四季の彩り

季節の移ろい。その四季折々の彩りを、
写真とエッセーでつづって参ります。
お立ち寄り頂ければ嬉しいです。

「宗旦むくげ」に寄せて

2024年07月21日 11時27分56秒 | 四季の花

 鎌倉、大倉山の片すみに槿の群生があり、その花がちょうど開花の時期を
迎えています。純白の花びらに底紅をもつ宗旦槿と呼ばれるその花は華やかな
花姿に似ぬ、妙なる寂しさをまとっています。それは「朝開暮落」の花名が
示すとおり、朝に花開き夕べに散る「ひと日花」の宿命を理解する、私ゆえの
哀しみでしょうか。

     「咲き初める 宗旦むくげ」

 夏の夕べ、ひと日という短い生涯を全うし散っていく花の風姿。
「槿花一朝の夢」を語るにふさわしい、儚さと気品に満ちています。
短く儚いゆえに、生の限りを懸命に燃やした若者達の真摯な思い。
その思いは争乱に明け暮れた源平の昔より、どんな時代の闇の中でも、
それぞれに光彩を放ちながら時代の青春を貫いてきました。それは、
祖国に留まり理不尽なロシアの侵略に対して、闘いを挑むウクライナの
青年たちの想いに重なります。

 大倉山から眺める鎌倉の街並みは、炎暑の余韻を留めながら、夏の
夕映えの中で淡いセピア色に染まっています。
七里ガ浜からの潮騒も聞こえてきそうな静寂の中で、むくげの花は今、
まさにその花弁を閉じようとしています。
 一日と言う短くも、かくも典雅さに溢れた花の一世。夏の夕映えの
中で静かにその花弁を閉じるむくげの花は、風雅さを押し包むように
萎んでいきます。

     「宗旦むくげ」

 朝に開き、夕べに散る槿花の紡いだ夢は、儚さそのものかもしれません。
しかし、それは遠い戦乱の世も含めて、今、ウクライナで、そしてガザで死と
隣り合わせの生を懸命に、健気に生きる人々の燃焼の証でもあり、一瞬を
永遠に重ねることを悟った、凛とした気品と志の証でもあると思っています。

コメント (5)
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