)
今夏、那覇で見つけ、あっ読みたかったのはこれなんだと喜んで入手した。著者は上述の『沖縄の島じまをめぐって』でも書いているひとり。島によって別々に記述しているのではなく、トピックや時代によってまとめている。
古生代以降の琉球弧の隆起沈降やプレート運動をうまく整理してあって、とても面白い。とは言っても地学は常に変わっていくパズルであるから、ときどき混乱してしまう。
沖縄の赤土には北部の国頭マージと中南部の島尻マージとがあり、前者は強酸性、後者は中性~弱アルカリ性。その理由で、北部では化石が分解してしまいあまり見つからないのだ、という説明に納得させられる。やんばるでシャワーを使っていて、手拭の色が急速に落ちたのも酸性のせいかな。
島尻マージの成因だが、琉球石灰岩の分布と重なっているため、石灰岩が風化して赤土と化したと考えられていたらしい。少なくとも、『沖縄の島じま・・・』にはそのような示唆がなされている。ところが本書によると、大陸からの風成塵が相当入っているようで、定説はまだないようだ。そのような研究状況も書かれてあって好感を覚える。本書には、島尻マージ内のマンガン塊についても解説してあって、やはり石灰岩の風化とばかりは言えないという。東村の宇出那覇にもあるようで、今度、民宿「島ぞうり」に泊まることがあれば気にとめておこうと思っている。
これだけでなく内容は盛り沢山で、例えばあまりにも独特な自然史を持つ南大東島にやっぱり行きたいなあと思わせる解説もあり、困ってしまう。このような本は一度読んでおしまいではない。
参照
○『赤土問題の基礎物理化学的視点』(沖縄の赤い海)
○ウデナハ売店(沖縄の共同売店)
■『磯の生き物』、『海岸植物の本』、『亜熱帯沖縄の花』(屋比久壮実、アクアコーラル企画)
自然や街で何かを見るとやはり確かめたくなるのであって、このような写真付、1頁1種というつくりの本は嬉しい存在だ。とりあえず気になる3冊を入手し、あとで名前を確認したりぱらぱらめくったりして楽しんでいる。著者がすべて同じことは、後で気が付いた。
参照
○東京の樹木
■『環境読本 消えゆく沖縄の山・川・海』(沖縄県教育文化資料センター 環境・公害教育研究委員会編、2003年)
おそらく学校の副読本なのだと思う。尊敬していた、故・宇井純氏が巻頭文を寄稿しているため、読まないわけにはいかない。
やんばるの森林や川の生物多様性、林道による森林破壊、リュウキュウアユ、タナガー(テナガエビ)、赤土汚染とサンゴの死滅、外来魚問題、基地、破壊的なリゾート、干潟、ジュゴンなど、ひとつひとつのテーマについて、おざなりな解説ではなく、実際の姿を提示しているようだ。このような、専門書ではなく、まともに沖縄の自然環境問題を概観したものは、東京の書店では見つけることができない。
親慶原ではお騒がせしました(笑)。赤土は無事に、息子のスクラップブックに貼り付けられました。
『消えゆく・・・』は意図のはっきりした本ですね。この後に、林道にせよ、干潟にせよ、基地にせよ、問題が進行しているのが腹立たしいところです。
『消えゆく沖縄の山・川・海』だけは持っています。確かまだ東京にいたときにどこかで手にいれたような気がしますが定かではありません。
この本に出てくるやんばるの主・玉城長正さんに会えたときに、後から「あの本の人だったか」と気づきました。