これまた「覆面座談会事件」がらみで興味を持ち読みました。
‘06SFマガジン国内長編ベスト7位、'14年SFマガジン国内長編ベスト26位と小松左京作品の中でも人気の高い作品です。
('14年SFマガジンベスト、国内分まとめていなかった…。近々まとめてみてみたいです)
本作は「未踏の時代」でも光文社の「日本アパッチ族」に先を越された作品として紹介(?)されていますが、福島正実の企画による早川書房の初の日本人SF作家による長編シリーズ「日本SFシリーズ」の第1巻として1964年に発刊された作品です。
(本当は小松左京の長編第一作としてシリーズの目玉になるはずだった)
小松氏いわく「ハードSFとしては第一作なのでいいかなぁ」と思っていたそうですが…。
まぁ福島氏は憤懣やるかたなかったでしょうねぇ。
1980年には角川春樹事務所により映画化されています。
当時小学4年生だった私は観にはいけませんでしたがテレビで盛んにコマーシャルをしていたのを覚えています。
なんだか「大人―」な感じがしてとても小学生が見に行く雰因気ではなかったような…。今思えばそうでもないんでしょうが….。
本作ヒントにマイケル・クライトンが「アンドロメダ病原体」を書き、「アンドロメダ…」として映画化されたのではとの説もあるようです。
(ハリウッドに企画を持ち込んだろき20世紀フォックスにクライトンがいたらしい)
映画の方はそれなりに当たって“1980年の邦画興行成績では黒澤明監督作品『影武者』に次ぐ24億円の配給収入]を記録するヒット作となる”わけですが“製作費が巨額だったため、宣伝費等を勘案すると赤字であったとされる。本作がきっかけとなって、角川映画は1970年代の大作志向から、1980年代は薬師丸ひろ子ら角川春樹事務所の所属俳優が主演するアイドル路線のプログラムピクチャーに転換した。”(wikipediaより)
ということで後に「映画:ねらわれた学園」やら「映画:時をかける少女」が製作される流れになるわけですね,,,。
なんだか感慨深いです。
角川春樹氏は「「復活の日」を映画化するために角川書店を継いだ」というほど本作に対して思い入れがあったようです。
そんないきさつもありで本書も最初は早川文庫に収載されていましたが、他小松左京作品同様角川文庫へ移籍しています。
小松左京=日本SF作家クラブ VS 早川書房の構図のある意味象徴的作品かと…。
私が小学生時代はハヤカワで出ていたSF作家第一世代作家の作品は大体角川文庫に移籍していたような….。
(星新一は当時から新潮文庫から多く出ていましたが)
本自体はブックオフで角川文庫版を入手していました。
現在はハルキ文庫に収載されており一応新品で入手できます。
ハルキ文庫は小松左京作品始め多くの日本SF作家第一世代の作品を今でも出しています。
角川春樹氏、義理堅いですね。
小学生時代からいつか読もうと思っていたのですが….映画のアダルトなイメージもあり、なにやらハードそうでいままで読めずにいました。
40年弱の念願かないました。
内容(カバー折込部記載)
人類に明日はあるか・・・・・・。BC(生物化学)兵器として開発された新種の細菌、それは、ちょっとした偶発事故からでも、人類を死の淵に陥れる。
―――吹雪の大アルプスで小型機が墜落、黒焦げの乗員と部品や胴体の破片が発見された。この機には、秘密裏に開発された猛毒性を持つMM菌のカプセルを搭載していた。わずか摂氏5度でも気ちがいじみた増殖をはじめ、ハツカネズミが感染後5時間で98パーセント死滅! MM菌の実験データは冷酷に告げている。
春になり雪どけがはじまると、奇妙な死亡事故が報告されはじめた・・・・・・。
人類滅亡の日も刻一刻と近づく。著者最高のSF長編小説。
一読後の感想、なんとなく読む前から「小松左京の長編としては最後まできっちり書かれているんだろうなー」と思っていたのですが、氏の作品としてはめずらしく(失礼)かっちり最後まで書かれています。
これでもかとばかりにウィルス-感染-遺伝(地質学)の知識が披露されておりハードSFとしての理論武装としては今日的にみても「世界的レベルで」一級品だと思います。
地球の生物及び人類は何度も絶滅の危機に会いながらそれを乗り越え繁栄しているというのは、戦後から現代までの地球・生物・人類学の共通認識かと思うのでその辺もきっちりと1964年の段階で抑えているのはさすが知の巨人「小松左京」です。
(立花隆が出てくるまではその位置は「小松左京」だった気がします。最近立花隆も見ないのでそんな位置は池上彰氏でしょうかねぇ)
「日本人にこんな高いレベルハードSFが書けるのか!」という意味では素晴らしい作品だと思うのですが….。
本作本人も「“日本のSFをめぐって―――ミスターXへの公開状」(日本SF論争史収載)で語っていますがネビル・シュートの「渚にて」を下敷きにして、「ハードSFを書いてやる」ということで「かなり筆を抑えた」ということです。
おかげで無事完結したのはいいんでしょうが….他作品にある独自の「小松左京的文明観」が薄めで、ふろしきを拡げなかったのが物足りなかったような…。
先にも書きましたがハードSFとしては「当時の水準としては」世界的なものだったとも思いますが、「渚にて」(映画しか見ていないのでいい加減です)に象徴される典型的終末SFにウィルス知識をいれただけという感じもあり、小松作品独特の発想のスケールの大きさに欠ける感じはありました。
ウィルスによる人類絶滅の思考シミュレーションとしては今日的意味でも楽しめる作品だとは思いますが、登場人物も類型的で人間ドラマはかなり単純かつ起伏に欠けました。
主人公 吉住と、日本にいる恋人(?)な則子の関係などももう少し掘り下げてもとも思いましたし…。
(則子は当時の文春の編集者がモデルらしいですが…、吉永は日本沈没の主人公の原型?)
南極での「自治」機構などももう少し掘り下げても….ともなどとも思いますが、そんなとこまでやるとそれこそ世界レベルでの傑作になってしまうので望むのが無理なのかもしれません。
本作現代においても細菌問題考える上では楽しめるハードSFだと思います。
ただ背景となる社会構造が「米ソ冷戦」前提なのでその辺わかっていない若者には理解がきついかもしれません….。
人間ドラマとしては「もう少し書き込んでくれればなー」という感じはあるのですが、多数出てくる市井で人助けを行う人々が「主人公」ということで意図的なものなのかもしれません。(それならそれでそっちに徹して書けばとも思うのですが....)
なんだかいろんな意味で「惜しい」のですが小松左京の「おさえた筆」でまとまった安心して楽しめる作品だと思います。
↓夕日バックのCMにときめいた方も、ハードSF大好き!という方もよろしければ下のバナークリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
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‘06SFマガジン国内長編ベスト7位、'14年SFマガジン国内長編ベスト26位と小松左京作品の中でも人気の高い作品です。
('14年SFマガジンベスト、国内分まとめていなかった…。近々まとめてみてみたいです)
本作は「未踏の時代」でも光文社の「日本アパッチ族」に先を越された作品として紹介(?)されていますが、福島正実の企画による早川書房の初の日本人SF作家による長編シリーズ「日本SFシリーズ」の第1巻として1964年に発刊された作品です。
(本当は小松左京の長編第一作としてシリーズの目玉になるはずだった)
小松氏いわく「ハードSFとしては第一作なのでいいかなぁ」と思っていたそうですが…。
まぁ福島氏は憤懣やるかたなかったでしょうねぇ。
1980年には角川春樹事務所により映画化されています。
当時小学4年生だった私は観にはいけませんでしたがテレビで盛んにコマーシャルをしていたのを覚えています。
なんだか「大人―」な感じがしてとても小学生が見に行く雰因気ではなかったような…。今思えばそうでもないんでしょうが….。
本作ヒントにマイケル・クライトンが「アンドロメダ病原体」を書き、「アンドロメダ…」として映画化されたのではとの説もあるようです。
(ハリウッドに企画を持ち込んだろき20世紀フォックスにクライトンがいたらしい)
映画の方はそれなりに当たって“1980年の邦画興行成績では黒澤明監督作品『影武者』に次ぐ24億円の配給収入]を記録するヒット作となる”わけですが“製作費が巨額だったため、宣伝費等を勘案すると赤字であったとされる。本作がきっかけとなって、角川映画は1970年代の大作志向から、1980年代は薬師丸ひろ子ら角川春樹事務所の所属俳優が主演するアイドル路線のプログラムピクチャーに転換した。”(wikipediaより)
ということで後に「映画:ねらわれた学園」やら「映画:時をかける少女」が製作される流れになるわけですね,,,。
なんだか感慨深いです。
角川春樹氏は「「復活の日」を映画化するために角川書店を継いだ」というほど本作に対して思い入れがあったようです。
そんないきさつもありで本書も最初は早川文庫に収載されていましたが、他小松左京作品同様角川文庫へ移籍しています。
小松左京=日本SF作家クラブ VS 早川書房の構図のある意味象徴的作品かと…。
私が小学生時代はハヤカワで出ていたSF作家第一世代作家の作品は大体角川文庫に移籍していたような….。
(星新一は当時から新潮文庫から多く出ていましたが)
本自体はブックオフで角川文庫版を入手していました。
現在はハルキ文庫に収載されており一応新品で入手できます。
ハルキ文庫は小松左京作品始め多くの日本SF作家第一世代の作品を今でも出しています。
角川春樹氏、義理堅いですね。
小学生時代からいつか読もうと思っていたのですが….映画のアダルトなイメージもあり、なにやらハードそうでいままで読めずにいました。
40年弱の念願かないました。
内容(カバー折込部記載)
人類に明日はあるか・・・・・・。BC(生物化学)兵器として開発された新種の細菌、それは、ちょっとした偶発事故からでも、人類を死の淵に陥れる。
―――吹雪の大アルプスで小型機が墜落、黒焦げの乗員と部品や胴体の破片が発見された。この機には、秘密裏に開発された猛毒性を持つMM菌のカプセルを搭載していた。わずか摂氏5度でも気ちがいじみた増殖をはじめ、ハツカネズミが感染後5時間で98パーセント死滅! MM菌の実験データは冷酷に告げている。
春になり雪どけがはじまると、奇妙な死亡事故が報告されはじめた・・・・・・。
人類滅亡の日も刻一刻と近づく。著者最高のSF長編小説。
一読後の感想、なんとなく読む前から「小松左京の長編としては最後まできっちり書かれているんだろうなー」と思っていたのですが、氏の作品としてはめずらしく(失礼)かっちり最後まで書かれています。
これでもかとばかりにウィルス-感染-遺伝(地質学)の知識が披露されておりハードSFとしての理論武装としては今日的にみても「世界的レベルで」一級品だと思います。
地球の生物及び人類は何度も絶滅の危機に会いながらそれを乗り越え繁栄しているというのは、戦後から現代までの地球・生物・人類学の共通認識かと思うのでその辺もきっちりと1964年の段階で抑えているのはさすが知の巨人「小松左京」です。
(立花隆が出てくるまではその位置は「小松左京」だった気がします。最近立花隆も見ないのでそんな位置は池上彰氏でしょうかねぇ)
「日本人にこんな高いレベルハードSFが書けるのか!」という意味では素晴らしい作品だと思うのですが….。
本作本人も「“日本のSFをめぐって―――ミスターXへの公開状」(日本SF論争史収載)で語っていますがネビル・シュートの「渚にて」を下敷きにして、「ハードSFを書いてやる」ということで「かなり筆を抑えた」ということです。
おかげで無事完結したのはいいんでしょうが….他作品にある独自の「小松左京的文明観」が薄めで、ふろしきを拡げなかったのが物足りなかったような…。
先にも書きましたがハードSFとしては「当時の水準としては」世界的なものだったとも思いますが、「渚にて」(映画しか見ていないのでいい加減です)に象徴される典型的終末SFにウィルス知識をいれただけという感じもあり、小松作品独特の発想のスケールの大きさに欠ける感じはありました。
ウィルスによる人類絶滅の思考シミュレーションとしては今日的意味でも楽しめる作品だとは思いますが、登場人物も類型的で人間ドラマはかなり単純かつ起伏に欠けました。
主人公 吉住と、日本にいる恋人(?)な則子の関係などももう少し掘り下げてもとも思いましたし…。
(則子は当時の文春の編集者がモデルらしいですが…、吉永は日本沈没の主人公の原型?)
南極での「自治」機構などももう少し掘り下げても….ともなどとも思いますが、そんなとこまでやるとそれこそ世界レベルでの傑作になってしまうので望むのが無理なのかもしれません。
本作現代においても細菌問題考える上では楽しめるハードSFだと思います。
ただ背景となる社会構造が「米ソ冷戦」前提なのでその辺わかっていない若者には理解がきついかもしれません….。
人間ドラマとしては「もう少し書き込んでくれればなー」という感じはあるのですが、多数出てくる市井で人助けを行う人々が「主人公」ということで意図的なものなのかもしれません。(それならそれでそっちに徹して書けばとも思うのですが....)
なんだかいろんな意味で「惜しい」のですが小松左京の「おさえた筆」でまとまった安心して楽しめる作品だと思います。
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