つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

時間の無駄

2006-07-09 14:51:06 | 小説全般
さて、いろんな作品はあるけれどの第586回は、

タイトル:シティ
著者:谷村志穂
出版社:集英社文庫

であります。

そろそろ長編を読もうかなと思いつつも、それでもしつこく短編集だったりして。
10編の作品が収録された短編集で、言わずもがなの各話ごとに。

「図書館は遠い」
サラリーマンの周平は、ある雨が降られた日に誰かの財布を拾った。それには区民センター図書室の貸し出し券と幾ばくかの現金が入っていただけだったが、貸し出し券に記入されていたタダミフミカと言う名前を見つける。
その名前からあれこれと想像を巡らしつつ、財布を返すために出会ったフミカはまだ高校生のおとなしくかわいらしい少女だったが、周平と本の話をしたときになぜ財布を落としたのかがばれてしまう。

「今朝のスープ、清潔なテーブルクロス」
あるクリーニング店の店員をしていた葉子は美人と言うわけでもなく、地味で、きれい好きな女性だった。そんな葉子と結婚した僕だったが、会社の女性と浮気をしたことをきっかけに葉子は何日間か出て行ってしまう。
どこか物足りなく、葉子が何を楽しみに生きているのか疑問であり、その正反対の女性との関係に満足していた僕は何日間かの自由な時間を持てると考えていたが、次第に汚れていく家に苛立つようになり、次第に葉子の帰りを心待ちにするようになる。

「波の音が聞こえたら私は……」
女性でありながら、女性という鉄格子の中に常にあって、少年になりきれなかった私は、渋滞の高速道路で修学旅行のバスから声をかけられる。振り向いた瞬間、私は彼がおなじ鉄格子の中にいる少年だと言うことがわかり、お互いを慰めるように、補完するように出会い、接していくようになる。

「ロリータ」
トキオは居候している高本の家に訪れたまだ小学生の少女の沙樹に惹かれていた。だが、高本の家の息子である浩一にそんな沙樹に性的ないたずらをしたりしたことを告げられるなど、沙樹への思いとは裏腹に不安ばかりが募っていく。
そんな沙樹が中学生になる春休み明けに高本に家に戻ってきたトキオは、結局浩一などの他の男たちとおなじ理由で沙樹を手放してしまう。

「パール・ホワイトのキャミソール」
ランジェリー・ショップに勤める美咲は、ボーナスが出たら買おうと思っていたお気に入りのパール・ホワイトのキャミソールが売られていることを同僚のマキに告げられ、その買った客を追いかけることになる。
その客を見つけた美咲は、いつの間にかその客が愛人関係の手切れ金で散財しようとしている買い物に付き合うことになる。

「神功で始まる空の高い夏」
カープのキャッチャーの達川が大好きな有子は、ツヨシとともに神宮に来たときにいつも達川への手紙を紙飛行機にして飛ばしていた。そんな有子をかわいがっていたツヨシは、しかし恋人を作り、妹のような有子の元から離れ、その傷心からいつもとは逆の気持ちを書いた手紙を作り、飛ばすとそんなときに限って達川に届いてしまう。

「僕は学校へ行く」
学校に行くといつも吃ってしまい、いじめられている光次は、通学のバスの中で、貧血で倒れる少女を見かけて、おなじようにして学校をサボることを知る。その方法を知るきっかけとなった少女えりかと知り合った光次は、家で厄介者扱いされている祖母を連れて、えりかとともに静岡の親戚のもとへ夜汽車に乗って旅をすることになる。

「サボテン」
祖母の新盆に家族で函館まで来ることになった夢子は、浮気に悪びれたところのない母や、そんな母をただ黙って許容している父との奇妙な家族関係の中、入院先から通ってくる女将がいるが、サービスにまったく不足のない奇妙な旅館に泊まり、祖母の法事に向かうことになる。

「女優と犬と赤い鼻」
みちるは犬のスサノオを散歩させているとき、数年前に引退した女優に出会い、謎めいたことを言われてしまう。「嘘をつくと鼻に赤いおできが出来る」というそのとおりに、愛してもいないが従順で都合がいいだけの妙子とのやりとりの中で次第に、その女優の言うとおり、鼻に赤いおできが出来、大きくなっていく。

「青い家のひとり娘」
祖父とふたりで暮らしている睦は、金庫職人だった祖父がたった一度行った盗みで姓を変え、ひっそりと暮らしているはずだったが、いつのころからか、刑事が見張るようになっていた。
時効直前までただ退屈な見張りを続ける刑事と頑固な祖父との間で睦はそれぞれの事情や思いを垣間見ながら今後のことを考えていく。

……なんか10編全部書いといて、こう言うのも何だが、やっぱり書くんじゃなかった……(爆)
とは言っても、じゃぁ、どれか特別にこれという良品があるかと言うと、ただのひとつもないんだから、紹介にすらならないんだもんなぁ。

いや、ほんとうに全部の話がこれっぽっちもおもしろくなかったし。
読みながら、なんで私はこの程度の本に何時間も使わないといけないのかとかなり疑問だったね。

何か印象的な場面は話、雰囲気、展開というものがひとつでもあればいいのだが、それすらもないし、だらだらと話が進むだけで各キャラクターも生きていると言う感じがしない。
まるで下手な人形劇で、ぎこちない動きと下手な演技を見せられているようでストーリーにも、世界にも、キャラにも入り込むことが出来ない。

短編集だとひとつふたつ、好みの作品があったりするものだがまったくないと言うのもある意味めずらしい。
まぁ、オススメかどうかは、言わずもがなだね。
タイトルどおり、時間の無駄になること請け合い。