つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

とりあえず戦っとけ

2005-12-21 19:39:29 | ファンタジー(異世界)
さて、実はこの方二冊目な第386回は、

タイトル:Ⅸ(ノウェム)
著者:古橋秀之
文庫名:電撃文庫

であります。

以前、『ブラックロッド』を紹介させて頂いた方です。
『サムライ・レンズマン』とどっちにしよーかな~って考えたけど、本家レンズマンを好きかって言われると疑問形なのでこっち。

中国風の世界を舞台にしたバトル・ファンタジーです。
気孔みたいな武術を使う集団の秘蔵っ子であるヒロインと、鬼の右腕を持つため人里離れて暮らす少年が出会って、ヒロインを狙うやたら強そーな奴等が現れて、少年が少女を救い出すために敵の城に乗り込んで……まーそんな話です。(投げやり)

お約束なストーリーは置いといて、陰陽五行術と中国武術をくっつけたよーなバトルシーンですが――。

地味

元々、文字で書く戦闘シーンの迫力って絵より格段に劣るので、心理描写、イキな会話、過去の因縁、なんかで盛り上げてく必要があると思うのですよ。
でも、力任せの野生児とお堅い武闘派少女に動き以外を期待するのは厳しいものがあるんじゃないでしょうか……年齢無視してやたら悟ってたりしたら別だけど。
いわゆる達人同士の戦いもあるんですが特に印象なかったですね、そもそも、敵味方ともに斬られ役の顔キャラいないし。

あ、一人いました!
名前忘れましたが、ヒロインの叔父の友人みたいな感じの人で、モノローグで人格とか強さをやたら吹聴してくれるんだけどあっさり斬られて南無三。
その後、敵はおろか、味方の誰一人として彼のことを語る者なし、おーい……ヒロインの叔父貴さんよ、あんたの友人殺されてっぞ~。(爆)

ちなみに本作、最後の最後に事件の黒幕みたいな奴が出てきてさらっと終わります。
何かRPGの序盤だけ小説化したような感じ、でも続編はいらないかな。
この巻だけで裏の関係や先のストーリーが読めるような書き方してるし、この二人の絡みが見て見たい……って程、強烈な印象のキャラもいないので。

B級少年バトル漫画を文字で読みたい人にオススメです。(勧めてない)
あ、ヒロインはしっかり脱がされます――って、そこがツボなのか?



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ツイン・ピークスではない

2005-12-20 21:31:56 | SF(海外)
さて、二夜連続でSFの時点で誰が書いてるかバレバレな第385回は、

タイトル:マイノリティ・リポート
著者:フィリップ・K・ディック
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

ディックの短編集です。
映画化された表題作を含む七編を収録。
例によって、一つずつ感想を書いていきます。

『マイノリティ・リポート』……三人の予知能力者による予測で未然に犯罪を防ぐシステムを作り上げ、犯罪予防局長官となったアンダートン。ある日彼は、オートメーションで発行される容疑者カードの中に信じられない名前を見てしまう――。
短編ながら、状況が二転三転する忙しい話。ひたすら主人公が状況に巻き込まれいくタイプの話だが、ちゃんと推理はできるし、オチもまとまっていていい感じ。

『ジェイムズ・P・クロウ』……近未来、地球はロボットに支配されていた。彼らに比べて能力的に劣る人間達は専用の居住区に押し込められ、鬱屈した日々を送っていたが――。
人間に対するロボットの反乱、ではなく、ロボットに対する人間の反乱の話。タイトルネームであるクロウがロボットと対決する方法はいかにも人間らしく、またそれに対してぐうの音も出ないロボット達の姿も面白い。

『世界を我が手に』……太陽系には地球以外に居住可能な惑星がないと判明した時、人は世界球という玩具に手を染めた。主人公は、極小の世界の創造に熱中する人々に警鐘を鳴らすが――。
世界を作り上げた挙げ句、破壊してしまう人々の姿は非常に説得力がある。ラストは予想がつくものの、結構ブラックで私好み。

『水蜘蛛計画』……宇宙植民計画に行き詰まりを感じた未来人達は、タイム・マシンで過去に行き、予知能力者達の知恵を借りようと画策する――。
いわゆる内輪ネタ。未来では予知能力者と認識されているSF作家達が実名で登場する。主役は『大魔王作戦』のポール・アンダースン。個人的にこういう遊びは大っ嫌い。

『安定社会』……進歩の頂点を極め、そこからの衰退ではなく安定を選んだ未来世界。ロバート・ベントンは自分が発明していない筈の発明品について統制官から呼び出しを受ける――。
SF、に見えて実はファンタジーかも。一つ解けていない謎がある(一文字で表現できる存在を認めれば説明はつくけど、それは何か嫌)が、最後のオチが上手いので気にしない。

『火星潜入』……地球と火星は緊張状態にあった。そんな中、最後の地球行きの便が火星から飛び立つ。しかし、その中には三人のスパイが――。
嘘発見器による乗客尋問でも火星の都市を消滅させた犯人が見つからなかった理由、についてのアイディアは面白いが、ストーリー(特にオチ)はイマイチ。

『追憶売ります』……なぜか執拗に火星行きを望む男。しかし金銭的な余裕がないため、最新技術による仮想記憶の刷り込みで代用しようとする――。
イチオシ。『マイノリティ・リポート』と同じく二転三転する話だが、こちらの方が密度が濃い。次々と記憶が切り替わるため大変そうに見える主人公だが、実は周囲が一番苦労しているというのも笑える。映画『トータル・リコール』の原作らしいが、見てないので比較はできない。

全体的にレベルの高い短編集だと思います、素直にオススメ。
好みはあるかと思いますが、どの作品も破綻してないというのはかなりポイント高し。



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パロディはノリが命

2005-12-19 18:19:16 | SF(海外)
さて、SFが押され気味なので第384回は、

タイトル:銀河遊撃隊
著者:ハリィ・ハリスン
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

『レンズマン』で知られるE・E・スミス作品のパロディ……らしい。
イマイチ不安があるけど、まずは読んでみて考えます。

超一流のエンジニア・ジェリーと天才科学者のチャックはひょんなことから、あらゆるものを瞬間移送できる新物質を作り出してしまった。
しかし、計算は完璧な筈なのにどうしても大きな誤差が出る……真空中でないと正確な結果が出ないのだ。
大がかりな実験を行うため、ガールフレンドのサリーと共にジャンボ・ジェットに乗り込む二人、しかし予想外のアクシデントで地球外へ放り出されてしまい……。

感想を一言で言うと――

楽しいB級映画

でした、以上。

いや、ほんとにそれ以外何と言っていいか……。(笑)

序盤はやたらアメリカ賛美を繰り返すのが鼻につきます。
それが薄れるのは中盤以降でしょうか、ここらでようやく、すべては作者の皮肉であることが解ってきます。
自らの力と正義を信じて突っ走る主人公達ですが、そのマヌケっぷりは壮絶、つか悪の軍団なら大量虐殺してもいいやみたいなノリで戦ってたら実は……とか。

明らかに元ネタを皮肉ったと思われる大風呂敷も凄い。
強い奴が出たと思ったらもっと強い奴が出る、賢い奴が出たと思ったらもっと賢い奴が出る、木星に飛ばされたと思ったら次は別の星!
最初はただのジャンボ・ジェットだった筈の飛行機も改造を施されてワープするようになるし、長さ1マイルの戦艦だとか、最終兵器まで出る始末。

もう、いつボスコーン様が出てきたって驚きゃしません。
「お前の言葉は決定的でもなければ、確定的でもない~」
んで、手にレンズはめたジェリーがサイキックで戦い、竜の姿のレンズ男も現れ、銀河パトロール引き連れてひたすらドンパチ!

すいません、暴走しました。
笑えるのは確かですが……ストーリー全体を通して見ると破綻している感は否めません。
御都合主義としか言いようのない展開、主人公達のわけの解んない思考回路、頭が痛くなるラスト、正直疲れました――ま、全部作者の皮肉なんでしょうけど。

本作最大の収穫はヒロイズムに酔ってる男共に茶々を入れるサリーでしょうか。
悪(てことになってる)相手に対してかなり安直な正義感で戦いを挑むメンバーがようやく見出した逆転の一手を潰したり、自己犠牲に目覚めて変な意味で盛り上がるところに、自分はそんなの嫌、と言ってみたりとやりたい放題。
位置的には、いわゆるヒーロー物お定まりの『さらわれるお姫様役』なのですが、ひたすら泣き虫なとこを除くとそんな自覚は皆無です……いいヒロインだ。

うーん、古いSFにツッコミ入れるのが好きな人にはオススメ……かなぁ。
コメディSFなら『銀河おさわがせパラダイス』の方が私は好きです。



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これは比較的好きなんだけど

2005-12-18 12:32:28 | マンガ(少女漫画)
さて、暴風雪なんて天気予報で一面雪の第383回は、

タイトル:魔法騎士レイアース(1:全3巻、2:全3巻)
著者:CLAMP
出版社:講談社KCデラックス

であります。

溜まった本をえっこらえっこら段ボールに詰めてたら、こんなもんが出てきた(笑)
講談社の少女向けの雑誌「なかよし」で連載され、ほぼ原作に忠実なアニメも制作されたので知ってるひとは多いと思う。

ストーリーは、学校の社会見学で東京タワーを訪れていた3つの学校。
そんな3つの学校の生徒たちの中で、ひとりずつ、3人の少女たちに不思議な声が聞こえてくる。

「この世界を助けて……、伝説の魔法騎士たちよ」
その声とともに主人公の3人は東京タワーから忽然と消え、セフィーロという異世界へ連れられてしまう。
そこでクレフと言う名の見た目子供、実年齢745歳の魔導師に3人が連れてこられた事情を教えてもらい、3人は旅立つこととなる。

……と、すぐにでもRPGになりそうな展開だけど、確かゲームも出てたような気が……。

さておき、連載していた雑誌が雑誌ということもあって、ストーリー展開はとても素直。
RPGらしく、イベントをクリアして、レベルアップして、ラスボスを倒す……とこれだけで十二分にこのマンガは語れる。

とは言うものの、1部2部ともに3巻で終わっているのでRPGにするには短すぎる。
せめて1部5巻くらいで行ったなら、いろんなイベントを持ってこられるし、もっとおもしろくなったのではないかなぁとは思う。

でもまぁ、CLAMPのマンガでまともな完結作品はこのシリーズくらいだから、まだいいとは思うけどね。

あとはキャラものの色が強い。
主人公3人……男言葉で天真爛漫、単純一直線の獅堂光、見た目はかなり美人で冷たそうだがけっこう熱血なボケキャラの龍咲海、ぼけぼけしてるのがカモフラージュなかなりの策士の鳳凰寺風に始まり、3人の行く手を阻む敵連中、2部でセフィーロに進行してくる各国のキャラたち。

さすがに同人あがりだけあって、こういうキャラの人気が出そうなののツボは押さえてるよなぁ。
まぁ、だからどうしたと言われればそれまでなんだが……(笑)

でも久しぶりに読むと、そういやこんな話だったなぁ、と懐かしさがあっておもしろかったなぁ。
懐かしさがなければ……だろうけど(笑)



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優秀賞は厳しいのでは?

2005-12-17 12:12:26 | ファンタジー(現世界)
さて、久々に新人さんを手に取ったの第382回は、

タイトル:暗夜変 ピストル夜想曲
著者:青目京子
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

同文庫の第11回公募で優秀賞を受賞した作品。

舞台は大正時代。
東京浅草に、あらゆる闇の仕事を請け負う者たちが住む「なまくび横町」という場所があった。
そこには毒を扱う者、様々な武具を扱う者など、表の世界ではまっとうとは言えない職業の者たちが住んでいる。

その中で、特定の技を持たず、曖昧な望みを実現させる「闇掌」(あんしょう)と言う職業に就いている壇上映(はゆる)と言う女性に、ひとりの少女が仕事を依頼する。
醍醐寺日向子と名乗る少女は、婚約者であったはずの男が裏切り、別の家へ婿に行ったことに復讐するために、映に仕事を依頼したのだった。

そこから始まる同業者との戦いや、映の心の奥底にある暗く、けれど逃れられない忌まわしい過去、日向子を通じて得ることが出来た、闇に生きる者としては必要がないとされる幻想。

ホワイトハートはいちおうやや年齢層は高めだけど、ライトノベルのジャンルに入る文庫だとは思うけど、ストーリー的にはけっこう重い。
闇の世界に身を浸し、けれど日向子と言うきっかけを得て、ひとのあたたかさを感じ、信じることが出来た映の姿がしっかりと描かれていて、心理描写もそれなりに充実しているし、流れはいい。

展開も、あとがきで、もともと3つの話をひとつにした、と言うだけあってめまぐるしい。
流れがいいので、展開のめまぐるしさもいい要素になっているのではないかと思う。

キャラも映、日向子、映のトラウマの象徴である公爵家の夫人、同業者の男など、しっかりと描かれている。
設定上、闇の世界である「なまくび横町」と対立する帝都守護隊のキャラがどうかとは思うが、そこまで出張っているわけではないので、読むほうとしてはそこまで気にしなくていいと思う。
ステレオタイプのキャラだしね。

展開も悪くはないし、全体的なストーリーもしっかりしている。
ラストでこける作品はたくさんあるが、巻末の選考委員の寸評にあるとおり、ラストも腰砕けにならず、映と日向子の姿が納得できる終わり方になっている。

新人にしては、とてもしっかりとした、おもしろいと言える話になっているのではないかと思う。
デビュー作と言うことを加味しなくても、十二分に読ませてくれる話になっているのではないかと思う。

文章量も、表現力も十二分にある。
比喩表現は特筆するところはないし、ふつうだとは思うけど、だからと言って読みにくいかと言えばそうではない。

だから、これで優秀賞ってのはちょっと厳しすぎやしないかな、と思うよ。
ホワイトハートの大賞受賞作でさえ、私的にぜんっぜんダメなのはいままでかなりあったし、そうしたのと較べて、よっぽどかこっちのほうがおもしろい。

なんか久しぶりに次が期待できる新人ではないかな。
何気なく、「優秀賞受賞作!」って帯の文句で手に取ったけど、なかなかいいものを手にしたな。



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まだ違った雰囲気で

2005-12-16 21:06:34 | ミステリ
さて、またまた追加のこのひとの第381回は、

タイトル:掌の中の小鳥
著者:加納朋子
出版社:東京創元社 創元推理文庫

であります。

冬城圭介は銀座を歩いているときに、偶然大学時代の先輩に呼び止められ、成り行きのまま喫茶店に入り、他愛のない世間話をする。
だが、この先輩とは大学時代、いまは先輩の妻である女性との奇妙な三角関係にあった。
そんな圭介の苦い思い出とともに物語は始まる。

先輩と別れ、まったく乗り気でないパーティに出向いた圭介はそこで退屈そうにしている、とても目を惹く鮮やかな赤のワンピースを着た女性を見つける。
ここで圭介の一人称から、女性の一人称に代わり、その女性の苦い過去の話へと移り変わる。

圭介の作為的なきっかけとともに、女性とのコンタクトに成功し、退屈なパーティを抜けて別の店……エッグ・スタンドという店に入る。
そこでその女性……この物語のヒロインである穂村紗英の語る狂言誘拐の話を聞き、圭介は教えてもらえなかった紗英の名前を言い当てる。

そこから圭介と紗英、ふたりの物語が始まる。

まず、「ななつのこ」「魔法飛行」からまた雰囲気の違った作品になっている。
前の両作品は、日常の小さな謎で、その謎は見落としがちなほんとうにささやかなもので、作為が覗いていてもとてもやさしい、ほほえましいものだったりした。

けれど、本作の謎……ミステリはとても作為的。
最初に紗英の一人称で語られた話の中の謎もそうだし、初めてエッグ・スタンドに入り、語った狂言誘拐もそう。

また基本的に紗英に起こる出来事や、語る話に対して圭介が謎解きをすると言う構成はおなじ。
けれど、ミステリとしての謎解きは最後の最後で圭介ではなく、エッグ・スタンドでバーテンダーをしている女性に委ねられる。
その謎もまた圭介ではなく、女性が語るにふさわしいものになっている。

前の2作品より主人公の圭介、紗英の設定年齢がやや高いのも関係しているのだろうが、物語全体の雰囲気としてはしっとりした、落ち着いたものを感じさせる。

そんな中で、紗英というとても魅力的なキャラクターが違和感なく溶け込んでいる。
クールに装う圭介に対して、対照的な紗英のキャラクター。
自分をしっかりと持った、けれど無邪気で、女性らしいかわいらしさを備えている。
全体的に落ち着いた雰囲気の話なのに、こういうキャラがすんなりと描かれていると言う点はおもしろい。

謎解きという点では作為的なところが強いぶんだけ、やや読み進めるのがめんどくさいところはある。
また話によっては一人称である「私」がごちゃごちゃしているところがあって、いままでのような読みやすさがやや損なわれている。

しかし、全体的なストーリーとしては、各短編のつながり、ラストの圭介からバーテンダーの女性に移る謎解き、紗英と圭介のふたり、と十二分に読ませてくれる話になっていると思う。

それにしても、このひとの話はけっこうキャラに負うところが大きいのではないかと思う。
穏やかな、やさしい雰囲気を持つ「ななつのこ」「魔法飛行」の駒子。
ほんわりとした、いい雰囲気を持った「ささら さや」のサヤ。
そして本作の圭介と紗英。
こうしたキャラクターの持つ雰囲気がとてもすばらしく、魅力的だからこその作品の雰囲気ではないかな。

見習いたいところだね。

鉄ではなく鋼です

2005-12-15 14:33:42 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、久々に流行りモノの第380回は、

タイトル:鋼の錬金術師(1~12巻:以下続刊)
著者:荒川 弘
文庫名:ガンガンコミックス

であります。

扇:言葉の錬金術師! なSENでーっす。

鈴:言葉の練丹術師! なLINNで~すっ。

扇:中華な方々だったのか……。

鈴:とっぷり浸かってるがな、いろんなところで(笑)

扇:にしては墨攻の評価って低くなかった?

鈴:だってあれ、小説じゃないんだもん。
だからカタカナ文字とか使ってても気にならないし~(笑)

扇:気にしたから点数低めになったんだろうに……。
ま、中国四千年オタクはほっといて、久々に現代のヒット作でございます。
鋼の錬金術師! 略してハガレン! 読んだ事はなくても知ってる人が沢山いると思われるメジャー作品!
初の試みかも……

鈴:ま、SF三十年オタクはほっといて、確かにいまのヒット作は珍しいねぇ。
しかもアニメにもなり、さらに映画にまでなった……ってそういや『名探偵コナン』やったじゃねぇかっ!(笑)

扇:いや、あれもう惰性だし。(危険発言)
それでいいなら『美味しんぼ』もやったぞ。
って……それは置いといて。
割と重いテーマを扱った少年マンガです。

鈴:まぁでもいちおうあれは……な。終わらせようと思えばいつでも終わらせるこたできるから、けっこう好きでやってんのじゃないかえ?
さておき、このマンガの主人公たちの目的は、ひとを生き返らせる錬金術を行ったために失った兄の身体の一部、そして弟の身体全部ってんだから、まぁ重いわなぁ。
ま、とりあえず、キャラ紹介行っとくかね。

扇:おっけーポ○キー。
でも俺、兄貴嫌いだからそっち先書いて。(理不尽大王)

鈴:そういう理由で次に回すか……。
ま、いーや。えーっと、とりあえず主人公のエドワード・エルリック、通称江戸。
通り名がタイトルと同様の「鋼の錬金術師」
若くして国家錬金術師の資格を取った天才少年……なんだけど、チビ(笑)
基本的に実力はあるんだけど、けっこう負けっ放し。あまちゃんだし、お子様だし、……とは言え、少年マンガ的にはお約束なキャラ。

扇:んじゃ、真の主人公アルフォンス・エルリック、通称亜流。
エドの弟、苦労人、真面目、つか良い子過ぎ。(褒め言葉)
阿呆の兄貴のおかげで、鎧に魂を封じられた状態になってしまう……が、それでも明るさを失わない、非常に前向きな少年。
ちなみに生身時代からエドより喧嘩が強かった……出来杉君以上っすか?

鈴:じゃぁ次にエルリック兄弟の錬金術の師匠のイズミ・カーティス。
病弱なれど、未だに兄弟を手玉に取る腕っ節の強さと錬金術で、ふたりとも師匠と聞くと震えが走るほどのひと。
ただし、7巻の89ページに「てめー何者だ!!」
「主婦だッ!!!!!」
とのたまう気っぷのいいお姉さん(笑)
つか、お姉さんと言わないときっと殺される……(笑)

扇:ロイ・マスタング大佐、未来のエド。
焔の錬金術師の通り名を持つ一流の国家錬金術師。
大総統の地位を狙っているが、部下に甘々なので少なくとも長生きできるタイプではない……つか、死んだら死んだでストーリー的には困るが。
美人でキッツイ性格の副官がおり、多分というか確実にこいつとくっつく。

鈴:では、アレックス・ルイ・アームストロング、通称「豪腕の錬金術師」
漢気溢れる筋肉むきむきの少佐で、ケン○ロウなみに服がなくなるひと。
……いいわぁ、このキャラ(笑)
イズミの旦那さんと筋肉で意気投合したり、感動して泣いたり、もー漢気満載。
ビジュアルも額の真ん中しか髪がないってところがまたグッ

扇:つか、この漫画の人々って基本的に男気満載なんですけど……。
あとはぁ~、あ、ヒロインのウィンリィ・ロックベル。
筋金入りの機械マニアで、エドの右腕・左脚のメンテ担当。
従軍医師だった両親を患者に殺されたという暗い過去を持つが、エルリック兄弟のおかげで精神の安定を得たようだ。
ちなみに、マッドが付くタイプの技師なのはお約束。(笑)

鈴:お約束だねぇ。
しかし、これ、アニメになったんだが、アニメのほうがかなーり出来がよくて、うまい具合にまとめてくれてたから、マンガのほうをどうするかは気になるなぁ。

扇:つか、今のところアニメと同じ展開だからなぁ……。
ラストが同じになるとは思えないが、どうまとめるんだろうねぇ。
ま、それは置いといても非常に丁寧な作品です。(珍しく素直な讃辞)
絵も安定してますし巻数もそれなりなので、今から読んでもいいんじゃないかと思いますね……少なくともただ戦ってりゃいいっていう少年漫画とは違います。
というわけで今日はこれまで、サーヨウナァラァ~

鈴:そうね。
久々に少年マンガとしては素直に評価できる話ではあるわなぁ。
まだ12巻までしか出てないし、大人買いするには許容範囲とは思われ(笑)
と言うわけで、今日はこの辺でさーようなぁらぁ~

ラグトーリンの罠

2005-12-14 23:20:49 | マンガ(少女漫画)
さて、まさにSF萬画と呼ぶに相応しい第379回は、

タイトル:銀の三角
著者:萩尾望都
文庫名:白泉社文庫

であります。



【ラグトーリンの真似をするノッペラ星人】


少女漫画界の巨星、萩尾望都の本格SF。
十年ぐらい前、『スター・レッド』が大ハズレだったのでしばらく第二期の萩尾作品は読むまい……と思っていた時に出会ったのがコレ。



かつて、銀の三角と呼ばれる星があった。
星の住人達は、六年に一度訪れる朝にだけ子供を作ったという。
その時の子供の一人が自分なのだと、ラグトーリンは言った。

マーリーは友人にもらったテープの歌手・エロキュスに興味を持った。
中央都市系に属さない星系でのコンサート、異常なまでの熱気……。
エロキュスは言った、かつて見た幻影……黒髪の吟遊詩人と黄金の瞳の少年、その時聞こえた音楽が自分を変えたのだと。

調査の結果マーリーは、その時曲を奏でていたのがラグトーリンであること、金の瞳の少年が既に滅びた種である筈の銀の三角人であることを知る。
銀の三角、三万年前の星間戦争、蘇った音楽、マーリーは断片的な情報を掘り起こし、ついにラグトーリンの居場所を突き止めた。
マーリーの、そして、ラグトーリンの真の目的は何か? 二人の出会いとともに、時空を駈け巡る壮大な物語の幕が上がる。



読了後、

やはり萩尾は凄い!

と吠えました、マジで。

一言で言えば、謎の美女(この表現が本当にしっくりくる)ラグトーリンと、何度やられても復活する(死んでも再生される)マーリーの時を越えた追っかけっこ。
しかし、彼我の戦力差は歴然……何せラグトーリンは自在に時を飛び回り、邪魔者がいれば星に地殻変動を起こしたりもする半超越者。
マーリー君も予知能力を使ったり、ピンチの時だけ発動する時空移動能力なぞも持ってたりしますが、ラグトーリンに比べれば蟻レベル。

この二人何度か接触しますが、当然の如くマーリー君押されっぱなし。
もっとも、これで最後までずっとラグトーリンの一人勝ちだったりするとストーリーが成り立たないのは自明の理です。
マーリーにはマーリーの目的があるように、ラグトーリンにはラグトーリンの目的があり、それが足枷になっています。

ちなみに、ラグトーリンは非常にビジネスライクなキャラです。
時を越えるのも仕事の内、惑星一個破壊するのも仕事の内、仕事が上手くまとまればエロキュスを××に×××ことも問題ナシ。
まーその癖、気に入ったオトコにはしっかりコナかけるあたり、味のある方ではありますが。(笑)

二人の会話もさることながら、ストーリー構成も見事。
時間が前後しつつ、多くの謎や人物同士の関係が解き明かされていく過程は快感としか言いようがない。
こういう情報が錯綜するタイプの作品はラストが凄く難しいのですが、ほぼ完璧な仕上げをしてくれてます……何度でも言おう!

やっぱり萩尾は凄ェ!

五重丸のオススメ。
映画化……はしてほしくないな、二時間程度じゃ多分無理。



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読み終わると……

2005-12-13 20:25:59 | 古典
さて、ホラーカテゴリのような気もする第378回は、

タイトル:新編 百物語
編・訳者:志村有弘
出版社:河出文庫

であります。

『今昔物語集』『宇治拾遺物語』『夜窓鬼談』『耳嚢』等の古典から百編の怪談話を抜き出し、現代語訳した本。
原文を読まないと気が済まない古典マニアならともかく、私のように気軽に読みたいと思っている方には打って付けです。

全八章構成で、各章は基本的に事件の中核を成すモノ毎にまとめられています。
順に挙げると、『鬼篇』『魔物・妖怪篇』『幽鬼篇』『予兆怪奇篇』『死霊・悪霊篇』『人魂篇』『動物怪異篇』『怪談・奇談篇』。
章タイトルだけでゾクゾクしそうですね。
(※私は妖怪フェチでも怪談マニアでもありません)

退治話あり、仏教説話あり、理不尽話あり、オチのない話ありと内容も多彩。
基本的にバッドエンドが多い気がしますが、怪談ってそういうものですよね。(笑)
一つの作品からではなく、時代の異なる複数の作品から話を抜き出しているので、風俗や感覚の変化を楽しむこともできます。

一話の長さは全体平均二頁、短い話だと十行ちょっと、一番長い話でも十頁ぐらいなので、いつでもさらっと読めるのは有り難いところ。
個人的には一夜で全話読み切る耐久レースをオススメしますが、似たような話が連続している場合もあるので気合いがない時はちょっと辛いかも知れません。

怪談話が好きな人にはかなりオススメ。
読み終わった後で怪異が発生しても責任は取れませんが……。

天使?

2005-12-12 23:15:19 | ミステリ
さて、久々に普通のミステリな第377回は、

タイトル:天使の屍
著者:貫井徳郎
出版社:角川文庫

であります。

お初の作家さんです。
プロットからして、社会派ミステリーといった感じの作品。

中学二年生の息子・優馬の様子がどこかおかしい。
思春期だから、と一言で済ませてしまうほど無関心ではいられない青木は、妻と共に息子の真意を探ろうとするが徒労に終わる。
そしてその機会は永遠に失われた……コンビニに行ってくると出かけた後、優馬は八階建てのビルの屋上から転落死した。

自殺の線が濃厚だとされても、青木は納得がいかなかった。
彼は次々と優馬の友人に会い、自身の知り得ぬ別社会――子供の世界へと足を踏み入れていく。
だが、誰一人として息子が自殺した明確な理由を明かしてくれる者はいなかった、そしてまた一人……。

何と言うか……火サスっぽいミステリーです。
最初の犠牲者となった少年の父親が自分の子供が自殺するはずがないと信じて行動する展開といい、捜査が実を結ばす連鎖自殺が起こる点といい……。
渡瀬恒彦がやったら凄く似合いそうだなぁ、とか思いながら読んでました、ってレビューになってないな。(爆)

事件そのものよりも、父親らしくありたいと願う青木の心理描写がメインかな。
青木と学生の対話が多いのですが、大人が子供の世界を覗くために学生を出してるのであって、彼らを描くのが目的ではないといった感じでした。
ただ、そこまで必死に原因探しをする理由が息子の出生にある点は上手いと思います、ラストもそこにつなげてあって綺麗にまとまってました。

ちょっと気になったのは、女性の書き方の下手さ加減。
とにかく面白味がない、というかほとんど付属品ですね。
もともと女性を描くのが下手なのか、物語の性格上そうなっているのか……でも、この話のキーの一つである少女の聖女っぷりを見ると前者のような気が。

謎解き、すなわち少年達の自殺の原因に納得できるかがネック。
ミステリとしての筋は通ってるとは思いますが、私的には疑問形です。

P・S
岡嶋二人『チョコレートゲーム』を読んで、さらに評価が下がりました。
正直、貫井徳郎の作品は二度と読む気がしません――つーかとっとと消えてしまえ。