2月6日に新宿ピットインで行われたライヴ「くにおんジャズ」は、国立音楽大学OBが集まった変わったセッションだった。都合が悪くて行けなかったが、後日、師匠の松風鉱一さんから、録音したCDをもらった。1グループあたり持ち時間は20分で、松風さん(フルート、アルトサックス)は山下洋輔(ピアノ)、金子健(ベース)とのトリオ。この御大との組み合わせは聴いたことがないので、もらって以来、何度も聴いている。
まずフルートで「Life Time Blues」。『万華鏡』(with 三好功郎、Off Note)やヴィデオ『音の力』(Off Note)、最新の『ゲストハウスで昼寝』(Studio Wee)でも演奏している曲だが、山下洋輔のピアノが入ると普段と違う緊張感があってとても新鮮だ。『ゲストハウス・・・』は外山明の変リズムや加藤嵩幸の変態ギターが楽しい。
それからアルトサックスに持ち替えて「Yellow Sands」。これも『万華鏡』にある。さらに「Asian Walk」。『A Day In Aketa』(アケタズディスク)や何かにもあるし、私家録音盤としてもらったクリヤマコト(ピアノ)との共演も好きで何度も聴いているのだが、ここでも、ささくれたようなアルトの音がとても個性的だと思うのだった。
この日のライヴはNHK FMが録音していたそうで、放送は3月だそうだ。何の番組だろう、「Session 2008」とかかな。原田依幸(ピアノ)と梅津和時(サックス)とのデュオなど聴きどころがあって楽しみである。
『万華鏡』と『A Day In Aketa』
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鳥飼否宇『密林』(角川文庫、2003年)を読んだ。
やんばるの森が舞台になっている。昆虫採集のために、米軍のジャングル訓練センターに入り込んだ主人公たちが、札束を持ち逃げしようとする米兵や、欲に眼が眩んだ猟師たちに巻き込まれるという話。
冒険譚としても、サスペンスとしても、謎解き物語としても、何と言うこともない軽い作品なのだが、やんばるの森の特徴があれこれと盛り込まれていて、それだけで楽しい。ハブとヒメハブの違い、林道建設による本来の生態ではない「パイオニア植物」たちの繁茂、ガジュマルとアコウの違い、など。米軍がそこに居ることの不自然さをもっと描いてほしかった気もするが、森林破壊を呪う気持ちが伝わってくるのでよしとする。それから、札束ではないもうひとつの「宝」として登場するのは、やんばるの、あの生き物である(これは言わない)。
やんばるに愛着を持っている人には、わりに面白く、気分転換になると思う。
●参考(パイオニア植物などのこと) そこにいるべき植物