つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

優秀賞は厳しいのでは?

2005-12-17 12:12:26 | ファンタジー(現世界)
さて、久々に新人さんを手に取ったの第382回は、

タイトル:暗夜変 ピストル夜想曲
著者:青目京子
出版社:講談社X文庫ホワイトハート

であります。

同文庫の第11回公募で優秀賞を受賞した作品。

舞台は大正時代。
東京浅草に、あらゆる闇の仕事を請け負う者たちが住む「なまくび横町」という場所があった。
そこには毒を扱う者、様々な武具を扱う者など、表の世界ではまっとうとは言えない職業の者たちが住んでいる。

その中で、特定の技を持たず、曖昧な望みを実現させる「闇掌」(あんしょう)と言う職業に就いている壇上映(はゆる)と言う女性に、ひとりの少女が仕事を依頼する。
醍醐寺日向子と名乗る少女は、婚約者であったはずの男が裏切り、別の家へ婿に行ったことに復讐するために、映に仕事を依頼したのだった。

そこから始まる同業者との戦いや、映の心の奥底にある暗く、けれど逃れられない忌まわしい過去、日向子を通じて得ることが出来た、闇に生きる者としては必要がないとされる幻想。

ホワイトハートはいちおうやや年齢層は高めだけど、ライトノベルのジャンルに入る文庫だとは思うけど、ストーリー的にはけっこう重い。
闇の世界に身を浸し、けれど日向子と言うきっかけを得て、ひとのあたたかさを感じ、信じることが出来た映の姿がしっかりと描かれていて、心理描写もそれなりに充実しているし、流れはいい。

展開も、あとがきで、もともと3つの話をひとつにした、と言うだけあってめまぐるしい。
流れがいいので、展開のめまぐるしさもいい要素になっているのではないかと思う。

キャラも映、日向子、映のトラウマの象徴である公爵家の夫人、同業者の男など、しっかりと描かれている。
設定上、闇の世界である「なまくび横町」と対立する帝都守護隊のキャラがどうかとは思うが、そこまで出張っているわけではないので、読むほうとしてはそこまで気にしなくていいと思う。
ステレオタイプのキャラだしね。

展開も悪くはないし、全体的なストーリーもしっかりしている。
ラストでこける作品はたくさんあるが、巻末の選考委員の寸評にあるとおり、ラストも腰砕けにならず、映と日向子の姿が納得できる終わり方になっている。

新人にしては、とてもしっかりとした、おもしろいと言える話になっているのではないかと思う。
デビュー作と言うことを加味しなくても、十二分に読ませてくれる話になっているのではないかと思う。

文章量も、表現力も十二分にある。
比喩表現は特筆するところはないし、ふつうだとは思うけど、だからと言って読みにくいかと言えばそうではない。

だから、これで優秀賞ってのはちょっと厳しすぎやしないかな、と思うよ。
ホワイトハートの大賞受賞作でさえ、私的にぜんっぜんダメなのはいままでかなりあったし、そうしたのと較べて、よっぽどかこっちのほうがおもしろい。

なんか久しぶりに次が期待できる新人ではないかな。
何気なく、「優秀賞受賞作!」って帯の文句で手に取ったけど、なかなかいいものを手にしたな。



――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『青目京子』のまとめページへ
 ◇ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
 ◆ 『つれづれ総合案内所』へ


最新の画像もっと見る