わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

通訳者の悪夢、またまた

2017-09-21 | 英語
AFP=時事によりますと、
ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が国連総会(UN General Assembly)で行った初演説をめぐり、イランを痛烈に非難した箇所をイランの国営放送の通訳者が角の立たないように恣意(しい)的に訳し変え、ソーシャルメディア上で批判を浴びている。この通訳者は20日、「国営テレビで自国に敵対的なことは言うべきでない」などと自らの判断を正当化した(原典:ヤフーの記事)そうです。以下、同記事からのオリジナルと訳の差:

トランプ氏:「(イランは)暴力、殺りく、混沌(こんとん)を主な輸出品とする劣化したならず者国家だ」
通訳後:「イランはイスラエルを破壊すると言っている」
(わにツッコミ:イスラエルって、どこから出てきたの?)
トランプ氏:「米国の巨大な軍事力以外で……イランの首脳が最も恐れているのはイランの国民だ」
通訳後:「米陸軍は非常に強力な軍隊で、イランは非常に強力な国家だ」(わにツッコミ:いや、これ、普通に誤訳でしょ)
(わにツッコミ:いや、これ、普通に誤訳でしょ)
トランプ氏:「だからイランの政権はインターネットへのアクセスを制限し、衛星放送アンテナを壊し、武器を持たない学生デモ隊を撃ち、政治を改革しようとする人々を投獄している」
通訳後:「イランで起きている多くのことはわれわれにとって受け入れられない」
(わにツッコミ:まとめちゃったんですね)

 国営イラン放送(IRIB)の通訳者ニマ・チートサーズさんに対する非難が、SSN上で飛び交っているそうですが、私も通訳の端切れとして、これは難しい問題だなぁと思います。上の例は確かに、内容変えすぎだろ!ってツッコミ入れたくなりますが、過激な発言を、一般聴衆に対して、どれだけオブラートに包んで伝えるか。2つの国のコミュニケーションの橋渡し役として、ニマさんも「こんなの、そのまま訳出来ねー!」と、思ったのかも。

同時通訳の場合、言語の差で、うまく当てはまる言葉が無くて説明しなきゃならなかったり、全てを限られた数秒間に漏らさずに伝えるのは非常に困難、正直、ちょっと端折ってまとめちゃうこともあります。短い発言が、長い訳になっちゃうこともありますし、逆に延々続く発言が、ころっと短い言葉で表現できちゃうこともある。正直、色々な言い回しで表現されても「ごめん、それ日本語(英語)にしたら、一言で終わるんやわ」とか、「さっきと同じにしか訳出来まへん」ってことは、実はよくある。

 ニマさんには、SNSを通して非難だけではなく、脅しもあるそうだけど、アンタ、それはあかんやろ、と思うと同時に、同情もします。ドラえもんの翻訳こんにゃくや、グレッグ・イーガンの小説に出てくる鼻腔内に挿入したら、ナノ粒子が脳を刺激して言語能力が上昇して、どんな言語も習得できるって技術が実現すればいいのに!あ、でも、その前にバベルの塔が崩壊する?