Sightsong

自縄自縛日記

ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、ジョー・マクフィーら『Spiritworld』

2012-03-24 11:28:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、リサ・ソコロフ、ジョー・マクフィーの4人が即興音楽を繰り広げ、同時にジェフ・シュランガーがそれに触発された絵を描くというセッションの映像、『Spiritworld』(2005年)を観る。

William Parker (himalayan horn, perc, 尺八, fl, b)
Oluyemi Thomas (bcl, musette, fl, perc)
Lisa Sokolov (vo)
Joe McPhee (ss)

NYCのギャラリーで、まずはパーカーが吹くヒマラヤン・ホーン(アボリジニのディジェリドゥと同様に、やたらと長い)の低音の中を、トーマスのバスクラが入ってくる。やがてソコロフの声、そこにマクフィーのソプラノサックスが絡んでくる。あとは1時間を超えるフリー・インプロヴィゼーション、目を見張る場面が次々に訪れる。こんなライヴに立ち会ったら永遠に忘れないだろうね。

マクフィーのサックスが、4人のなかでもっとも「ジャズ」的ではある。ソコロフの高音との共鳴もいいし、トーマスのミュゼットとの絡みでは、彼の『Sweet Freedom - Now What?』(1995年)におけるマックス・ローチの曲「Garvey's Ghost」をすぐに想い出させる不穏な立ち上がりもいい。

パーカーは、パーカッションでも愉しげな音を出すものを並べ、また、細い縦笛2本をくわえてローランド・カークばりの演奏もする。そして本職のベースは、特にピチカートで様々な音を出そうとする動きが嬉しい。彼のサウンドの彩りが顕れているようにも見えた。

シュランガーは、例えば、ウィリアム・パーカー『Testimony』のジャケット絵や、ジュリアス・ヘンフィル『Fat Man and the Hard Blues』のジャケットに写された奇妙なサックスの彫刻などを手掛けているアーティストで、どうやら、ジャズのライヴに刺激された作品を創り続けている人のようだ。このDVDにも、ライヴ映像のほかに、シュランガーが自作を語る場面も収録されており、ヘンフィルやデイヴィッド・マレイやヘンリー・グライムスといったジャズ・ミュージシャンたちのことを語る姿は、ジャズ馬鹿そのものだった。勿論誉め言葉である。


米国撮影のフィルム『粟国島侵攻』、『海兵隊の作戦行動』

2012-03-24 09:53:13 | 沖縄

科学映像館が、米軍やUSCAR(米国民政府)が撮影したフィルムの配信を開始している。沖縄県公文書館が米国国立公文書館から複製して収集したものを編集した映像である。

■『粟国島侵攻』 >> リンク

沖縄本島の北西部に位置する粟国島には、1945年6月9日に米軍が上陸を開始した。島の西側は断崖絶壁、東側に砂浜。非常に多くの水陸両用車が次々に上陸していく。これを見るだけでも、兵器の質量ともに日本軍を圧倒していたことが実感できるフィルムである。

呆然として米兵の言うがままに誘導される住民たち。それでも、粟国島では3月の慶良間諸島のような「集団自決」は起きておらず、この原因が日本軍の不在にあると考えられている。

それにしても、海兵隊の若者たちを見ると、十把ひとからげな言い方ではあるが、その場のくぐり抜け方は身についていても、異文化への攻撃や歴史的な重大性など意識にのぼることはほとんどなかったのだろうな、と思ってしまう。つまり、最近のアフガニスタンと重なるのである。


呆然とする人びと

■『海兵隊の作戦行動』 >> リンク

沖縄戦の組織的な抵抗が終わるのは1945年6月23日(大田昌秀氏によると22日)であり、その前後に撮られたフィルムのようだ。

本島すぐ横の瀬長島に米軍が上陸している。現在は無人島だが、敗戦まで集落が存在した。おそらくは人々が身を隠すことを防ぐため、米軍は、火炎放射器で背の高い草木を焼き払っている。

そして、おそらく「Okinawan Southern Tip」とあるので糸満であろう地の映像がある。ガマを出るよう促されて捕虜になる人々。米軍撮影隊は「救助」や「治療」とのフリップを何度も挿入している。それ自体には嘘はないとしても、ガマに手榴弾を投げ込んだり、火炎放射器で焼きつくそうとしたりといった映像が、「1フィート運動」の方々により得られていることには留意すべきだ。このフィルムには、「IHS」の文字が背中にある牧師が海兵隊員に何か説教を垂れている様子も収録されており、明らかに空々しい。


説明用フリップ。ガイガーやシェパードは海兵隊将校の名前だろう。

とは言え、怖ろしい映像も含まれている。6月29日のことらしい、道路の下に掘られた防空壕に住民が隠れている。パイプをくわえた米兵はその中に拳銃を発射し、住民を両足から引きずり出し、その間、何度も身体に銃弾を撃ち込んでいる。さらに、その中に手榴弾を投げ込み、まだ隠れているかもしれない人々を念のために死に追いやっているのである。これが住民虐殺でなくて何であろう。


隠れる人を拳銃で撃つ米兵

●参照
『けーし風』読者の集い(15) 上江田千代さん講演会(1フィート運動の映像)
沖縄「集団自決」問題(10) 沖縄戦首都圏の会 連続講座第3回(大城将保氏による「沖縄戦の真実と歪曲」)
感性が先 沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会
朴寿南『アリランのうた』『ぬちがふう』
沖縄戦に関するドキュメンタリー3本 『兵士たちの戦争』、『未決・沖縄戦』、『証言 集団自決』
『沖縄・43年目のクラス会』、『OKINAWA 1948-49』、『南北の塔 沖縄のアイヌ兵士』
『“集団自決”62年目の証言~沖縄からの報告~』、『沖縄 よみがえる戦場 ~読谷村民2500人が語る地上戦~』
今井正『ひめゆりの塔』
舛田利雄『あゝひめゆりの塔』
森口豁『ひめゆり戦史』、『空白の戦史』
仲宗根政善『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』、川満信一『カオスの貌』
『ひめゆり』 「人」という単位
大田昌秀講演会「戦争体験から沖縄のいま・未来を語る」(上江田千代さん)

●科学映像館のおすすめ映像
『沖縄久高島のイザイホー(第一部、第二部)』(1978年の最後のイザイホー)
『科学の眼 ニコン』(坩堝法によるレンズ製造、ウルトラマイクロニッコール)
『昭和初期 9.5ミリ映画』(8ミリ以前の小型映画)
『石垣島川平のマユンガナシ』、『ビール誕生』
ザーラ・イマーエワ『子どもの物語にあらず』(チェチェン)
『たたら吹き』、『鋳物の技術―キュポラ熔解―』(製鉄)
熱帯林の映像(着生植物やマングローブなど)
川本博康『東京のカワウ 不忍池のコロニー』(カワウ)
『花ひらく日本万国博』(大阪万博)
アカテガニの生態を描いた短編『カニの誕生』
『かえるの話』(ヒキガエル、アカガエル、モリアオガエル)
『アリの世界』と『地蜂』
『潮だまりの生物』(岩礁の観察)
『上海の雲の上へ』(上海環球金融中心のエレベーター)
川本博康『今こそ自由を!金大中氏らを救おう』(金大中事件、光州事件)
『与論島の十五夜祭』(南九州に伝わる祭のひとつ)
『チャトハンとハイ』(ハカス共和国の喉歌と箏)
『雪舟』
『廣重』
『小島駅』(徳島本線の駅、8ミリ)
『黎明』、『福島の原子力』(福島原発) 
『原子力発電の夜明け』(東海第一原発)
戦前の北海道関係映画
山田典吾『死線を越えて 賀川豊彦物語』
『チビ丸の北支従軍 支那事変』(プロパガンダ戦争アニメ)