つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

作家はあの格好じゃないと駄目らしい

2005-10-31 20:02:01 | ミステリ
さて、大正ロマンだけどはいからさんではない第335回は、

タイトル:平井骸惚此中ニ有リ
著者:田代裕彦
文庫名:富士見ミステリー文庫

であります。

時は大正末期。
お調子者でうっかり者の帝大生、河上太一君は一大決心を致しました。
探偵小説家平井骸骨氏に弟子入りを頼み込むことにしたのです。

しかし、当の骸惚先生はつれない反応。
優しい奥様の手引きで居候することはできましたが、娘の涼様は出会いが最悪だったためか渋い顔。
書生というか、小間使いというか、当の小説の手ほどきも受けられぬまま、太一君は今日もお茶を入れておりました。

そんなある日、先生の友人が自殺したとの連絡が入ります。
通夜から戻ってきた先生は一言、これは自殺じゃない、とおっしゃいました。
事件の全貌を知りながら、そのまま自殺で済ませておこうとする先生に憤慨した太一君、弟子入りをかけて事件解決に乗り出しますが……。

非常に変わった文体で書かれた作品です。
一言で言えば、無声映画の弁士調ってとこでしょうか?
最初は引っかかりますが、慣れるとすらすら読めます。

文体を除くと、基本的には普通のキャラ小説です。
気むずかし屋に見えて妙なとこで優しい骸骨先生とか。
優しそうに見えて、鋭いツッコミで旦那をシメる奥様とか。
最初は反発してたのにコロリと落ちる上の娘、何の前フリもなく主人公を兄様と呼んでなつく下の娘、鼻っ柱の強い女編集者……等々。
王道全開ですね。(笑)

ただ、そういう王道なキャラクター達と作品の雰囲気が非常に合っているので、安心して読める作品だと思います。
謎解きとか、犯人当てとかには期待しないで、いわゆる『想像上の大正時代』を舞台にしたコメディ芝居を楽しんで下さい。
最初から最後までお約束で綺麗にまとめてくれます、上手い。

堅苦しいミステリが苦手な方にオススメ。
ライトノベルらしいライトノベルで当たりを引いたのは久々かも。


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