つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

神の目を持つ女……?

2005-12-26 10:13:47 | SF(海外)
さて、先週に続いてこの方な第391回は、

タイトル:シビュラの目
著者:フィリップ・K・ディック
文庫名:ハヤカワ文庫

であります。

再び、ディックの短編集です。
前回の『マイノリティ・リポート』はかなり好みだったのですが、さてこちらは……。
例によって一つずつ感想を書いていきます。

『待機員』……コンピューター・ユニセファロン40Dが大統領を務める合衆国で、マックスはトラブル時に臨時で権限を受け継ぐ待機員に選ばれた。死ぬまで待ち続けるだけの退屈な仕事の筈だったが、ユニセファロンの故障で本物の大統領として権力を握ることになる――。
もしこんな世界が存在したとしたら、当然起こるであろう混乱を描いた話。マックスの変貌していく過程は非常に説得力がある。

『ラグランド・パークをどうする?』……『待機員』の続編。ちょっとカラーが変わり、サイオニック能力をキーにした政戦が描かれる。個人的にはイマイチ。

『宇宙の死者』……財界の巨人ルイ・セラピスが死んだ。片腕のジョニーは遺言に従って遺体を霊安所へと送るが、原因不明のトラブルにより、ルイを復活させることはできなかった。そのしばらく後、奇妙な現象が――。
死者を条件付きで蘇らせることができる世界の物語。怪現象の謎は、穴がすぐに見つかるので簡単に解ける。しかも、かなり長い割には事件そのものは解決していなかったりする。何とも言えない作品だが、半生者のアイディアは好き。

『聖なる争い』……ジュナックスB軍事計画コンピューターがレッド・アラートを発令した。担当者達はジュナックスが読み込んでいる最中だったテープを切ることで、一時的に機能を停止させるが、データの内容を見て愕然としてしまう。なぜ、警報は発令されたのか? 修理待機員スタフォードが謎に挑む――。
ゴシック体で印字されたジュナックスの台詞はインパクト大。スタフォードの謎解きも面白い。ただ、あのオチはちょっと……。

『カンタータ百四十番』……『ラグランド・パークをどうする?』の続編。様々なSFファクターが存在する未来社会での大統領選挙戦を描いた作品。筋自体は通っているものの、場面と人物がごちゃごちゃし過ぎて読みづらいことこの上ない。ドラマにもあまり魅力を感じなかった。

『シビュラの目』……作者の戯言しか聞こえてこない劣悪な作品。

うーん……これ! というのもないし、嫌いな作品は多いし、ちょっと私には合いませんでした。



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