Maintenance SHIOHOUSE

■SHIOブログ■
「店主の独断と偏見でつづる個人的な日誌」

車検整備車両、フルメンテナンス車両

2024-09-03 00:41:31 | ノンジャンル

溜まったネタをどんどん消化しないと収拾付かなくなりそうなので

現在親父が入院中で時間に少しばかり余裕が出来たのでどんどん消化中

 

 

通常の車検整備(24カ月点検)CB400F

特に目立った不具合は無く普通に点検整備

バッテリーの端子が几帳面というか放射状

特に大きな問題も無く完了

 

 

フルメンテナンス CB400F

当店から2番地隣の方がCB400Fを購入したとのことで見させてもらったらあまりにひどく

「購入店にしっかりとアフターフォローしてもらうべきですよ」とアドバイスするも

頑なに「関わりたくない」と

ご近所さんなので邪険にもできず「時間が出来たら少しづつやろうか」と1カ月ぐらい放置状態だったが

天候不良で予約車両持ち込みが翌週末となりぽっかり1週空いてしまい、すぐに持って来てと入庫してもらった。

見た目はきれいなレストア車両

ただし、エンジン音がアイドリング状態でも賑やかで、クラッチレバーを握るとすこし小さくなる

お馴染みのクラッチアウターのガタかな?カムチェーン音もしている。

試乗するとプライマリーのセカンダリードライブギアのギア鳴り(猫鳴き)が異様に大きい、

スロットル開け初めのもたつきもありキャブのO/Hしてジェットニードルセットまで換えていないだろう様子

まずはクラッチの点検

作業時にオイルが出てしまうのでオイルフィラーから覗くと..........ん!!オイルが居ない!?

車体を起こしてレベルゲージで確認

なんだこれは?

納車前に散々クラッチ周りの作業をしていたらしいが作業後にオイル入れ忘れか?

サイドスタンドしか付いていない車両なのでこのままでもオイルは出ないだろうが念のためにもう少し抜いて作業

クラッチカバーを開け、クラッチアウターごと外すがロックナットが酷い有様

ロックナットレンチを使わずマイナスドライバーで作業してる??

新品との比較(無論交換)

クラッチアウターはダンパーゴムを交換してありますね

これも音が出る場合があるんですよね

猫鳴きの原因はプライマリーシャフトのセカンダリードライブギアとクラッチアウターのギアとのギア鳴り

今回はドライブギアをひっくり返して組む

加速時に出ていた音がエンジンブレーキ時に変わり精神的には大分良くなる

ギアの表面に円周状の傷があるが固定するボルトが緩み飛び出てクラッチカバーに穴を開け溶接補修した痕が有り

その時にクラッチアウターに接触したのだろう

ここのボルトは必ず緩み止めを塗布して組み立てる

自分はクラッチカバーを開ける作業の時は必ず脱着しねじ緩み止め塗布を行っている。

 

キャブに関しては車両から外さずに#4キャブのフロートチャンバーを外しニードルジェットを外し摩耗状況を確認し

必要があればキャブを外して作業する

左がテスト用の新品、右が現車のニードルジェット(筒)

新品のジェットニードル(針)を入れ比較する

穴の大きさを見ても判断付きますが、これなら一目瞭然

キャブを外しての交換が決定

キャブレターのジェット類の中で唯一摩耗する部品なのですが

以外と皆さんないがしろにしています

当店でキャブのO/Hキットを何種類か出していますが、本来ならジェットニードルセット入りの「標準キット」のみにしたしたいところですが

他所のジェットニードルセット無しのお安いキットと比較すると値段しか見ない人があまりにも多く「高っ!」って買わないだろうから

「簡易キット」として「ジェットニードルの摩耗の少ない、燃費の良いキャブ向け」として廉価版も出している

同梱しているマニュアルには「アクセル開け初めのもたつき、再加速時のもたつきの場合はジェットニードルセットの交換を推奨」と書いてある

他に摩耗するのがフロートバルブ、バルブシートと接する部分が摩耗して段になる

フロートも純正品は真鍮のためフロートバルブのピンが当たる部分は摩耗する、

フロートチャンバー内のガソリンが少ない状態からコックをONにしてオーバーフローが始まるのはゴミ噛み以外にフロートバルブのピンがフロート側の荒れた面に引っ掛かり出てしまう

この場合は横からキャブを叩いたりで止まったりする(頻発するならフロート交換)

 

点火時期の点検前にスパークアドバンサーの点検

グリス少なっ!グリス溝が埋まるくらい充填しないと

また、普通のグリスだと熱で溶けて出てしまいます。

アームのダンパーも剥がれて居なくなっている

アームはダンパー付きのものに交換、

グリスは高温部用のグリスをたっぷり

「グリスはケチらない!!」

ポイントカムを組む際に向きに注意すること、180度逆転して組むと変なタイミングで火が飛びエンジンは掛かりません

ポイントは社外品でしたが接点は磨かれており凸は無し、点火時期の調整も問題無くできました。

 

カムチェーンの音もしており調整しようと、セッティングボルトを見ると純正じゃない。

オイルチェックボルトを外し上から押す準備をしてセッティングボルトを緩め.......変な感触

外してみると

ねじ山舐めさせて液状ガスケットで抜けないように?してあった

「最悪」

仕方ない工作室に行き旋盤を回してオイルチェックボルト部に付けるアジャストボルトを製作して対処

 

タペット調整

親の仇じゃないんだから馬鹿ぢからで締めないよ!

アジャストボルトのねじ山は細かいのでねじ山を痛めるとスムーズに回らなくなり要交換となる

 

スロットルケーブル、クラッチケーブルの給油、メーターケーブルのグリス塗布

新品のケーブルが組まれているようだがドライかもしれないので給油&グリスUP

スロットルケーブル、クラッチケーブルとも長さが合っておらず弛み気味

クラッチケーブルは本来ブリーザーカバー部にケーブルガイドが付いてそこを通るのだが

付いておらずスロットルケーブルと一緒にこんなところを通している

ETCのアンテナコードがクラッチケーブルに結束バンド止め

たどるとフレーム下を通り(ここでも結束バンド)

右のフレームの陰で束ねてからエアクリーナーケース上のETC本体へ

ETCのアンテナ線は光ファイバーの為、説明書には曲げ半径40mm以上にするよう書かれているが

知ったことない状態

結束バンドも見苦しい

また、ETCの電源もびっくり

メインハーネスのリアブレーキスイッチの接続部の手前に割り込ませてあり

せっかくのブーツはギボシ部にかぶさらずに意味なし状態

また、本来はこのハーネスはエアクリーナーケースの穴の向こう側(右側)を通る

ここでむき出しだと万が一ドライブチェーンと干渉し被覆が破れればショートしてしまう

正規の状態に戻すためETCの電源は他から取るようにする

ブレーキスイッチの配線を抜こうとしたらギボシが外れた=圧着不良

このカバーを見ると純正ではなく長いものをカットしたか社外品か??

黒コードの芯線が見えていた部分はハーネステープで補修し正規の取り回しへ

アンテナコードと電源線の余分は左サイドカバー内でとぐろを巻かせます

これで指定の内径はクリアできます。

電源はレギュレーターの黒端子から二股の線を製作し取り出します。

これですっきり

 

足回りに取り掛かります

基本的に前後のホイルベアリングの点検はホイールを外して指で動きを確認

その前にフロントフェンダーが気になった

社外品なのだろうか?ダブルディスク用のブレースが付いている

現車はシングルディスクなので右側ボトムケース取り付け部は長さ10mmの貧弱なカラーで固定されている

また、スピードメーターケーブルが通るワイヤーグロメットの取り付け穴が無い

良く見るとフェンダーステーにセッティングピースすら入っていない

裏側がフェンダーに接触してリジットマウント

それも前後のステーが同じ状態、もちろん追加します。

ブレースがこんな形状なのでフロントホイールを外すのに空気を抜いてタイヤを潰さないと抜けない

 

キャリパーホルダーの動きが悪く

グリスの有無、塗布の為外してばらそうとしたらここから抜けない

仕上げる際に金属部品の再メッキ(ユニクロ)をしているが

このシャフトも再メッキしたのだろうがメッキの膜厚分太ってきつくなっている

本来なら耐水ペーパーなどで磨いてクリアランス調整してスムーズに抜き差し、動くようにしたいところ

プラスティックハンマーで叩いた程度では微動だにせず、油圧プレスで抜いた

外れましたが、グリスが少ないな

油圧プレスは長崎の15トンとこの格安工具店のプレスとで作業内容で使い分けている

このあとで磨いて調整、クリアランスが大きくなるとガタが出るので磨いては入れてを繰り返して仕上げる

決まったらモリブデングリスをたっぷり充填して組み立て(応力が掛かる部分なので)

 

キャリパーA、ピストンがステンレス製なのは個人的には好みではないが、新品のメッシュホース、パイプ、

マスターシリンダーもペイントされている所をみると一通りやっていそうなので分解洗浄はスルー

ただ、キャリパーBのパッド外れ止めの割ピンが居ない

つめが甘い

 

外したフロントホイールはアクスルシャフトを抜いて指でベアリングの状態を確認

バランスウエイトが付いていないことからバランス取りを行う

タイヤ交換してもバランスを取っていない車両をよく見かけるが

最低でも高速道路を走るバイクであればバランス取りは必須と考える

大幅に重量バランスが崩れているホイールで高速走行すると縦振れ(振動)の原因になる

ダストシールにグリスを塗布して車体に組み立て待ち

 

続いてリア側

トルクロッドとブレーキパネルのジョイント部分

ストッパーアームクッションラバーというゴムの輪っかが入るがなぜか

トルクロッドとブレーキパネルの間に入れたくなるようで初めて診る車両はほとんどこのパターン

どうしてこうなるかと言うとパーツリストにもサービスマニュアルにも載っていないから

バラした時にバックアップを撮っておいて確認して組めば間違えないが

新車から50年経ってるバイクですからどこかのタイミングで間違えている可能性大

 

リアホイールを外してベアリングの確認

スプロケットを外してリアハブの軸部分を確認、案の定グリスっ気無し

ゴムダンパーでスプロケットは常に動いている、ドライのままだとどんどん摩耗していく

スプロケットは新品に替えられるがハブは新品は出ないので交換できない、中古品はギャンブルだ

摩耗させない為にもグリスアップは重要

 

昔から提言しているが

(部品供給の悪い旧車だからこそ)

摩耗させない、壊さない

これを徹底したい

 

もちろんフロントが無ければリアも無い

こちらもバランス取り

 

リアブレーキペダルシャフトも外してグリス充填

(もうすでにあらゆる部分のグリスが足りないと決めつけている)

いやいや少ない少ない(苦笑)

ブレーキロッドのジョイント部のピンが他車種の物、割ピンの向きがおかしい、90度違いますね

純正部品に交換(左:純正、右:現車の物)

 

ブレーキパネルもチェック

ははは、ドライですね

純正新品のブレーキシューですが、面取りはしてないしブレーキグリスは塗って無いし.....

ブレーキカムの軸もグリス少なっ!!

 

こうなるとスイングアームのピボット部も怪しい

外してカラーを抜いて内部を確認

ブッシュの部分に薄っすらグリスがありますが内部は地金が見えています。

奥の白いものがグリスニップル、そこから充填していないということ

何のためのグリスニップルだか

というわけでブラシを通してもグリスは付かない(本来ならグリスがべったり付着する)

内部を洗浄し、モリブデングリスを長いドライバーを使い内部壁面に塗布

シャフト側も充分に塗布して差し込む

すると反対側から内部に塗った余分なグリスが出てくる

それでも、隙間はあるのでグリスガンを使い注入

両端から出てくれば充填完了

 

外すもの外してこの状態、日常的な風景ですね  

 

ドライブスプロケットが付くカウンターシャフトのスプラインにも摩耗防止でスレッドコンパウンドを塗布して組み立て

ドライブチェーンはノンシールチェーン、クリップ部は外れ止めのワイヤリング

 

チェンジペダル

嫌な感じがするので確認するとピロボール固定ビスが緩んでる!?なぜ?

 

チェンジペダルシャフトもグリス溜めの溝にはグリスはうっすら

男らしくたっぷり塗って

はみ出たら

拭き取ればOK

 

足回りは組み立て完了し、こまごましたところをやっつける

 

ブリーザーチャンバーの下に付くドレンホースが不在

せっかくなのでロングタイプのものに変更

 

エアクリーナーケース側面のゴムクッションが付いていない為貼り付け

なぜかバッテリーバンドが古いものを継続使用、ヒビが入っているし交換します

 

テールランプ、社外品は付属のカラーが短くテールランプベースパッキンのひだがナンバーブラケットに被ってしまう

正規の長さのカラーに変更(左)、右が付いていたもの

 

ウインカー

社外ウインカーが付いており、お客様の依頼で純正のウインカーに交換することに

問題はフロントウインカー、社外品はアースも含め2本のコードが出ているが純正は1本

アースはクランプしたヘッドライトステーから取らないといけない

ところがヘッドライトケースがHAWKタイプの社外品が付いていてアースが取れない

仕方なくフロントはウインカーのクランプボルトにアース線を付けて対処

リア側はステーのウインカーが付くスプライン部まで塗られていてアース取れるか不安だったが大丈夫だった

 

メータークッションが潰れてやけに締めこんであるなと思ったら

グロメットが変なものが付いていて、カラーも短い

社外メーターが付いていて本来12mm長のカラーが付属するはずだが何故こんなことになってるかが不明

当店オリジナルの12mmのカラーに変更(左:付いていた短いもの、右:12mmカラー)

余りきつく締まっていてクッションが効かないと振動を拾って針振れや破損につながる

長めのカラーで緩いくらいがちょうど良い

 

スイッチハーネス接続部、ハーネスバンドが無いと思ったらスピードユニットステーが不在

足りないものを取り付けバッチグー

 

左右スイッチは社外品が付いているが

右スイッチはスロットルケーブルB(戻し側)が固定できない

左スイッチはレバーが内部で変に干渉し隙間が開いてしまう

ということはレバーの可動域が狭くなるということ

以前の記事でも書いているがレバーを削り込んで調整

少しはマシになりました

ケーブルを通すとなんか擦ってる感があり、見ると握ったときにケーブルアジャスターを擦っている!?

アゲインさんのマジッククラッチレバーじゃないがアジャスターの口が開いてる方を手前側に向けておいた

そうなるとクラッチの遊びの調整はエンジン側で行う必要がある

アジャストボルトの動きがスムーズでないと調整も面倒、確認すると動きが渋くなる部分がある

ここから先締めると手では回らない

アジャストボルトのダイス掛け

エンジン側のタップ掛け

しかし、改善しない

ということはアジャストボルトの曲がりを疑う

新品に交換すると難なく奥まで入る

ナットを付けて、スレッドコンパウンドを塗って完了

 

いよいよキャブレター

ジェットニードルとニードルジェットの交換

メインジェットは社外品だが影響は少ないだろうから今回はスルー

その代わり純正スロージェットが付いていたが製作時に新品にせず古いままなので新品に交換

ゴムパーツは製作後40kmということで劣化は無く継続使用

 

果たして完成した車両は別物に

とりあえず1週間でできることをやらせてもらったが

音も静かになり、常に出っぱなしだった猫鳴きも減速時(エンブレ時)のみになって当初よりは気にならない

エンジンブレーキもバックトルクが掛かり負担が掛かる部分が多々あるので

2サイクルみたいにブレーキで止まるようにすれば良いだろう

幾らで買ったかは怖くて聞けないが、さらに当店での点検整備費用も乗るので結構な金額になったのではないだろうか

出来れば購入時に慌てず吟味して良い個体を選んで失敗しないようにしていただきたい