つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ジャンルは別にどうでもいいんじゃない?

2005-11-26 15:25:51 | ミステリ
さて、前よりはこっちのほうだなの第361回は、

タイトル:ななつのこ
著者:加納朋子
出版社:東京創元社 創元推理文庫

であります。

以前、この作家さん「ささら さや」というのを読んでみて、ラストでこけたとは言え、作品の雰囲気がよかったので2冊目をば。
どうやらこれがデビュー作で、第3回鮎川哲也賞を受賞した作品と言うことになっている。

「ささら さや」のときにも思ったけど、ミステリというジャンルでくくらなくてもいいんじゃないかなぁ、と思うくらい、いい雰囲気を持った作品だと思う。

構成としては短編連作で、主人公の一人称で話が進んでいく。
中心となるのは、本が大好きな短大生の主人公 駒子が出会った「ななつのこ」という本と、その著者である佐伯綾乃の文通のようなものと、この「ななつのこ」に出てくる「はやて」と「あやめさん」

日常の中での小さな謎に出会う駒子とそれを解き明かす佐伯綾乃のミステリ。
「ななつのこ」の中で出てくる小さな謎に出会うはやてと、それを解き明かすあやめさんのミステリ。
基本構成は、どちらも謎に対して、佐伯綾乃、あやめさんのふたりが答えを語るというもの。
最後のほうで謎解きをしておしまい、と言う構成はミステリ好きならどうなんかなぁ、と思ったりもしたけど、別段ミステリが好きと言うわけではないので、個人的には気にならない。

それよりも、やっぱり雰囲気がいい。
この雰囲気は主人公の駒子のキャラクターによるところ、それとはやてとあやめさんのふたりの場面によるところが大きいだろう。
本好きで、空想家で、微妙に発想がずれている駒子の描写や、はやてに謎解きをするあやめさんの姿など、ゆぅるりとした優しい雰囲気が随所に見られる。

こういうのを見ると、ミステリってジャンルと思わないで読むほうがいいんじゃないかなぁ、と思ったりする。
ま、ミステリなんてほとんど読まないから、こういうのも他にもあるのかもしれないけど。

ラストも「ささら さや」よりもうまく落としてくれたし、駒子の台詞もいい感じ。
最後にまた佐伯綾乃=……のひとに宛てた手紙のような形で書かれた部分も、やや間延びした感がないわけではないけれど、許容範囲。

分量も全7話で、1話はだいたい40~50ページくらいで読みやすいし、ミステリという言葉から受ける殺人だの何だのと言ったどろどろしたのはないので、ミステリはちょっと……と言うひとでも十分楽しめるはず。

総評として、これはけっこうオススメできる作品と言っていいだろうね。