つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

一言で真相が言える作品の解説は難しい……

2006-07-11 23:52:52 | ミステリ+ホラー
さて、お初のようでお初でない方な第588回は、

タイトル:プラスティック
著者:井上夢人
文庫名:双葉文庫

であります。

二人で一人のミステリ作家『岡嶋二人』の一人、井上夢人のミステリ長編です。
ネタそのものはともかく、書き方がすごく特殊なので、どうやって説明したものかと悩み中。(笑)



五十四個に分けられた奇妙な文書ファイルを『貴方』は読んでいる。
一つめのファイルは向井洵子という名の主婦が書いた日記のようだ。
そこには、夫不在の時に起こった奇妙な出来事に怯え、次第に追い詰められていく彼女の心情がつづられていたが、ようやく夫が帰って来るという日で唐突に終わっていた。

二つめのファイルは『貴方』宛のメッセージだった。
どこか学者然とした男・高幡英世は、異なる複数の人物によって書かれた文書を編集したのが自分であることを明かし、このまま読み進めることを促す。
それと最後に、一つめのファイルに登場した向井洵子が、途切れた日記の後にどうなったかがごく簡潔に述べられていた――。



異なる人物が書いたファイルを読み進めていくことで、次第に全体像が見えてくるというタイプのミステリです。
この手の断片的に情報を明かしていく手法は、読者の知的好奇心をあおる効果がある反面、物語が空中分解する危険を常にはらんでいるのですが、これはかなり上手い方。
ビックリマンチョコの裏書きを読む感覚で、サクサク読めました。いや、冗談じゃなくて、あれも限られた情報から一本の物語を構築していくタイプの作品なんですってば。(笑)

一つ目のファイルで普通の主婦を襲う異常事態を描き、二つ目でこの特殊な文書ファイルの解説、そして三つ目で洵子の日記を読んだ別の人物の考察を入れる、と、一人になってもテンポの良さと読者を引っ張っていく力は健在。
群像劇として見るには個々のキャラクターに魅力が薄い気がするのですが、各人の性格よりも立ち位置の方に重点を置いた物語なので仕方がないかな、とは思います。
むしろ、きっちりその方向に読者を誘導している構成の素晴らしさを褒めるべきか。

ちなみにこの物語、真相そのものは非常に単純です。
序盤からヒントが出まくっているので、勘のいい人はすぐに気づいてしまうかも。
ただ、解っても解らなくても特に支障はありません、全体の三分の二を消化したところで堂々と真相が明かされ、以後はそれに基づいた物語が展開されます。

岡嶋二人ファンなら文句なしにオススメ。
ミステリのネタとしてはちょっと……という方もいるかも知れませんが、トリック当てや犯人捜しにこだわらなければ楽しめると思います。



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歴史コラム?

2006-07-10 23:57:01 | 時代劇・歴史物
さて、実は主役が存在しない第587回は、

タイトル:まぼろしの城
著者:池波正太郎
文庫名:講談社文庫

であります。

上杉、武田、北条等の巨大勢力に囲まれた地に座し、内紛の果てに真田昌幸によって滅亡させられた沼田家の人々を描く歴史長編です。
小国の悲劇といった話ではなく、自分の立場を自覚せずに狭い範囲内での権力争いに終始した人々の末路、と言った方が正しいかな。
事実上主人公は存在せず、沼田城の主・沼田万鬼斉(顕泰)、その側室ゆのみ、ゆのみの父・金子新左衛門、万鬼斉の嫡子・弥七朗(朝憲)、ゆのみの子・沼田平八郎(景義)など、様々な人々の視点で物語は進行します。

メインキャラが徹底的に甘い人物として描かれているのが特徴で、同じ小勢力でも機知によって激動の時代を切り抜けた真田の方々とは雲泥の差です。
謀略により自分の地位を固めようとする金子新左衛門ですら現実認識がかなり甘く、自分の立場を理解できないまま醜態を晒して舞台を去っていきます。
作者としては、そういう人々を哀れむわけでも蔑むわけでもなく、淡々と眺めている、そういった印象。

愛に溺れ、野望に溺れ、空回りしてすべてを失う、そんな人々の姿を描くのが主題の筈なんだけど……描き切れてないな、というのが正直なところ。
どのキャラも単純思考で物語のパーツ以上になっていないし、心理描写もかなり軽いため、情念も何も全く伝わってこない。
一人だけ、和田十兵衛というなかなか面白い役回りの人物がいたのですが、飽くまで脇役として身を引きました……この方だけオリジナルキャラだったのってある意味凄い皮肉かも。

キャラクター同士の個人的な絡みはともかく、沼田氏の内紛、万鬼斉の逃亡、平八郎の沼田城奪回作戦等、マクロなストーリーは史実を追っています。
そこで、折々に当時の情勢の簡単な解説を入れ、それについて作者が雑感を述べるという形を取っているのですが……非常に表層的な内容で、呆れました。
無意味な改行が多いためページ数の割には情報も少なく、歴史コラムと割り切るにしても底が浅い……ま、他がおざなりなおかげで最後に登場する真田昌幸だけ目立つのですが、それってどうかと思います。

全体的にイマイチでした、分量の問題もあるかも知れませんが。(全240頁)
『裏真田太平記』として読めば面白い……かも、平八郎を手玉に取る真田昌幸は結構ダークで格好いいです。
もっともその昌幸も、後に凄まじいっぷりで知られる小松姫に、沼田城の前で門前払いを食らうあたり、歴史は繰り返すと言うか何と言うか……。(笑)

時間の無駄

2006-07-09 14:51:06 | 小説全般
さて、いろんな作品はあるけれどの第586回は、

タイトル:シティ
著者:谷村志穂
出版社:集英社文庫

であります。

そろそろ長編を読もうかなと思いつつも、それでもしつこく短編集だったりして。
10編の作品が収録された短編集で、言わずもがなの各話ごとに。

「図書館は遠い」
サラリーマンの周平は、ある雨が降られた日に誰かの財布を拾った。それには区民センター図書室の貸し出し券と幾ばくかの現金が入っていただけだったが、貸し出し券に記入されていたタダミフミカと言う名前を見つける。
その名前からあれこれと想像を巡らしつつ、財布を返すために出会ったフミカはまだ高校生のおとなしくかわいらしい少女だったが、周平と本の話をしたときになぜ財布を落としたのかがばれてしまう。

「今朝のスープ、清潔なテーブルクロス」
あるクリーニング店の店員をしていた葉子は美人と言うわけでもなく、地味で、きれい好きな女性だった。そんな葉子と結婚した僕だったが、会社の女性と浮気をしたことをきっかけに葉子は何日間か出て行ってしまう。
どこか物足りなく、葉子が何を楽しみに生きているのか疑問であり、その正反対の女性との関係に満足していた僕は何日間かの自由な時間を持てると考えていたが、次第に汚れていく家に苛立つようになり、次第に葉子の帰りを心待ちにするようになる。

「波の音が聞こえたら私は……」
女性でありながら、女性という鉄格子の中に常にあって、少年になりきれなかった私は、渋滞の高速道路で修学旅行のバスから声をかけられる。振り向いた瞬間、私は彼がおなじ鉄格子の中にいる少年だと言うことがわかり、お互いを慰めるように、補完するように出会い、接していくようになる。

「ロリータ」
トキオは居候している高本の家に訪れたまだ小学生の少女の沙樹に惹かれていた。だが、高本の家の息子である浩一にそんな沙樹に性的ないたずらをしたりしたことを告げられるなど、沙樹への思いとは裏腹に不安ばかりが募っていく。
そんな沙樹が中学生になる春休み明けに高本に家に戻ってきたトキオは、結局浩一などの他の男たちとおなじ理由で沙樹を手放してしまう。

「パール・ホワイトのキャミソール」
ランジェリー・ショップに勤める美咲は、ボーナスが出たら買おうと思っていたお気に入りのパール・ホワイトのキャミソールが売られていることを同僚のマキに告げられ、その買った客を追いかけることになる。
その客を見つけた美咲は、いつの間にかその客が愛人関係の手切れ金で散財しようとしている買い物に付き合うことになる。

「神功で始まる空の高い夏」
カープのキャッチャーの達川が大好きな有子は、ツヨシとともに神宮に来たときにいつも達川への手紙を紙飛行機にして飛ばしていた。そんな有子をかわいがっていたツヨシは、しかし恋人を作り、妹のような有子の元から離れ、その傷心からいつもとは逆の気持ちを書いた手紙を作り、飛ばすとそんなときに限って達川に届いてしまう。

「僕は学校へ行く」
学校に行くといつも吃ってしまい、いじめられている光次は、通学のバスの中で、貧血で倒れる少女を見かけて、おなじようにして学校をサボることを知る。その方法を知るきっかけとなった少女えりかと知り合った光次は、家で厄介者扱いされている祖母を連れて、えりかとともに静岡の親戚のもとへ夜汽車に乗って旅をすることになる。

「サボテン」
祖母の新盆に家族で函館まで来ることになった夢子は、浮気に悪びれたところのない母や、そんな母をただ黙って許容している父との奇妙な家族関係の中、入院先から通ってくる女将がいるが、サービスにまったく不足のない奇妙な旅館に泊まり、祖母の法事に向かうことになる。

「女優と犬と赤い鼻」
みちるは犬のスサノオを散歩させているとき、数年前に引退した女優に出会い、謎めいたことを言われてしまう。「嘘をつくと鼻に赤いおできが出来る」というそのとおりに、愛してもいないが従順で都合がいいだけの妙子とのやりとりの中で次第に、その女優の言うとおり、鼻に赤いおできが出来、大きくなっていく。

「青い家のひとり娘」
祖父とふたりで暮らしている睦は、金庫職人だった祖父がたった一度行った盗みで姓を変え、ひっそりと暮らしているはずだったが、いつのころからか、刑事が見張るようになっていた。
時効直前までただ退屈な見張りを続ける刑事と頑固な祖父との間で睦はそれぞれの事情や思いを垣間見ながら今後のことを考えていく。

……なんか10編全部書いといて、こう言うのも何だが、やっぱり書くんじゃなかった……(爆)
とは言っても、じゃぁ、どれか特別にこれという良品があるかと言うと、ただのひとつもないんだから、紹介にすらならないんだもんなぁ。

いや、ほんとうに全部の話がこれっぽっちもおもしろくなかったし。
読みながら、なんで私はこの程度の本に何時間も使わないといけないのかとかなり疑問だったね。

何か印象的な場面は話、雰囲気、展開というものがひとつでもあればいいのだが、それすらもないし、だらだらと話が進むだけで各キャラクターも生きていると言う感じがしない。
まるで下手な人形劇で、ぎこちない動きと下手な演技を見せられているようでストーリーにも、世界にも、キャラにも入り込むことが出来ない。

短編集だとひとつふたつ、好みの作品があったりするものだがまったくないと言うのもある意味めずらしい。
まぁ、オススメかどうかは、言わずもがなだね。
タイトルどおり、時間の無駄になること請け合い。

梅雨時でも

2006-07-08 14:48:01 | 事典/図典
さて、曇り空も風情はあるのねの第585回は、

タイトル:雲の名前の手帖
著者:高橋健司
出版社:ブティック社

であります。

第111回にある「空の名前」とおなじ著者が、タイトルどおり、雲のみを題材にした写真と短い解説文の本。

構成は次のとおり。

I 低気圧の雲
低気圧、と言うと雨。
天気予報を見ても、通勤通学がめんどくさくなる単語だけど、低気圧がやってくる前の晴れた時間帯から次第に雨を予感させ、そして雨が上がったあとの雲までを紹介。

さらにこの中からも細かく分類されており、「巻雲」「巻積雲」「巻層雲」「高積雲」「高層雲」「層積雲」「層雲」「乱層雲」とそれぞれの特徴ごとにあり、これとはちょっと異なって「暖域の雲」「寒冷前線の雲」とある。

II 晴天時の雲
晴天のときと言うと、雲ひとつない、と言う表現があるように雲がないほうが気持ちいいのは気持ちいいけど、小さく孤立したような雲から、太陽に暖められて起きる積乱雲(入道雲)など、晴天時に特徴的な積雲、積乱雲を紹介。

III 風が造る景色
文中にあるけれど、風が山にぶつかって上昇気流になって雲を作る。
たとえばそんなふうに出来る独特の雲を紹介。

IV 光が作る景色
太陽の光を透かして出来る雲間の後光や彩雲や、夕焼け空が彩りを添えて様々な表情を変える空の世界を紹介。

このあとは参考という感じで、「低気圧の雲」であった各種類の「雲の見分け方」、「雲のできるわけ」、「天気図で空をよむ」、「低気圧の雲」に対応した低気圧に伴う雲の分布の一例を解説した「雲の流れ」と言うのが掲載されている。

なんか、こういう本を読む(見る)と、梅雨時の曇り空でも何となく憂鬱な感じがしなくなるもんだねぇ(^^

さておき、ほんとうにいろんな雲があって、いろんな形があって、いろんな名前がある雲の写真が豊富に掲載されていて、また、解説も写真を鑑賞するには邪魔にならない程度でちょうどいい。
これを読んで、俄か雲博士になるもいいし、晴れた日には外で、雨の日には窓越しに移り変わる雲の表情にまったりとするのもいいだろうね。

それにしても、ふと見た雲が、何かに似て見えたりするけれど、写真の中にあった入道雲の写真は、かなり秀逸。
ほんとうに入道がふたり、向かい合ってるふうに見えるんだもんなぁ。

関西風(?)

2006-07-07 20:10:43 | 恋愛小説
さて、うどんとかのダシはやっぱり透き通ってないとねの第584回は、

タイトル:夜離れ
著者:乃南アサ
出版社:幻冬舎文庫

であります。

何はともあれ、やっぱり初めて読むひとのはこれを選んでしまうのね。
6編の短編が収録された短編集で、例によって各編ごとに。

「4℃の恋」
意識不明ですでに死期を間近にした祖父が入院する病院に勤める看護師の晶世は、勘がいいとされる同僚の看護婦に、祖父はあと2日くらいだろうと告げられる。
だが、晶世はその死の訪れを忌々しく思っていた。傍若無人に家族をかき回してくれた祖父に対する愛情などない晶世と、母、弟。そして晶世は3日後に新たな恋人との婚約を確保すべく旅行に、憂いなく出立するために、母も、弟も似た理由で死んだ祖父の死を、いかにごまかすを考える。

「祝辞」
婚約し、結婚式を待つばかりの摩美の親友の朋子は、摩美の婚約者の敦行に引き合わされた後、突然失語症にかかってしまう。自慢の親友である朋子に、かいがいしく世話を焼く摩美と、声が出せないこと以外は変わらない朋子。
しかし、朋子の友人や敦行の友人たちと行った旅行で朋子は突然失語症が回復する。摩美などよりも自分を選べ、と敦行に迫ったときに。
そして結婚式の祝辞。そこで朋子はスピーチをする。

「青い夜の底で」
学生時代に友人に誘われていったアイドルのコンサートで私の生活は一変する。コンサート会場で、そしてそのあとの出入り口での出来事で、アイドルである彼が私のことを愛していることを確信する。
それからはただひたすらに彼のために帰りを待ち、疲れて寝てしまった彼に私がいることを示す手紙を書く。そんな日々が続くが、そのうち彼は翳りが見え始めた芸能界で返り咲くために様々な女性と浮き名を流していく。それでも、私はただひたすらに彼を愛しているのだが……。

「髪」
艶やかでまっすぐな髪が自慢の芙沙子は、とにかくその髪をいかに美しく見せることに腐心する女性だった。そんな芙沙子がおなじ会社の男性の小宮山を狙っていた。しかし天然パーマでおしゃれにまったく気を遣わなかった梢子の変貌で、芙沙子の目論見は脆くも崩れ去ってしまう。
ストレートパーマや化粧で自分よりも美しく装うことを知った梢子に芙沙子は嫉妬し、憎悪する。そしてそのときは会社の同僚たちと行ったスキー旅行で形となる。

「枕香」
我が儘を言い、ちょっとしたケンカとそのあとの仲直りの刺激から恋人の晋平とよく言い合いになる恭子は、晋平の家に泊まるときにはいつも彼の匂いのする枕を奪い取っていた。
しかし、いつの間にか仕事だと言って逢えない日が続くようになり、時間も関係ないと晋平のもとへ走った雨の夜に、こんな時間に危ないという理由で晋平に襲われそうになる意地悪をされる。しかし、そのときに恭子は晋平の手にある決意をする。

「夜離れ」
不景気で大学卒業を控えても就職口が見つからない比佐子は、就職までのつなぎとホステスのアルバイトを始めるが、これが性に合ったのか、平凡だが堅実な人生……結婚し、妻となり、子供を育てる生活を考えていたはずがそうではなくなっていた。
しかし決意し、ホステスをやめて就職し、そこで出会った三好と付き合い始め、ずっと考えていた堅実な人生に向かって進んでいると思っていたが……。

どちらかと言えば、オススメできる作品ではないだろうか。
裏表紙には「私だけの幸せに目が眩んだ女たちの嫉妬、軽蔑、焦燥、憎悪云々」とあり、確かに主人公の女性のそう言った面を細やかに描いている。
展開も、ラストはどういうオチをつけてくれるのだろうと期待させられるものがあり、読み進めたくなるところは魅力。
文章も描写は丁寧だし、難しいところはなく、読みやすい。

ただ、なんかこういうのを読み慣れてきたのか、なんかあっさりしたラストで物足りない。
サスペンスとあったので、もっとどろどろしたのを期待していたのだが、そう言う雰囲気に乏しかったのは残念。
恋愛中毒」くらい、とまでは言わないけれど、もっと、ぞっとさせてくれるような感じがあればよかったんだけどねぇ。
まぁ、短編だから仕方がないのかな。

「・マ」をつけないように

2006-07-06 21:31:22 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、順番は間違えてないよの第583回は、

タイトル:スケバン刑事(全22巻)
著者:和田慎二
出版社:白泉社→メディアファクトリー MFコミックス

鈴:私の季節がやってきたと意気軒昂なLINNで~す。

扇:さっさと終われよクソ暑い季節と思うSENでーす。

鈴:ふっ、温暖化に対応できないヤツは困るのぅ( ̄ー ̄)ニヤリ

扇:いや、温暖化だろうがなかろうが夏は暑いもんだろ。

鈴:温暖化でこれから夏並の暑さが長くなるんじゃないのか?

扇:既に充分長い気がする。
まぁ、元々脳が発酵してる人間には影響ないんだろうがな。

鈴:脳が凍結してる人間に言われたくはないがな。

扇:俺はアイスビームなど撃たんわっ!

鈴:じゃぁ、サイブラスト当てとくわ。

扇:甘いな、アイスマンにはビーム耐性がある。
(二週連続X-MENネタかよ、をい)

鈴:サイロックのサイブラストはび~むではないがな>原作では
(じゃぁ、ま~ぶるす~ぱ~ひ~ろ~ずにするわ(笑))

扇:原作だとサイロックって最強に近いよなぁ……精神攻撃に忍術に刀って、無茶苦茶な強さだ。
空飛んで雷落とすストームも反則臭いけど。
(大して変わらんから別のゲームの話をしよう、マジドロとかどうかね?)

鈴:じゃぁ、ビームしかうてないサイクロップスって……。
(マジドロかぁ。初代は燃えたなぁ。タイミングがシビアだったし、キャラデザが独特で味があったし)

扇:それを言うなら、打たれ強さと攻撃力だけでゴリ押しするオヤジはどうなるんだ。
つーか、主人公が物理攻撃専門で、サブが間接攻撃ってのはバトル物の基本なんだろうな、向こうでも。
(2以降はデザイン変わっちゃった上に、ただのアクションゲームになっちゃったからなぁ。1の絵でタロット全部見てみたかったのは俺だけではあるまい)

鈴:いーんだよっ、ゴリ押しでもっ! ウ○ヴィはっ!
あの単純明快さと強さがあやつの売り(魅力)なんだからよっ!(爆)
(見てみたかったねぇ。……ってか、なんであのキャラデザ変えたのか、未だにあの会社、バカだと思うねぇ)

扇:いかにも主人公キャラって感じだよな、いくらやられても超回復するし。
そいや、バットマンとかは見たことあるのかい?
(デコを馬鹿にする奴は地獄に落ちろっ! つーかあの会社、一般受けしそうなものを、そうでない方向に持って行く技術は業界一だったな。パッケージだけギャルゲっぽくしといて、中身はかなりガチなパニックアドベンチャーだったりとかな)

鈴:ばっとまぇ~ん♪
見たことないな、コウモリ男。いまいちゾロと区別がつかんでな(ケンカ売ってる?(爆))
(だが、どうあれ、マジドロに関してはあのキャラデザを変えたのは致命的だぞ。いくらマイナーだからと言っても、あの独特のキャラデザは十二分に魅力的だったしな)

扇:それは伊賀の影丸と仮面の忍者赤影ぐらい違うぞ!
じゃあ、スーパーマンは? 俺はIIIの『電子の要塞』だけ覚えてる。
(まぁ、それは否定せん。あの絵師の人、今何か描いてるのかなぁ)

鈴:どっちも忍者じゃんっ!(笑)
で、スーパーマンかぁ……(遠い目)
クリプトン星人ってことしか憶えてないなぁ。あと、俳優が重い病気にかかったってことくらいだな。
(描いてるかなぁ、ってぜんぜんわかんないよな、あのひと。かなり独特でいい雰囲気の絵を描くひとだったのにな)

扇:初代はビルから飛び降りたんだったかな、スーパーマン。
どのヒーローも、タイツかビキニパンツなので変わりがないと言えば変わりがないのかも知れんが……。
(ちなみに私はスター一筋)

鈴:それがいかにもだろう、ハリウッドの。
(私はプリエステスメインだったなぁ)

扇:それを言うなら、マーヴルの、だな。
(ふっ、ザマス野郎か)

鈴:スーパーマンってマーヴルのだったっけ? そのあたり、よく知らんのだよなぁ。
(ふっ、○○ですぅ~の佐藤○緒並にむかつく喋り方をするヤツだな)

扇:その筈だ、原作読んだことないけど。
あの世界ぶっ飛んだ設定の奴らが多いので、スーパーマンが普通に見えてくるのが恐ろしいところだ。
(違うな、こっちは天然で、あっちは完全に作ってるだろ)

鈴:まぁなぁ。スーパーマンはただの宇宙人だしな。
他はなんか、あり得るのか!? って突っ込みたくなるくらいの原因で超人になった変人ばっかだしなぁ。
(あぁ、佐○珠緒はな。あれはどう考えても100%計算だし、それ以外に反論されても認める気はさらさらないな)

扇:変人言うな。
まぁ、現実にいたら間違いなく変態と言われるだろうが。
(勝新の嫁さんは?)

鈴:変人より変態のほうがもっと酷い気がするが……。
(あぁ、あっちの○緒ね。あのひとはまったく狙ってないからほんとうの天然だからいいのだよ)

扇:さて、そろそろ本題に入るか。
どこまで読んだ?

鈴:市長の娘を孕ませたと濡れ衣を着せられた少年が追い詰められるところまで。

扇:無茶苦茶初期やないけ!
まだサキ1回死んでないし。(笑)

鈴;……おまえ、ひとにネタバレだの、さんざん言っときながら、ばらしまくりやないかいっ!!

扇:ばらしまくりって、一度サキ殺して完結して、読者の要望に応えて復活第二部を書いたってことを話したぐらいではないか。
なに、少年漫画ではよくあることだ。

鈴:って、雑誌は少女マンガなんだが……。

扇:いいんだよ、作者そのつもりで描いてないから。
そういえば、寸止めなところも少年漫画だったなぁ……。

鈴;ヨーヨーでさんざんぶったおしてるから、寸止めではない気がするのだが?

扇:ぶっ倒すどころか、鉛入ってるから死ぬんですけど。
この後描いたピグマリオは微妙なラインだったが、これは完全に少年漫画だった。
まー、途中でもいいや、読んだ感じどうかね?

鈴:いやー、少年マンガね。
……ってか、最初は読んでておもしろいが、たぶん2回目読んだらもういーやって感じになる気がする時点で、少年マンガのいいとこも悪いとこも入ってる気がするね(爆)

扇:そだね。
各学校には必ず番長がいたり、学生同士の争いでバリバリ殺し合ってたり、まんま70年代の少年漫画なのは間違いないな。
つーか、一巻でいきなり少年院を脱走するあたり、マヂで70年代テイストを感じる。

鈴:うむ。
年齢を鯖読んでる君には最高のマンガだよね。

扇:「地獄に落ちろぉ~!」(黒い天使
では、とりあえずCMです。


つれづれ読書日記


つれづれ読書日記、停滞中

『作家別目録』、サボってます……。
『怪しいページ』は忘れ去られてる気が……。
御覧になりたい方は、最新記事の『目録へのショートカット』、もしくはこちらから!


つれづれ読書日記


扇:ではまずストーリー紹介から。
母の死刑執行を止めるため学生刑事となった麻宮サキが、主に学校という閉鎖社会内の凶悪事件を解決していくバイオレンス・アクション。
事件そのものではなく、それに関わったことで勃発するサキ個人の闘争を描くことを主題としており、第一部は毒蛇・海槌麗巳、第二部は怪老・信楽老との戦いを終着点として、いくつもの名エピソードを生んだ。
ドラマ化もされたけど、漫画とは全然別物。
あれはあれで嫌いじゃないけど。(ただし、第一部のみ)

鈴:そーねー。
ドラマは完全に別物ね。……ってか、ドラマしか知らない私にとっては、ぜんっぜん、ドラマのほうって、アイドル売るためでしかなかったのね、って思うぞ。

扇:斉藤由貴、太ったなぁ……。(しみじみ)
それは置いといて、キャラ紹介するかね。

鈴:そうね。
じゃぁ、主人公兼ヒロインの麻宮サキ。
もともとスケバン(死語)で、ある学校を牛耳って(ある意味下っ端が慕っていただけ)いたが、母親絡みで刑事となった少年漫画主人公的ヒロイン。
いろいろ、もともろ、あれこれとある過去などから正義の味方(戦隊物ものレッド並)になり、ヨーヨーを操って敵をなぎ倒すのが得意。

扇:死刑囚の母、大財閥に引き取られた妹を持ち、さらに自分の目の前で父を殺されたというハードな過去を持つ、少女漫画史上最強のヒーロー。(誤植ではない)
人並みはずれた腕力・勘を持ち、鉛入りのヨーヨーで敵をなぎ倒す超絶無敵なキャラクターだが、母に対してだけは弱い。
ことあるごとに作者の心理攻撃を受け、ズタボロにされるものの、その度に立ち上がる強靱な精神力を持つ。
個人的には神よりムウ=ミサとの絡みの方が好きだった。

鈴:じゃぁ、次は神恭一郎。
探偵のクセに、サキに命令するわ、警察には顔が利くわ、拳銃ぶっ放すわ、およそ探偵とは思えない長髪だけが人気の男性キャラ。
ちなみに、サキにも長髪だけと言われたのはちょいとかわいそうな気がしないでもない。

扇:実は過去の和田作品キャラ。
ただの探偵の筈なのに拳銃撃ちまくるのはツッコンではいけない。
戦いの果てにサキと愛し合うようになるが、そんな甘い展開を許す作者ではなく、新たな敵『猫』の出現により二人は引き裂かれる。
事あるごとに、他の男性キャラに向かって『漢の道』を解くキャラでもあり、師匠がお坊さんだと解った時は妙に納得してしまった。(笑)

鈴:あー、説教臭いから納得は納得だな。
じゃぁ、次、野分三平。釣りキチではない。
長髪で、当初サキに痴漢扱いされたが、サキに惚れてから丸坊主にしたが、丸坊主にしたところで、ギャグ担当の役どころに変化はなし。
そのうち、釣り竿を武器に活躍するが、ヨーヨーよりも武器として無理がないか? と思うのは私だけではあるまい。

扇:助平でギャグ体質で蹴られ役という絵に描いたような三番手キャラ。
当初は軽い気持ちでサキにちょっかいを出していたが、彼女がガチで生きていることを知り、以後は強力なサポートキャラとして立ち回る。
サキに本気で惚れたが、結局男女の愛の対象としては見てもらえなかった、悲しい奴。
サキの緊張を解くことが出来る貴重なキャラだったにも関わらず、第一部で死亡、第二部でも彼に匹敵するギャグ←→シリアス担当キャラはなかなか出現しなかった。
(第一部で終わる筈だったので、作者自身の責任かと言うと難しいが……)

鈴:まぁ、確かに三平ってそういうキャラよね。
釣り竿持ってる時点で、どっかの釣り野郎のいんすぱいあされた可能性はないでもない……と思う。
と言うわけで、今日の木劇はこの辺で千秋楽でございます。(木劇は終わりません)
それでは、さよ~な~らぁゎゎゎゎゎゎ

扇:本人自身がそれらしき台詞言ってるしな、三平。
そう言えば、第二部屈指の名キャラ、ムウ=ミサを紹介してなかった。
三平と神をくっつけたような性格で、額に三日月型の傷を持つ伊達男。
神並みに腕は立つし、敵サイドで重要な位置にいるかと思えばサキに協力したりするし、なぜかよく解らない特技をいくつも披露しては「バイトで○○やってたんだ」とぬかしたりもする、なかなか味のある人物だった。
サキとの漫才コンビは絶妙で、第二部の重すぎず軽すぎないストーリーは彼のおかげだったと言っても過言ではない。
殆ど解説になってませんが、少女漫画至上屈指の名作です、読むべし。
まだまだ語りたいことは沢山ありますが、今日はこのへんで。

一番恐いのはだ~れだ?

2006-07-05 23:35:56 | ミステリ+ホラー
さて、割と拾い物だった第582回は、

タイトル:ブラディ・ローズ
著者:今邑 彩
文庫名:創元推理文庫

であります。

お初の作家さんです、何となく拾ってきました。
薔薇が咲き誇る洋館の女主人となった主人公に、何者かの悪意が迫ります。



去年の五月、相澤花梨は苑田俊春と出会った。
東京のど真ん中にある洋館、その庭園で彼は薔薇の木を見回っていた。
薔薇という共通の話題を介して、花梨は俊春の茶会に誘われる。

俊春は、薔薇好きの妻・雪子を事故で亡くしたという。
一方花梨は、薔薇好きだった父を失い、孤独を感じていた。
花梨は、最初の出会いの時に俊春を父と錯覚したことを告白し、貴方もそうではないかと期待を込めて尋ねるが、俊春は即座に否定した――貴方は雪子には全く似ていない。

俊春の妹・晶の話により、雪子は事故ではなく、自殺であることが判明した。
さらに、俊春の後妻・良江が現れたことにより、花梨はショックを受ける。
それでも……お茶会に参加することをやめることはできず、数ヶ月が過ぎた――。



正直、序盤は痛かったです。
孤独を埋める方法を探している主人公、薔薇の庭園での運命的な出会い、再婚したものの幸せを感じていない男……おいおい、シンデレラストーリーかよっ! と三歩ぐらい後退。
花梨と俊春はどちらも夢見がちと言うかかなり妄想入ってる性格で、晶もファンタジー世界に生きてるような台詞を吐きまくる変人、そして話題は伝説の美少女・雪子に薔薇の歴史!

ここは私の馴染める世界じゃなさそうだ……と、本気で退却しかけたが、さすがにこれだけでレビュー書くのは問題あるのでもう少し読んでみる。

すいません、一気に読めました。

良江が雪子と同じ死に方をして、花梨がその後釜に座った途端、妙に甘ったるかった空気が毒満載のダークなカラーに変貌。
特殊な便箋に入った脅迫状が届くわ、自殺する直前までの良江の日記が見つかるわ、雪子の存在自体が不気味だわと、甘い妄想を一気に吹き飛ばすハードな展開がいい。
役に立たない旦那、不審な発言を繰り返す晶、雪子の話になると目の色を変える家政婦、おどおどしてるが怪しい位置にいるお手伝い、謎の園丁に囲まれた花梨の明日はどっちだ!
(実は花梨もどちらかと言うとダークサイド寄りだったりしますが……あははは)

モロ私好みの世界というのをさっ引いて、単純にミステリとして読んでもいい出来でした。
密閉型ミステリのお約束として、主人公以外全員疑わしいように描いてありますし、三番目の妻である花梨が二番目の妻と同じ体験をするという仕掛けも面白い。
そして、何と言っても秀逸なのがエピローグ! この真相と毒は素敵だ……。

それでも一応、引っかかるところはあります。
些細と言えば些細なのですが、同じ疑問を感じた人がいないか聞いてみたいところ。
(以下、ネタバレなので反転)
序盤(P32)、晶は雪子の部屋に入り、出窓から死体を確認したことを告白しています。
にも関わらずP75では、さも当然のように自分は雪子の部屋に入ったことはないとぬかし、花梨も晶の足が不自由だからという理由でそれを認めています。
花梨が健忘症なのか、単純に作者のミスなのか?


ミステリというよりはホラーです、でもオススメ。
腹に一物抱えた人々の不気味な戦いを御堪能下さい。

手品と言うよりは豆知識

2006-07-04 23:35:30 | 学術書/新書
さて、子供に受けるかどうかは保証の限りではない第581回は、

タイトル:子どもにウケる科学手品77
著者:後藤道夫
文庫名:ブルーバックス

であります。

中学の時は読み漁ってたのに、最近はとんと御無沙汰だったブルーバックス。
なぜブックではなく、バックなのかは今でも不明です……。

タイトルからも解るように、本書の主旨は科学で子供とコミュニケーションすること。
文中に「パパが~」とか「ママに~」といった単語が頻出するだけでかなり引き気味なのですが、それ以上に、章ごとに掲げられているキャッチコピーが凄まじい。

・第一章『ファミリーレストランで科学手品』……「(略)料理を食べたあとのひととき、なにげなくパパの威厳を発揮できたなら、最高です」
・第三章『お風呂で科学手品』……「(略)ここで『パパ』を上げておけば、『パパと一緒にお風呂入るの、もうイヤ』なんて宣言されるその日を一日でも先延ばしできるかもしれません」
・第五章『パパは超能力者』……「(略)子どもが指定する通りの現象を起こしてしまいます。今後、パパは『超能力者』として子どもからあがめられることになるでしょう

電波を通り越して、邪神が宿っているような凄い自信ですね。(毒)
実際にファミリーレストランでやって失敗したら間違いなく怒られる第一章、披露した次の日からパパは不要になると思われる第三章も素敵ですが、極めつけはやはり第五章。これで超能力者としてあがめられたら、逆に子供の将来が心配だ。

内容的には、みんなが知ってる科学マジック総まとめといった感じ。
座った子供を指一本で立たせない方法とか、食塩水を使って卵を中途半端に浮かすとか、米を詰めた瓶に割り箸突っ込んで持ち上げるとか、懐かしいやつが満載。
思わず、このレベルでいいなら俺でも知ってるぞ、風呂場の水をホースで吸い出すとかな!(それは生活の知恵) とツッコミを入れてみる。

で、先を読んでみると、それも紹介されてました、あなどれん。(笑)
しかし、ホースの空気を口で吸い出す方法ってどうよ。
水の中でホースの空気を抜いて、片方の端を指で塞げば済むことなんだが……。

77個も紹介されてるだけあって、知らないのもいくつかありました。
でもインパクトとなると……放電現象ぐらいかなぁ。多少ショックを受けるってことで、白い目で見られなければの話だけど。
黒いゴミ袋を使った熱気球なんかは、小学校の校庭なんかで生徒相手にやると受けるかも。後で校長に怒られる覚悟があるなら、屋上でも可。

ある意味一番インパクトがあったのは、落下する一万円札をつかませない手品(?)かな。
クラブでホステス相手にやる遊びを子供相手にしますかパパ
人の反応時間は平均0.2秒で、その間に下方に20センチ落下するからうんぬん、と科学的説明をされても、これを手品と呼んでくれる子供はいないと思われます。

『ガキどもにウケる』かは別として、昔を懐かしむには悪くないかも知れません。
「科学手品って楽しいなぁ」とか呟きながら、くすっと笑う邪道な読み方もアリ。
820円も出す価値があるかと言われると甚だ疑問ですが。

吾輩は犬である

2006-07-03 23:50:58 | ファンタジー(現世界)
さて、多分ファンタジーだと思う第580回は、

タイトル:平面いぬ
著者:乙一
文庫名:集英社文庫

であります。

お馴染み、乙一の短編集です。
タイトルだけでは内容が想像つかないので拾ってみました。(笑)
例によって一つずつ感想を書いていきます。

『石ノ目』……父の実家がある地方には、一つの伝承があった。その瞳を見た者は石になってしまうという、石ノ女の物語である。それだけ取ってみれば別段珍しい話ではないが、私にはそれにこだわる理由があった。母が失踪したのが、石ノ目がいるという山の中だったからだ――。
序盤の雰囲気作りは上手い。不気味な伝説、奇妙な鬼ごっこ、精巧過ぎる彫刻、いくつもの要素で後半の展開の下地を作っている。ただ、中盤から先の展開が平凡で、少々食い足りない感じがした。ただし、ラスはちょっとひねってある。

『はじめ』……クラスメートの木園と共についた嘘がきっかけとなって、『はじめ』という、存在しない少女が生まれた。子供達は都合の悪いことをすべてはじめがやったこととして処理するようになるが、ある日奇妙な出来事が起こる――。
白乙一定番の、孤独な少年と存在が希薄な少女のボーイミーツガール物。はじめ本人が幻であることを自覚しているのがミソで、これで最後まで持って行った。ちと荒いが、勢いのある作品。『未来予報 あした、晴れればいい』と微妙に似ているので、読み比べてみるのもいいかも知れない。

『BLUE』……初めて入る店で買った不思議な布、ケリーはそれを使って、四体のぬいぐるみを作った。順に王子、王女、騎士、白馬。だが、まだ生地が余っている。考えた末、つぎはぎだらけのぬいぐるみを作り、ブルーと名付けた――。
誰からも愛されないブルーを主人公にした、生きたぬいぐるみ達のブラックなおとぎ話。実際のところ王子と白馬はおまけで、ブルーの願い、王女の悪意、騎士の葛藤が絡み合うことで物語は展開される。イマイチ面白みを感じなかったが、騎士のキャラは割と好き。

『平面いぬ』……友人の山田さんの紹介で、腕に犬の刺青を彫ってもらった私。時々、犬嫌いの人が反応したり、どこからともなく犬の鳴き声が聞こえたりするが、私はその子・ポッキーを気に入っていた。そう、別れが近い家族よりも――。
刺青の犬が動き出したり、家族関係が妙だったり、とんでない事態が発生したりと、仕掛けは多いのだが、妙に印象の薄い作品。ファンタジーとしても、家族ドラマとしても中途半端に終わってしまっている。一応引っかけがあるが、さほどのインパクトはない。

相変わらず仕掛けは面白いのですが、今一つ乗れない作品が多かったです。
少なくとも、乙一の他の作品に慣れてる人にはお勧めできないかな。



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生徒数いくつ?

2006-07-02 17:25:38 | マンガ(少女漫画)
さて、いちおうホラーなんだけどの第579回は、

タイトル:すっくと狐(文庫版全7巻)
著者:吉川うたた
出版社:朝日ソノラマコミック文庫

であります。

主人公の実花が通う高校で1年生がプールで水死すると言う事件が起きた。
事件の話をしながら親友の弓弦と帰宅する途中、校舎の拡張のために取り壊すと言う噂のある古い社に来たときに、社の神だと言う色黒の男、となうと出会う。
まだ人死にが出ると言う唱の言うとおり、またもや水死者が出て、実花は唱の言うとおりに力を貸し、水死者の原因である水の妖怪を倒す。

……と言うのが第1話で、ここから様々な妖怪を相手に実花と唱の戦いが始まる。

なーんて書いてると、なんか少年マンガみたいやなぁ。
最初のころはほんとうに様々な妖怪に好かれる(?)実花の周囲で起きる怪事件に、唱が解決すると言うスタイルが基本なのだが、「ひのえんま」(丙午)生まれとされる実花の持つ狐……天狐の力を増すと言うことなどから、次第に実花と唱の恋愛ものの色が濃くなっていく。
まぁ、文庫版だと2巻あたり(単行本では4巻くらいかな)で実花と唱はくっつくので、中盤から完結に至るまでは玄狐の嫁、と言う立場で実花はよく妖怪に付け狙われるんだけど。

あとは、唱とおなじく社に住む他の天狐たち、数珠掛じゅずかけ稲荷のかのう夜ノ森よのもり稲荷のあとう、与の姉の小刑部姫を含め、唱ひとりではどうにもならないような相手と共同戦線を張る話や、それぞれの外伝、実花の親友の弓弦の話など、ストーリーのスタイルとしてはオムニバス、もしくは数話くらいの短い連載もので構成されている。

文庫はソノラマだけど、もともとはぶんか社のホラーMコミックスから出ていたホラー系のマンガで、人死にや妖怪を倒すあたりのシーンなど、けっこう不気味でえぐく描いてはいるけれど、だからと言って怖いかと言うとさほどでもない。
少年マンガっぽいところもあるし、恋愛ものの部分はさして特徴的というわけではなくありふれた展開ではあるので、ホラー系のマンガにしては読みやすいのではないかと思う。

それにしても、実花や弓弦の通う学校は唱たちの神社、いわゆる鎮守の地の丑寅(鬼門)にあって、妖怪が山のように出て、どしどし生徒や先生が死んでたりするんだけど、よくこの学校の生徒、まじめに通ってるよなぁ。
私なら2、3回、妖怪絡みで人死にが出ると通わんぞ(笑)



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