つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

あー、わかるわぁ

2006-07-21 21:36:44 | 小説全般
さて、昔を思い出して遠い目をするの第598回は、

タイトル:キスまでの距離 おいしいコーヒーの入れ方I
著者:村山由佳
出版社:集英社文庫

であります。

高校最後の1年が始まる時期、勝利かつとしは弟子入りまで志願してしまったほどコーヒーがうまい喫茶店でマスター相手に愚痴っていた。
男やもめで暮らしてきた父の転勤、さらには叔父の転勤に伴い、叔父の家でかれん、丈の従兄弟たちと暮らすことになってしまったからだ。
悠々自適のひとり暮らしがかなわないことを嘆く勝利だったが、3年前、さえない美大生だったはずの従姉かれんに久しぶりに出会ったときに事態は変わった。

どことなく天然が入ったぼんやりだった従姉は、性格こそ変わらないながらも目を瞠るほどの美人に。
しかも勝利が通う高校の美術教諭にまでなっていた。

かれんの存在にもやもやする気持ちを抱えながら、その秘密を知ってしまった勝利は、かれんに惚れている自分の気持ちを自覚するものの、行きつけの喫茶店のマスターや、その縁故で現れた新任英語教諭の中沢の、かれんへの馴れ馴れしさなどに嫉妬し、御しきれない気持ちを抱えていたが、ある日、丈に、中沢からかれんの指輪のサイズを教えてくれと頼まれた、と言う嘘をきっかけに……。

本書は集英社文庫、と言うことになっているが、もともとはジャンプJブックスという新書(ただし弱冠サイズは大きい変則形)で刊行されていたもの。
過去に、高校時代の友人がおもしろいと言っていたのを思い出して読んでみたけれど、確かに集英社のジャンプ系……と言うより、少年マンガの恋愛ものを愛読しているタイプの中高生あたりには、かなりウケる作品だろう……と言うより、ウケるのは確実だ。

やむにやまれず同居することとなった叔父宅で久しぶりに出会った年上の女性は目を瞠るほどの美人になり、主人公が惚れるのも王道ならば展開、ラストに至るまで王道で、さらにはターゲットとする中高生くらいの年齢にとっては半ば憧れとまで言えそうなくらいのシチュエーションとラスト。
これで人気が出なければ嘘だろう。

はっきり言って、さぶいぼ覚悟なくらいベタな作品だが、もともと活字離れが激しい中高生くらいの年齢層に支持者を獲得した作品だけにとても読みやすい。
勝利の一人称で語られるものだが、一人称で語られる範囲の中できちんと書かれており、一人称に三人称の視点が加わると言うような不自然さはない。
そのぶん、視点が狭い、と言う欠点はあるものの、だからと言って説明不足になることもなく、勝利の視点から見るかれんの描写にも違和感はない。

ストーリー、展開は、平凡、ベタ、お約束、王道など、言い様はいくらでもあるが、そうしたものを平易に、きっちりと読ませてくれるのは評価したい。

ただ、いまならば、総体的な評価で言うと、やはり以前に読んだ「天使の卵-エンジェルズ・エッグ」のほうが、しっとりと落ち着いた雰囲気のある恋愛小説として評価は上、と言わざるを得ないだろう。
もっとも、「天使の卵」よりは男性にとってはほんとうにひとつの憧れのようなものとして普遍的な作品になるのではないかと思う。

それがために評価が上がる、というわけではないんだけどね。

咲いたのはひとりだけじゃん

2006-07-20 19:37:59 | 木曜漫画劇場(紅組)
さて、さすがに暑さを感じるようになってきたなぁの第597回は、

タイトル:花咲ける青少年(全12巻)
著者:樹なつみ
出版社:白泉社 花とゆめコミックス

であります。

鈴:今年初めて、お昼にエアコン入れようかなぁと一瞬思ったLINNで~す。

扇:干物になってたSEN・DEAーTH。

鈴:くさや汁には漬けたかえ?(笑)

扇:貴様を柴漬けにしてやるうっ!
作り方知らないけど。

鈴:別によいぞ。くさやほどは臭わないからな(笑)
ってオレも知らんなぁ、柴漬け。
……どっかの柴が咲いたひとの作り方も知らんが(爆)

扇:ああ、年下の女の子付け回して紫色に染めた薔薇を送りつける人だな?

鈴:そっちのほうで咲いたひと作ったところで気色悪いだけなんだが……。
あー、でも、そういうひとがいるといいなぁ。
ものはいらないから金をくれ、って言ってOKならの話だが(爆)

扇:そして、2で『今度は戦争だ!』とか言うんだな?
あのコピーは笑った、エイリアンそのまんまだったし。

鈴:単にパクっただけじゃないのか、それ。
しかし、いつ見てもあいつは子持ちの奥さんには見えないよなぁ。

扇:いかん、ヤヴァイネタしか思いつかん。
まぁ何だ、具が大きいも成長した――ってことだ。

鈴:具? まぁ、いろいろと大きくなったかもしれんが……(爆)

扇:LINNの人気ランキングが1000位低下……と。

鈴:なぁ……、お互い低下するほど人気ランキング、上のほうがあったかえ?

扇:安心しろ、俺は常に500位以内はキープしている。

鈴:そうか……。
あれだけ毒吐きまくって500位以内かぁ。
なら当然私は……やめよう、なんかどことなく空虚な雰囲気が漂い始めた気がする(爆)

扇:なに、君の頭に霞がかかってるのはいつものことさ。
現に今も酔ってるだろう? この記事書きながら話してる話題からして――。

鈴:まぁなぁ、お釜ば~の話だからな。

扇:言っちゃうかなぁ~。
ま、行ったのは君だけだが。

鈴:まぁな。だが、あの世界の人間はおもしろいね。
さすがプロだよ。まぁ、私にとってはそれなりにネタがウザかったが。

扇:つーか、酔ってないと付き合い切れんだろう?
デフォだとあんたかなり固い性格だしな。

鈴:当然っ。
……って半分おふざけでこっちもお姉言葉にしたら目つき違ってたしな~(笑)
まー、カウンターに座ってたぜんぜん知らない客がこっちのセリフでウケてる時点で、まぁ、二度と来んな、って目されても仕方あんめい。

扇:お株奪っちまったのな。
つーか、君がオネェ言葉で喋る姿ってかなり引くわ。

鈴:そゆこと……って引くなよっ!
まー、この低くて野太い声でオネェ言葉だから……って、ネタ的にはこっちのほうがウケそだがね。

扇:まぁね。
これ、先週解ってたら絶対ネタにしたんだけどなぁ。
さーて、来週の木曜漫画劇場はぁ?
「SEN、脱水症状で干物に」「つれづれ、600回を前にしてコンビ解消!」「LINN君オカマバーに潜入!」
の三本で~す。んがんん。

鈴:うわ~、かなりベタな予告編やなぁ。
じゃぁ、今回の木曜劇場はこの辺で。
さよ~なら~……んがんん。

扇:終わるなっ! つーか、お前が終わってしまえ。

鈴:うん、じゃ、さいなら~~~~~~~~~。

扇:次回からIDを変えんといかんな。

鈴:sen-senって?

扇:いや、どっかの西遊妖猿伝なゲームぢゃないから。

鈴:そりゃどっかのIT系大手で、最近買収した携帯電話会社より、自分の頭のほう気にしたほうがいいんじゃない? ってアドバイスしたくなる会社の社長みたいじゃんかよっ!(笑)

扇:ああ、ビルの向こうを張ってる人ね。日本限定だけど。

鈴:日本限定だからなぁ。
本家と較べれば、財務体質、脆弱すぎる気はするがね。

扇:では、ストーリー紹介を。(唐突)

鈴:よろしく。

扇:大金持ちの娘が、親の決めた三人の婿候補とガールミーツボーイする話。
自分の意志を貫いたように見えるが、最後まで親父に踊らされただけなのは敢えて伏せておこう。(笑)

鈴:いちおう、これも入れといてやれよ。
夫探しにかこつけて、本命とくっつけるための策略に、石油で大もうけした国の内紛と、夫探しに選ばれた男性キャラが自分の生きる道を見つけるドラマ。
……ってのもいちおう、ありだろ。

扇:まぁ、二人で主人公だったからね。
とりあえず、CM入れますか。


つれづれ読書日記


つれづれ読書日記、爆睡中

『作家別目録』、新しい作家を追加してないぃぃ……。
『怪しいページ』、あったっけそんなの……。
御覧になりたい方は、最新記事の『目録へのショートカット』、もしくはこちらから!


つれづれ読書日記


鈴:じゃぁ、主人公の花鹿かじか・ルイーサ・陸深くがみ・バーンズワース。
幼いころから南国の孤島で育ったため、100%天然で生きる本作のヒロイン。(ただし、+20%くらい無意識の計算あり)
父親にゲームと称された夫探しをするうちに、その血筋や夫探しに選ばれた相手と交流をしつつ、真実の愛(うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ、さぶいぼっ!)に目覚めるひと。
結局、感覚型の人間が強い、と言うことを証明してみせたキャラ。

扇:では、相方の倣立人ファン・リーレン
香港の倣財閥の総帥。
兄弟の中で一番若いが、その才気故に後戻りできない人生を歩むことを余儀なくされる。
十歳の時に四歳の花鹿と出会い、氷のような心にアイスピックをぶち込まれて堕ちる。
以後は花鹿の兄役、兼便利屋として苦労の80%ぐらいを背負う。(プロセスが以下に紹介する三馬鹿トリオと全く同じなのは突っ込んではいけない)
花鹿の親父とは提携しつつも従うという微妙な関係だが、何だかんだ言って手玉に取られている辺り、歳相応に可愛い人物ではある。

鈴:まー、いーじゃないか。ひとりだけ、報われたんだし(笑)
じゃぁ、次、ユージィン・アレキサンドル・ド・ヴォルカン。ヴォルカン男爵家の末の息子で、出生にまつわる過去があり、極めて厭世的……だがかなりの美形で、言い寄ってくる女性を自殺に追い込むこと多数。
しかし、花鹿曰く、最愛の白ヒョウ、ムスターファの生まれ変わりとされ、立人同様、花鹿に転んだあとには、忠臣蔵並に花鹿に滅私奉公街道まっしぐら。
ある意味、この作品の中で、立ち位置、キャラともに極めて自然なひと。

扇:堂々とオチを言うな……ま、分かり切ってるラストではあったが。
ではラギネイ王国の第二王子、ルマティ・イヴァン・ダイ・ラギネイ。
一巻に登場し、キャスリーンとくっついたマハティの孫。
いわゆる、「俺は王位なんて欲しくないんだ~!」な性格で、自分の望みに反して病弱な兄貴に狙われ、野望に燃える部下に無理矢理王にされそうになる、完全なお約束キャラ。
親父が用意した婿候補の二番目で、一人目がペット、三人目がいい友達的なポジションを与えられたので、自然と弟役に回った人。
オリジナリティーを感じない設定なのでちと印象薄いが、花鹿との漫才は結構笑えた。

鈴:では次に、三人目の花鹿の夫候補、カール・ローゼンタール。
バーンズワース財閥に負けたローゼンタール財閥の御曹司で跡取り。ただ、好色家の親父のおかげでいろいろと暗~い過去があるが、花鹿のおかげで持ち直すあたり、花鹿のキャラを引き立てる役にしかなっていないのが難点。
つか、報われないわ、立人相手に塩を送るわ、ある意味、ムスターファ(ユージィン)以上に滅私奉公、大石内蔵助も真っ青なひと。
ただ、このひとがいるおかげで、その後のローゼンタール財閥がどうなったのかは、けっこう気になったりする。

扇:ではルマティのお付きのクインザ・ハフェス。
ルマティを王位に付けるために色々と画策し、国を荒らした人。
信念=正義などではないことを象徴するキャラで、作者がこれまでの作品で数多く扱ってきたテーマだけに、キャラの立ち方が半端じゃなかった。(さすが青年漫画を地でいく樹なつみ
手段はどうあれ、目的だけは達したあたり大した人物ではあるが、自分がトップに立つ気がない時点で悪役としてはランクが一個下がる。
ちなみに、男性キャラで花鹿に魅了されなかった数少ない人物の一人でもある。

鈴:では、あと、メインキャラ一覧(笑)
最初にルマティの祖父であるマハティが若かりしころにニューヨークで出会い、後に花鹿の父、ハリー・バーンズワースを産んだキャスリーン。
しがない場末のバーで歌手をしていたが、ひょんなことからマハティと知り合い、子をなすも、知人のフレドリック・バーンズワースとともにマハティの落胤を育てることとなる、若いころはけっこう気っぷのいい、人情味溢れるひと。
で、その夫となり、ハリーを育てたフレドリック。友情に近い愛情をもってキャスリーンと人生をともにした小説家。若いころは軽めの新聞記者だったが、作家となって、ん十年、ハリーに負けず劣らず老獪なじじいに変貌。
さらにハリー・バーンズワース。花鹿の父親で、マハティの落胤、バーンズワース財閥の総帥で、普段はすんごいタヌキ、実業家としてはライオン、花鹿の前ではただの親父(タヌキ&ライオンを何割か含む)。本命を立人にしつつも、対抗馬を立てて煽りつつ、いろいろと画策して、ほぼすべてのキャラを手玉に取るあたり、この作品の中でいちばん敵に回してはいけないひと。
でもひとつ、ナジェイラ・イサ・シャドリ。ラギネイ王国の中で神託を受ける巫女の家系にあり、陽の花鹿に対して陰のナジェイラ、と言う立場にあり、男性を選ぶに際してもクインザを選ぶなど、対極に位置するが、結局クインザの思惑に踊らされつつもそれを受け入れようとして捨てられ、さらにそれをもって単にかわいい女性キャラに成り下がってしまった時点で花鹿よりも弱いキャラになってしまったかわいそうなひと。

扇:長っ!
しかしまー、十二巻で上手いことまとめたわな、この作品。
婿トリオは設定された時点で振られると分かり切ってるんだが、それを枝葉で終わらせずに、三人ともきっちりエピソードを構成してるあたり、職人芸ではある。
微妙にユージィンだけは裏をかいてくっつくか? みたいなところを臭わせてあったが、それだと余りにも立人が憐れなんで、ラストもあれでいい感じだろう。

鈴:そーねー。キャラ多い割には12巻できちんとまとめたわなぁ。
……って、立人が振られたら読者納得せんぞ、絶対(笑)

扇:せんだろうなぁ……。
いや、獣王星みたいに、殺しちゃうって手もあったんだがね。
まぁ、あの薄すぎるヒロインと立人比べるのは間違ってる気もするが。

鈴:まぁなぁ、ある意味、花鹿と立人はきっちりとしてたからなぁ(濃いと言ってはいけない)
まーでも、少女マンガとしてはやや長めではあるけど、長いぶんにもきちんと読ませてくれる作品ではあるので、さすがにベテランってとこだぁやねぇ。
代表作に「八雲立つ」があるけど、どちらかと言うとこちらのほうが好みなので、オススメするならこっちかな。
……と言うわけで、今日の600回まであと3回の木曜劇場はこの辺で、さよ~ならぁ~

扇:今回は久々に懺悔部屋に行かずに済んだなぁ。
まー、引っかかる部分がないかと言われればあったりもするんだけど、それを圧して全体的な出来がいいので、素直にオススメできますね。
では、割と気持ちよく、さようならぁ~

電子の要塞?

2006-07-19 23:25:17 | ミステリ
さて、読む作家を限定し過ぎてるなと思う第596回は、

タイトル:99%の誘拐
著者:岡嶋二人
文庫名:講談社文庫

であります。

岡嶋二人の長編ミステリです。
両氏の扱うジャンルとしては人気が高い『誘拐物』ですが、さて……。

十九年前、一つの誘拐事件が発生した。
脅迫されたのはイコマ電子工業の社長・生駒洋一郎、誘拐されたのはその息子・慎吾。
犯人は、洋一郎が会社再生のために私財をを投げ打って作った五千万円、そのすべてを要求した。

慎吾は無事保護されたが、結局犯人は解らずじまいだった。
身代金も戻ることはなく、イコマ電子工業は大手カメラメーカー・リカードに吸収合併される。
そして事件の七年後、一つの手記を残して、生駒洋一郎は四十七歳の生涯を閉じた。

時は現代、昭和六十二年に移る。
生駒慎吾は二十四歳になり、リカードに勤務していた。
だが、彼はあのことを忘れていなかった、父がすべてを奪われた忌まわしい誘拐事件のことは――。

主に犯人側の視点で語られる、誘拐事件の顛末。
読み進めていくと自然に、犯罪が成功することを期待してしまうのが面白い。
パソコン通信や音響カプラーなど、当時の技術を知る方なら思わずにやっとしてしまう小道具を駆使しているのもポイント。

現代編の前に、19年前の事件が洋一郎の手記の形で語られます。
これが、独立した短編として楽しめるぐらい出来がいい。特に、虫食い状態で洋一郎が疑問を提示している箇所は秀逸。
ただ……未解決に終わったこの事件、誰が得をしたかを考えれば犯人は絞られてくるんじゃないのか? と思うのは私だけ?

現代編に入ってからは、ほとんどノンストップで慎吾の復讐が描かれます。
十九年前の事件を再現するために、彼はとにかく手の込んだ計画を練り、実行します……ようやるわ、ほんと。
情念で動いているというより、むしろゲームを楽しんでいるかのような所に引っかかりを覚えたりもしますが、それが作品から重苦しい空気を消しているのも事実。

例によって読みやすい文章と優れた構成で、最初から最後まで一気に読ませてくれます、オススメ。
モロに予定調和なラストには賛否両論あるかも知れませんが、コメディほど軽すぎず、サスペンスほど重すぎないこの作品にはちょうどいいのではないかと思います。



――【つれづれナビ!】――
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世界は血に飢えている

2006-07-18 23:17:39 | マンガ(少年漫画)
さて、前から書こうと思っていた第595回は、

タイトル:ヒストリエ(1~3巻:以下続刊)
著者:岩明均
文庫名:アフタヌーンKC

であります。

かの傑作『寄生獣』の作者が送る古代史物語。
後にアレクサンドロス大王の書記官となるエウメネスを主人公に、紀元前300年代の世界をひたすらハードに描きます。

紀元前343年、アリストテレス一行はスパイ容疑でペルシア帝国に追われ、ヨーロッパの都市カルディアを目指していた。
軍の追っ手が迫っているにも関わらず、わざわざ陸路を寄り道してトロイヤ遺跡を見学するアリストテレス、そして、海路を塞がれることを危惧する弟子。
そんな折、彼らは小舟で向こう岸に渡ろうとしている青年エウメネスと出会う。

エウメネスは、かつてカルディアの富裕市民の子だった。
だが、その出自は異民族トラキア人であり、それ故に彼はそれまでの身分を剥奪され、奴隷として都市を出ることになったのだ。
書を愛する生活、美しき女戦士の最期を見る夢、一人のトラキア人との出会い、父親の死、そして途方もない長征行……記録者となり、後に記録される側に回った男の物語が始まる――。

歴史物を書くに当たって最大の障害は『その時代の常識』だと思いますが、本作はそのハードルをかなり高いレベルでクリアしています。
『ヘウレーカ』もそうでしたが、登場人物の会話や態度から読み取れる思考回路が非常に、らしい、のです。
象徴的なものの一つに奴隷に対する描写があります。

第一話でいきなり、エウメネスはアリストテレスの弟子に奴隷扱いされます。
弟子に比べると比較的柔軟な考え方をするアリストテレスですら、「自主を好むギリシア人に比べ、異民族の方に奴隷向き性質の人間が多いのは確かだろう」という発言をする。
しかしこれは彼らがギリシア人であることを考えれば極めて自然な態度です、なぜなら、彼らにとってはそれが当たり前だからです。
(『無知の知』で有名などっかの偉そうな人すら、奴隷制に疑問を提示したりはしていませんしね)

では使われる方もそう思っていたでしょうか? 無論、そんなわきゃありません。
彼らは飽くまでギリシア人の定めた枠に従わされているだけです、当然中には反乱を起こす者も現れます。
じゃあ、彼らを平気な顔して使っている者達は悪逆非道な連中ばかりかと言うと、そうではないわけで……。

岩明均の恐ろしいところは、そこに現代人の常識を持ち込むことを極力避け、飽くまでこの時代の常識は常識と割り切って淡々と物語を進行していく点にあります。
(だからって冷たい視点で見てるってわけではない)

富裕層から一気に奴隷になったエウメネスは非常に冷静かつドライな視点を持っており、一級のナビゲーターとして我々を古代世界へと誘ってくれます。
図書室に入り浸って身に付けた豊富な知識と、持って生まれた遊牧民族特有の荒々しい感覚、二つの武器を駆使して、彼はカルディアからティオス、さらに――。
って、まだ連載中なのでこの先どうなるか解りませんけど。(笑)

問題があるとすれば……やっぱり絵でしょうか。
正直、爬虫類という形容がぴったりな顔は、かなり人を選ぶと思います。
さらに、蝋人形のような死体がゴロゴロ出てくるので生理的に受け付けない人も多いかと。斬られた断面が黒で塗りつぶされているのも、気持ち悪さを助長してるし……。

絵が合わない方にはオススメしませんが、個人的にはかなり好きな作品です。
世界史好きなら、読んで損することはまずありません。

加納伝説スペシャル

2006-07-17 23:41:08 | ミステリ
さて、早々と続編も読んでしまった第594回は、

タイトル:虹の家のアリス
著者:加納朋子
文庫名:文春文庫

であります。

『螺旋階段のアリス』の続編です。
例によって一つずつ感想を書いていきます。

『虹の家のアリス』……安梨沙の伯母・篠原八重子が教師を務める『お教室』にて、仁木は主婦の一人ミセス・ハートから相談を受ける。彼女の所属する『虹の会』で、立て続けに奇妙な事件が起こったというのだ――。
いきなり一押し。「ころす」などという物騒な手紙の話が出て、すわ出動か? と思わさられるが、きっちりその場でカタを付けてしまう辺り、仁木さんも大したものだ。オチの美しさは特筆もの。ミセス・ハートの人柄も相まって、非常に爽やかな作品になっている。序盤で八重子が語る、安梨沙の危うさに付いての考察も的を射ていて良い。

『牢の家のアリス』……会社を辞めて一年が過ぎ、いよいよ独力で事務所を維持しなくてはならなくなった仁木。浮かない顔の所長に、安梨沙は依頼人探しを勧め、以前関わった人物の名を挙げた。気乗りしないまま電話をかけた仁木は、相手がちょうど問題を抱えていることを知り、絶句する。
事件自体は安直の一言で済む程度のもの。証拠が多すぎて、正直萎える。オチが少しひねってあり、安梨沙がその暗黒面を見せるところだけは面白い。つーか仁木さん、いい加減夢から覚めたらどうですか?

『猫の家のアリス』……篠原八重子を介して依頼を受けるため、再び『お教室』を訪れた仁木。現れた依頼人・美樹本早苗は馴染みの掲示板で問題視されている事件のことを語り、次は自分の番かも知れないと悲壮な顔を見せるのだが――。
もうとにかく依頼人の早苗に付いていけない作品。喋る時は主語を入れろ、貴様の常識と一般常識のズレぐらい認識しとけ、自分で守れないものを山ほど抱えて浸るな鬱陶しい、と偏見全開の言葉を投げたくなるぐらい嫌いなタイプ。ラストもやれやれといった所で、全体的に疲労感しか覚えない作品だった。ただ、探偵が解決するトラブルとして非常にらしいもの、とは言えるだろう。

『幻の家のアリス』……一度実家に帰って着替えを取って来たい、と希望した安梨沙に従って、仁木は彼女の家に車を走らせる。そこで出会ったハウスキーパー・納谷蕗子からの依頼。それは、こっそりと安梨沙の真意を探って欲しいというものだった――。
安梨沙というキャラクターを構成するパーツがまた一つ明らかになる話。彼女が昔書いたという作中作も登場し、どこか『ガラスの麒麟』を彷彿とさせる。仁木の娘・美佐子や安梨沙の元婚約者・栄一郎が登場し、最終話の足場固めをしていく、全体を通して考えると非常に重要な一編。ただ、妙に印象が薄いのはなぜだろう……?

『鏡の家のアリス』……珍しく、仁木は息子・周平の呼び出しを受ける。親に対する相談かと思いきや、やはり用があるのは探偵の自分に対してだった。結婚を考えてる女性が、ストーカー被害に遭っていると息子は語るが――。
善人がいて、悪人がいて、善人同士がくっついてめでたしという、加納朋子にしては実に薄っぺらで安易な物語。悪役のキャラクターがほとんど機械人形なのも驚くが、唐突に『事件が解決した』ということになってしまうラスも違和感が拭えない。それと周平君、『並はずれて心がきれいで優しい女性』って、どこの夢の国の住人ですか?(毒)

『夢の家のアリス』……仁木は個人的な問題に頭を悩ませていた。美佐子に縁談の話が持ち込まれたのだ、しかも自分の元上司から。しかし、そんな想いを断ち切るかのように、事務所には嵐が吹き荒れていた。同時に三つもの依頼が来ていたのである――。
様々な要素が交錯し、ともすれば空中分解しそうになる話を綺麗にまとめ上げている完結編(続いたりして……)。僅かなページ数でこれだけの要素を関連づけ、連作短編のトリとしての役割も持たせている力量は賞賛に値する。ようやく安梨沙の抱える問題と向き合うことができた仁木の、「いつも笑っているっていうのは、結果的にひどく不誠実なことなのかもしれないよ」という台詞は非常に美しい。

タイトルに『家』が付いていることからも解るように、ミステリ色が薄れ、ホームドラマの色が濃くなった続編です。
私の場合、好きな短編と嫌いな短編がくっきり別れてしまったので評価は微妙……趣味の問題だとは思うけど。
ただ、安梨沙と仁木の関係にまた一つ変化があるので前作のファンは読んどくべきでしょう、好みが合わないにしてもね。


☆クロスレビュー!☆
この記事はSENが書いたものです。
LINNの書いた同書のレビューはこちら

最初はね

2006-07-16 16:42:05 | 小説全般
さて、恋愛小説続けてるので企画にしようかななんて思ってたの第593回は、

タイトル:恋愛びより
著者:堀田あけみ
出版社:角川文庫

であります。

恋愛小説3編が収録された短編集であります。
言わずもがなではあるけれど、例のごとく各話ごとに。

「窓から髪を垂らしておくれ」
二十歳の大学生の妃佐は、いまどき門限が8時、交渉してようやく8時半に延ばしてもらうくらいの家に育った女性だった。門限だけではなく、女友達でも外泊は禁止、就職もしなくていいと言う徹底ぶり。
そんな彼女でも8時半までは自由になり、何人かのボーイフレンドも出来たが結局門限や家の事情などで別れることに。
そんな妃佐がお見合いで知り合った裕美は、お見合い以後、断ったはずの妃佐の家に足繁く通ってくる。しかし、通いながらも妃佐が顔を見せないことを意に介さないような裕美と、いままで親の言いなりになってきた自分を見つめ直した妃佐は遅い反抗を実行した。

「綺麗」
自分はかわいくないからといつも下を向いて生きてきた倫子は、恋人の湧二との関係の中でもそんな不安がいつも拭えないでいた。結局、湧二と別れたこと、また中学時代に自分とおなじような存在だった同級生の変貌ぶりから、ようやく自分の思うようなスタイルを選び、変わっていく。

「忘れたハッピーエンド」
頼まれごとは忘れ、待ち合わせには時間単位で遅刻する常習犯の千夏は、大学時代から付き合っていた雅也が突然冷たくなったことを不安に感じていた。
しかし雅也としては就職して、たった数分の遅刻に叱責された経験から千夏のためを思って、遅刻癖の改善を目論んでいた。どんなに忘れ物をしても、どんなに遅刻してもかわいくも愛しい千夏を甘やかしたい気持ちを抑えながらも、それぞれの気持ちがすれ違う中、雅也は最後にもう遅刻しなくてすむ方法を思い付く。

全編通して、文章がダメダメ。
すんごい読みにくい
体裁は「彼」「彼女」という単語が頻発するので一人称の書き方ではないのだが、内容はほとんど一人称。
とにかく主人公の心理描写がだらだらと間延びしっぱなしで書かれているのだが、その割には主人公でさえ「彼女」という二人称が使われていたりするため、主人公以外のキャラが出た途端にキャラの立ち位置がぼやけてくる。

特に3編目の「忘れたハッピーエンド」などは、千夏と雅也のそれぞれの描写がほぼ交互に描かれているもんだから、余計に掴みづらい。

あとは、上にも書いたけど、心理描写が間延びしすぎ。
くどい、と言うよりうざったい。
はっきり言って、同様のことを書くのに、ここまでの分量はいらないし、読んでいて疲れるだけ。
あっさりと簡潔にとまでは言わないが、もっと読みやすさとかは考えてもらいたいもの。
これは特に「窓から髪を垂らしておくれ」「綺麗」に顕著。
「忘れたハッピーエンド」はバランスがよいほうなので比較的読みやすい。

と、文章的なところはかなり評価できないのだが、内容に関しては、女性らしい気持ちの変化など、それなりにきちんと描けている。
2編目の「綺麗」など、そこまで内向するもんかいな、と思ったりもするが、女性ならば共感できる部分というものは大いにあろうかと思われる。
文章の部分を除けば、この「綺麗」がいちばん評価できる話であろう。

次点は「忘れたハッピーエンド」か。
これは素直な恋愛小説でわかりやすいハッピーエンドの話であり、3編中、もっとも読みやすい作品。
あと1編は……まぁ、この「…」で推し量ってくれい(笑)

続くとつらい……

2006-07-15 19:52:17 | 小説全般
さて、イヤな予感はしたんだけどねの第592回は、

タイトル:愛の工面
著者:辻仁成
出版社:幻冬舎文庫

であります。

父にカメラを買い与えられたことをきっかけに、対人恐怖症で登校拒否気味だった私は、そのファインダーを通して見る世界のおかげで変わることが出来、長じてからは写真家という職業にまでなっていた。
そんな私が撮影するものの中で、自分の独特のテクニックがまったく通用しなかった彼。
若い作家である彼を被写体として撮り続けたりする中で訪れる思いや別れ。
彼の新しい彼女……彼の妻となった女性と彼との偶然の出会いなどを経て、父の面影を始めとする「男の背中」を撮り続けてきた私の個展などが綴られている。

……あ、あかん……。
これでは規定文字数を確保することが出来んかもしれん……(爆)
(だから文字数のことを言うな、とは言わないように)

えー、まずは本書の体裁から。
概ね3~4ページ程度の短いエピソードのようなものがあり、その合間に裏表紙曰く「著者による」写真が2~4枚程度挟まれている。

アマゾンを見るとけっこう評価がよかったりするし、たぶんそれなりにおもしろいのかもしれないが、はっきり言って、写真なんかいりゃしないんだから外してくれ、と言いたいね。
私は小説を読みたいんであって、写真を見たくて読んでるわけではないんだからよ。

で、この写真を入れるせいか、それともそもそもそういうふうに書いてみようと思ったのか、本文そのものが短すぎるし、ホントにエピソードを単に連ねただけって感じが拭えない。
その割には次につなげるためか、中途半端な感じのがほとんどだし、そのせいで話がぶつ切りになってる感じがして、ストーリーにぜんっぜん入っていけない。
なんか、出来の悪い紙芝居でも見てるような印象。

とは言うものの、まったく見るべきところがない、と言うわけではなく、中には興味深く読めるところもある。
だから、写真とか短すぎる本文なんて妙なことをしないで、ふつうの短編として書いてくれれば、もっとおもしろく読めたんじゃないかなぁ、とは思う。
そういう意味では惜しい作品ではないかと思うのだが、惜しいと言うだけで△なんてことにはならない。

そもそもこの体裁は気に入らないので、落第決定。

……にしても、幻冬舎文庫って、なんかはずれが多いような印象があるな……気のせいかな?

ファン限定?

2006-07-14 22:31:54 | 恋愛小説
さて、まともに聞いたことないんだよな、このひとの第591回は、

タイトル:純愛ラプソディ 竹内まりやを聴きながら
著者:真野朋子
出版社:幻冬舎文庫

であります。

たまにはこういうののレビューなんかもいいかなぁ、なんて思って読んでみた。
とは言え、やっぱり長編ではなく、短編集なんだけど。
と言うわけで、各話ごとに。

「ハッピーエンドはお好き?」(曲:純愛ラプソディ)
大手広告代理店の系列子会社で専務をしている岩尾と、その会社が企画したイベントで知り合い、不倫関係にある祥恵は付き合ってから1年半、自らの誕生日を区切りに、岩尾の態度いかんで身の処し方を決めようと決意する。
祥恵の決心とは別のポイントは会社の同僚である3人の友人。好き勝手に言いながらも祥恵への心遣いを見ることが出来る。

「彼の背中」(曲:駅)
ある日の喫茶店で恋人の圭介から、奈津は浮気相手が妊娠したことを聞かされ、別れたくない気持ちを抱えながらも結局別れてしまう。その後、アメリカ留学の際に知り合っていた男と婚約することになり……。

「インディアン・サマー」(曲:本気でオンリーユー(Let's Get Married))
化粧をしているときよりも、落としたときの何もない素の顔のほうが好きな綾香は、撮影の現場で知り合ったアシスタントの赤沼と話すうちに、花という共通の目標を持つ赤沼と意気投合し、次第に関係を深めていく。
あっさりとしたハッピーエンドの話で、短いがさらりと読めるのがよいか。

「さびしいキッチン」(曲:告白)
お見合いパーティで結婚した佳世は、ヘヴィ・メタルが唯一の趣味の夫との生活の中で物足りなさを感じていた。そんなとき以前付き合っていた男から電話があったり、夫の浮気が見え隠れしたりしながらも、都合のいい妻の役を演じ続ける。

「バブルバスの夢」(曲:明日の私)
東京に出て外国人アーティストのコンサートを企画・招聘する会社に勤める美希は、故郷の友人から見れば趣味を仕事にも出来、そうしたアーティストとも会える憧れの存在だが、その実はシャワーしかない格安のワンルームで暮らすアルバイトだった。
親友の加奈子とのやりとりの中で積み重なる嘘と、それが発覚するとき、無邪気に憧れていた加奈子の思いなど、こちらも「ハッピーエンドはお好き?」と同様、友情もの。

「美しき誤解」(曲:けんかをやめて)
共通の趣味から政彦と付き合うようになったあづみだったが、最近は政彦の友人でありひとつ年上の岳史に惹かれていた。友人の彼女として距離を保つ岳史に何とかして近付こうとし、それがかなったときにタイミング悪く、そこを政彦に見られ……。

「思い出には早すぎる」(曲:シングル・アゲイン)
夫の心変わりで離婚することとなった瞳子は、精力的に仕事を続ける中で、今度は夫とは逆の年下の男と付き合うことになる。しかし、結局その男も夫とおなじ家に収まるべきと言う気持ちを滲ませるようになり……。

「そして誰もいなくなった」(曲:今夜はHearty Party)
里奈の家には学生時代の友人であるさやか、景子、貴江、まゆみの4人が集まり、里奈のためのパーティが行われていた。しかし、仕事が忙しい者、結婚して子供がいる者など、泊まっていく予定だった者が次々とそれぞれの事情で帰っていく。

……やっぱり、おもしろい短編はなかなかないねぇ。
タイトルに「純愛」とあるように、総じてどろどろしたところは薄く、どれもあっさりとした話で、まぁたまにはこういうのもいいかな、とは思ったりするけど、でもそれだけかなぁ。
最初はいいけど、2作目、3作目あたりになると、読んでて退屈になってきたし。
見るべきところも大してないし、おもしろい? と聞かれれば、おもしろくない、としか言いようがない。

もっとも、竹内まりやの歌詞が冒頭にあり、その曲や歌詞をしっかりとわかって読めば、より楽しめるのかもしれないが、あいにくと知らない人間にとってはね……。
だからと言って、わざわざ探してまで聞こうとは思わないし。

う~む、やっぱりタイトルの竹内まりやの名前を見たときに、やめとくんだったかも……(笑)

妖怪アパートではない(笑)

2006-07-13 21:59:48 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、続編も出てたりする第590回は、

タイトル:マンションズ&ドラゴンズ(全6巻)
原作:藤浪智之  漫画:佐々木 亮
文庫名:Gum comics

であります。

扇:マンションじゃなくてアパートだろうとツッコむSENでーす。

鈴:飯が出てくるんだから下宿じゃないか? とさらに突っ込むLINNで~す。

扇:飯が出てくるってことは旅篭だな? 飯抜きだと木賃だが。

鈴:いったいいつの時代の話をしとるっ!

扇:印籠見せて、「てめえら許せねぇ!」って言う時代。(笑)

鈴:印籠って、ヨーヨーの横面についてるヤツか?(笑)

扇:そう、若葉マークが彫ってあってな。

鈴:うわっ、やなじじい……。
きっと何かあっても、「わしは若葉マークじゃからよいのじゃっ!」とかわけわからんことのたまわりそうだ。

扇:つーか、若葉マークで全国走り回るのね……。
落ち葉マークの遠山金四郎とかいても嫌だが。

鈴:落ち葉ってな……。せめて桜吹雪なんだから桜にしといてやれよ。
まぁ、吹雪いてる時点で落ち目のはずなんだが(爆)

扇:六本木心中かっ!

鈴:……わからん……。何十年代?

扇:貴様、アン・ルイスを知らんとぬかすかっ!
タイムスリップグリコで、過去を復習したまえい。

鈴:アン・ルイスの名前くらいは知ってるがのぅ……。
って、なんでそこでグリコやねんっ! よほどこめかみをぐりぐりされたいようだな。

扇:フッ……グリコをなめるなよ。
一粒300メートルはダテじゃねぇっ!

鈴:ダテってもなぁ。グリコと言えば、あのまんせーな絵柄しか思い浮かばんでな。
あ、あと毒入りお菓子事件。

扇:いや、あれゴールの瞬間の筈なんだがな。
また危険な話を……ついでに森永も入れとくか。

鈴:ついでってな……。
しかし、いまとなっちゃぁグリコも森永も縁が薄いのぅ。
……あ、グリコはなんかレトルト食品あったりするから、たまに関係するが。

扇:基本はハウスだな。
バーモントカレーだけは食う気になれんが。

鈴:こっちはS&Bだな。辛いもの好きならスパイスあんどハ~フなここだろう(嘘)
……って、よく使ってるカレールー探したらハウスだった……(爆)

扇:大抵はとろけるカレー、たまーに、こくまろ。
辛いの苦手だから、中辛に辛口混ぜるぐらいがちょうどいいな。

鈴:私は辛口オンリーやなぁ。
それでもカレーパウダーとかガラムマサラとか入れて辛くするけど~(笑)

扇:いや、死ぬから。
私が辛口使う場合、タマネギ六個入れて、生卵まで流し込んで辛さ押さえてるぞ。
まーさすがに、味がしないレベルの『バーモントカレー甘口』に手を出す気にはなれんが。

鈴:中辛に辛口混ぜてそれは……。
とりあえず、初めて行くカレー屋さんで、「何倍にしましょう?」「とりあえず10倍」「辛いですよ?」「問題なし」の私には考えられないな。
まー、実際、店員に辛いですよと言われて辛かった経験はまずないが。

扇:お前の舌は私と違ってバリケードなんだよ。

鈴:バリケード?
ラミネートの間違いではないのか?

扇:お前、圧着されてたのか……。
今度から一反木綿と呼んであげよう。

鈴:されてるわけなかろうっ!
蒸着なら、してもいいかなぁ、とか思ったりしないでもないことはないかもしれないが(爆)

扇:メッキは剥がれるからやめといた方がいいぞ。
特に、直射日光浴びると表面にあばたが浮くらしい。(実話)

鈴:……また妙にマニアックな雑学を披露しおって……。

扇:銀色メッキのギャ×ンの場合、ハレーション起こしたり、表面に妙なものが映ったりするから屋外撮影は大変だったようだ。
ま、当時の話だがな。

鈴:じゃぁ、シャ○ダーのネタはあるのかえ?

扇:ギャバやシャリは本職スタントだけあって、本人自身がアクションしてたんだが、シャイの場合はそこだけ差し替えって場合もあったしい。
ま、こればかりは仕方ねーわな。

鈴:ってか、主役張ってる役者がスタントも一緒っていまじゃ考えにくいわなぁ。
……って、そろそろ本題に入らんかね。

扇:えーと……ダンジョンズ&ドラゴンズ好きの作者が、名前もじって描いた話。
この時点で俺的評価が1ランク下がる。

鈴:えー……、ちょいと補足。
もじって描いたのは確かだが、ファンタジーRPG風のコメディでタイトルにあるようにマンション(アパートか下宿としか思えないが)で暮らす各職業及びその卵たちによるお話、ってとこ。

扇:ストーリーはそんなとこかな。
では、CM。


つれづれ読書日記


つれづれ読書日記、停滞中

『作家別目録』、サボってるかも……。
『怪しいページ』もいい加減死んでますな……。
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つれづれ読書日記


扇:んじゃ、主人公(?)のユーシス。
この漫画の良心にして、下宿『勇者屋』のアルバイト。
神官大学を目指して頑張るが、受かる見込みはなさそう……努力家だけど結果がついてこない、典型的な下積みキャラ。
何も考えてないあっぽのナッツに惹かれていくあたり、誰でも一つぐらいは才能を欲しがるものだと再確認させてくれる人物でもある。
でもまー、この漫画の中では一番マシな人かな~、常識人で苦労人だし。

鈴:じゃぁ、そのヒロインのナッツ。
勇者志望の女の子で、常に重りをつけ、視力をよくするためにへんてこに見える眼鏡をかけるが、それらを外すといかにも勇者らしい行動力と戦闘力を見せる子。
勇者屋がある国の王様が他国の勇者自慢話に嫉妬して勇者に祭り上げられたが、基本的には天然系のボケキャラ。
とは言うものの、勇者を目指す理由となった相手がただのろくでなしだったり、理屈をこね回そうとしても理屈が通ってなかったりと、素直に天然だけどホントは強いんだよ、ってだけのキャラにしたほうがいいんじゃないかと思うキャラ。

扇:では、『勇者屋』の住人その一・ガンプ。(ゼビウスではない)
獣人にして傭兵、なぜか料理がうまい。
普通のオジサンキャラで、気づくと背景の一部になっている印象薄い人。
つーか、得意な能力なり分野なりを決めて、適当な性格付けただけのキャラが出てくるあたり、いかにもゲームと同じ感覚で書いてやがんなこの作者、って気がする。(毒毒毒)

鈴:ある意味、唯一個性的なキャラであるデスバレイ。
ネクロマンサーを職業にするキャラで、ユーシスくんを常にネクロマンサーの道へ誘い込む教育熱心(?)なひと。
最初のころに、腕利きの盗賊の腕、とか出したり、ゴーレムのネリーとかに惚れたり、個性的に見えて個性的でない面々の中では際立った存在。
まぁ、ガンプとおなじく背景になりつつあるのは残念。

扇:んじゃ、『勇者屋』の管理人のセツナ。
いわゆる、管理人さんと言えばおっとり系の美人、という枠内に入るキャラ。
それ以外何かあるかと言われても何もない。
つか、この漫画のキャラクターって、思い入れない人ばっかりなのであとお願い。

鈴:じゃぁ、あとはメインキャラ……というか、ナッツ&ユーシスの主人公コンビに絡むキャラとしてジーナかな。
ユーシスが目指す神官大学の学生で、金で学生の地位を買う特待生の中にあって実力がきちんとあり、さらに盗賊ギルドの娘であるため、ダンジョンのマッピングなどに強さを発揮する。
ただし、ギルドの娘と言うことを感じさせない出来事でナッツに助けられ、以後ナッツを慕うようになる、ロリ属性の子。
で、次で出すとなるとアルマダ。勇者屋に住む店子だが、実は魔軍側のキャラだが、儀式のときに使う吟醸酒に手を出したり、毒物利用にボーナスがつく月間に失敗したりと典型的な失敗街道まっしぐらなキャラだが常に前向きなところが憎めない子。
……まぁ、こんなところだろうなぁ、あとは。

扇:つーか、そういうエピソードもあからさまにTRPGから来てるよなぁ。
そういった感じのパロディを漫画にしたいなら、ナッツにダイス持たせるぐらいの突っ走り方をすりゃいいし、漫画としてちゃんと描きたいなら、ストーリーもキャラも漫画のものにしろよって気がするんだが、全体的に中途半端な印象しかねーんだよな、これ。(毒大放出)
ま、俺の場合最大のネックは、ナッツが嫌いってことになるんだろうが。

鈴:言うねぇ。
まぁ、ナッツと一緒になってひねくれまくりの世をすねた親父……ってそういやこいつ、書いてないな。
レッドだっけ。

扇:ブルーじゃないのは確かだな。
典型的なスネちゃまなのだが、それに憧れを感じる時点で、ナッツって何も見てねーよな。よくいる、勝手に理想だけ作って暴走するタイプだ。しかも、腕力だけは世界最強なんで始末が悪い。

鈴:まぁねぇ。この程度のがかなり名の知れた、実力のある勇者なんだから、この原作を作った作者の底も知れたもんだろう(毒暴走)
ある意味、人間味を出したいのかもしれないが、キャラとして単なるスネちゃまな時点で人間味が砂粒ほどもないんだからどうしようもない(毒爆発)
シリアスを描こうとしないで、コメディのまま続けてくれれば、RPG風ファンタジーコメディとしておもしろかったんではないかなぁ。

扇:すくなし、シリアスやりたいならナッツが地雷を三回ぐらい踏まんと駄目だな。
その役回りを、単に運がなくて苦労人のユーシスに回してるあたり、作者が過保護なだけにしか見えん。
って、ここ十数行ぐらいしか吐いてねーぞ。(笑)

鈴:まぁな。私の使うマジックユーザーの得意技はクラウドキルとリバースグラビティだからな(爆)
……とは言え、ホント毒ばっかだなぁ。
木曜劇場では珍しいくらいの毒ではないかな。

扇:大丈夫、『ああっ女神さまっ』とか『ぼくタマ』とか、超人気作に対して思いっきり喧嘩売ってるレビューはいくらでもあるぞっ!
目録に×付いてたりするしな。

鈴:あー、あるなぁ。
ってか、×が当然のもんなんだからな仕方がなかろうて。
……って、またすごいこと言ってんなぁ。
ただでさえ、敵を作るレビュー書いてるのに(お互い)、これ以上敵を作る前に退散することにしようか。
……と言うわけで、今回の木曜劇場は毒を回収しないまま、さらばでございます。
さよ~なら~

扇:ほのぼのとした雰囲気が好き~、という方は多数いらっしゃるかと思いますが、この中途半端さは漫画舐めてねぇか?と思ったのでここまで毒を吐かせて頂きました。
異論反論は随時受け付けておりますが、多分、このスタンスだけは変わらないので御了承下さい。
では、後味悪いですが、今日はこのへんで……。

加納伝説2.5

2006-07-12 23:50:30 | ミステリ
さて、今やウチの顔となりつつあるこの方な第589回は、

タイトル:螺旋階段のアリス
著者:加納朋子
文庫名:文春文庫

であります。

お馴染み、加納朋子の連作短編ミステリです。
表題作を含む全七編を収録。
例によって一つずつ感想を書いていきます。

『螺旋階段のアリス』……転身退職者支援制度を利用して私立探偵となった仁木順平。だが、三日過ぎても依頼人は訪れず、事務所は閑古鳥が鳴いている状態だった。その時彼は、非常口の窓越しに四つの眼がこちらを見ていることに気づく。猫を抱えて現れた美少女は、名を市村安梨沙といった――。
探偵仁木と助手の安梨沙初登場編。先に逝った夫が妻に残した貸金庫の鍵を探すミステリだが、隠し場所そのものはすぐ解ると思う。金庫の中身がいかにも、「やったな(笑)」といった感じで、読後感は良好。また、安梨沙が仁木の事務所に押しかけてきた理由もちょっとだけ明らかにされる。

『裏窓のアリス』……向かいのビルに勤める女性が持ち込んできた奇妙な依頼。それは、自分が浮気をしていないことを証明して欲しいというものだった――。
いかにも裏がありそうな、そして実際に裏がある依頼の話。何だかんだ言って、海千山千の世界を知っている仁木の一面が見られるのが面白い。ところで仁木さん、夜の事務所で安梨沙に何をしたんですか? 奥さんの目を見ながら正直に答えなさい。(笑)

『中庭のアリス』……マダム・バイオレットは言った、行方不明のサクラを探して欲しいと。ようやくやって来た探偵らしい仕事に仁木は俄然張り切るが、直後にサクラが犬であることを知り、落胆する――。
赤の女王二連発の後に、今度は白の女王の登場。都合の悪いことはなかったことになる箱庭の主人の姿に、幸せ~って何だっけ? とか考えさせられてしまうが、それもまた人生であろう。本家読んでないと意味不明だな、この解説。

『地下室のアリス』……仁木の元勤務先、その地下三階に時々電話がかかってくるという。誰もいない筈の書庫に、なぜ? 気が進まないまま、仁木は依頼を受けるが――。
これは本家アリスを読んでいると簡単に想像がついてしまうかも知れない。もっとも、ヒントをことさらに隠そうとしないのは加納ミステリの特徴ではあるが。一筋縄ではいかない地下室の番人に、困った後輩と、なかなからしいキャラクターが出てくるのが楽しい。

『最上階のアリス』……研究一筋の先輩とそれを支える賢婦人。しかし、最近妻の行動が妙だという。愛すべき友人からの依頼に、これは同情ではないかと仁木は訝るが――。
殺人事件ばかりのミステリに対する皮肉、とも取れるオープニングに拍手。奥さんの方から先輩にプロポーズしたと想像できない仁木&同級生に、鈍い連中ばかりだなと失笑。そして、隠された真相を知って……げげっ。共依存の行き着く果てを描く、結構ブラックな短編。まぁ、これも愛ではあるが。

『子供部屋のアリス』……赤ん坊を預かって欲しいと言われ、一気に不機嫌になる仁木、ノリノリで受ける安梨沙。話を聞く内に、誰かの紹介でこの依頼が来たことが判明する。紹介人の名前を聞いて、仁木は絶句した――。
仁木と安梨沙、二人の赤子に対する反応の違いが楽しめる作品。『地下室~』と同じく、本家を知っていると簡単に真相は看破できるが、その後のドラマに力を入れているので問題はない。十五年後ぐらいに、また別の物語が生まれそうな逸品である。というか……この作者なら既に書いてる可能性もありそう。

『アリスのいない部屋』……シャイでロマンティストな中年・仁木は、妻との出会いを思い返していた。優しく控えめで気弱だった彼女、だが今はインタビュアーやカメラマンの前でも自然体でいられるシナリオライターだ。彼女はあっさりと仁木の変化を見抜き、安梨沙に何かあったのではないかと問う。
本書中、最強のキャラクター三田村茉莉花様(様必須)登場の巻。仁木はもちろんのこと、安梨沙すら脇役に追いやるパワーは凄まじい。なお、作品としては安梨沙の過去がほぼ完全に明らかになり、仁木との関係にも一つの決着を見る、トリらしいものに仕上がっている。ただし、さほどのサプライズはない。

前にも言ったかも知れないけど……加納朋子ってオヤジロマン全開ですね。(笑)
安梨沙の機知と愛らしさにメロメロになる仁木は、さしずめ本家アリスに登場する白の騎士といったところか。
ただ、よくある『へっぽこ探偵と賢い美人助手』だけで終わらせず、お互いに活躍の場を与え、結構重い物も抱えさせているのはさすが。

これ! といった突き抜けた印象はないけど、破綻はないし読後感も爽やかな良質の短編集です、オススメ。
もっとも、私個人の好みから言えばもうちょっと毒と死体が……って違うか。(爆)


☆クロスレビュー!☆
この記事はSENが書いたものです。
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