ウィリアム・パーカーは、超重量級でいて柔軟なベーシストである。『北斗の拳』でいえば、ラオウの剛の拳とトキの柔の拳を併せ持つような無敵ぶりだ。しかも多作ときていて、中古棚を探すたびに何かが出てくる。
■ ダニエル・カーター+ウィリアム・パーカー+フェデリコ・ウーギ『The Dream』(577 Records、2006年)
Daniel Carter (as, ts, fl, tp, cl, p)
William Parker (b, tuba, 尺八)
Federico Ughi (ds)
ダニエル・カーターは60代後半のマルチ楽器奏者。ここでも、サックス、フルート、クラリネット、トランペットを吹くのに加え、ピアノまで弾いている。
これまであまり聴く機会がなかったのだが、聴く方も耳が散漫になってしまい、何が彼の音色やフレーズの特色なのか、まだよくわからない。オーソドックスなアプローチであることは確かだ。
それでも、パーカーとのコラボレーションは良い。パーカーは、彩溢れるリズムでボディを攻め続け、また、「ブホブホブホ」と、チューバで低音にさらなる色を塗っていく。
■ ウィリアム・パーカー+ロイ・キャンベル*+ダニエル・カーター+アラン・シルヴァ『Fractured Dimensions』(FMP、2003年)
William Parker (b)
Roy Campbell (tp, flh)
Daniel Carter (fl, cl, as, tp)
Alan Silva (syn, p)
吹き込みが遡るが、カーターに加え、ロイ・キャンベルと、フリージャズの御大アラン・シルヴァが参加する。
ここでは、カーターはやはり楽器をさまざまに持ち替え、キャンベルとともに模様を描いていく。しかしここでの聴きどころは、間違いなくシルヴァのシンセサイザーだ。表面を削るような音色のシンセは、ときに鳴らすピアノと相まって、音楽に厚みを持たせている。
長い演奏での盛り上がりは興奮必至なのであって、聴いていると、自分がどの地点にいるのかわからなくなる。
そしてパーカーは常に真ん中に存在する。これは素晴らしい。
●参照
○ウィリアム・パーカーのベースの多様な色
○ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集
○ジョー・ヘンダーソン+KANKAWA『JAZZ TIME II』、ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』 オルガン+サックスでも随分違う
○ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』
○ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』
○ウィリアム・パーカー+オルイェミ・トーマス+リサ・ソコロフ+ジョー・マクフィー+ジェフ・シュランガー『Spiritworld』
○エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(ウィリアム・パーカーが語る)
○ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(ウィリアム・パーカーが語る)
○サインホ・ナムチラックの映像(ウィリアム・パーカー参加)
○ペーター・ブロッツマン(ウィリアム・パーカー参加)
○セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(ウィリアム・パーカー参加)