つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

意外と早かったな

2012-04-07 13:36:19 | ミステリ
さて、予約数も少なかったしねの第1005回は、

タイトル:万能鑑定士Qの事件簿Ⅱ
著者:松岡圭祐
出版社:角川書店 角川文庫(初版:'10)

であります。

1巻を忘れないうちに借りれればいいなー、なんて思っていたけど、意外と早く返却されてきたみたいで、あんまり間を置かずに借りることができた。
1巻で引きに引いて終わってくれて期待させてくれた本書ですが、はてさてどうなることやら……。

ストーリーは、

『怪しげな輸入業者の犯行を未然に防いだ鑑定士の莉子と、週刊角川の記者小笠原は、逮捕された輸入業者が取り調べを受けている牛込警察署へと向かっていた。
しかし、そこで待っていたのは思いがけない出来事だった。
輸入業者の犯行は、実は警視庁公安部の行ったもので、極秘裏に進めていた偽札調査のための被疑者確保を目的としたものだった。
被疑者は国立印刷局の工芸官藤堂。紙幣の原盤の絵を描く男で、輸入業者の犯行時に、莉子と小笠原も見かけた男だった。

極秘裏に進めていた偽札調査――だが、それは犯人と目される人物がテレビ局や新聞社、雑誌社に送られた犯行声明とも取れるものによって日本中に知られることとなる。
まったく同じ番号の1万円札。科学鑑定の結果も、偽札とは判断できないほど精巧に作られた代物だった。
週刊角川にも同じものが送られてきており、それを鑑定した莉子も、紙幣に施された偽造防止技術のすべてが再現されている同じ番号の1万円札に、どちらが偽札なのか、判断できなかった。

未然に防いだはずの事件が、実はもっと大きな事件を解決するための糸口だった――責任を感じる莉子だったが、偽札報道は日本どころか、世界を駆け巡り、国際的な円の信用は暴落、国内ではハイパーインフレを引き起こす結果になっていた。
だが、莉子は犯行声明の文書からそれが沖縄で書かれたものであることを知り、故郷である波照間島へと向かう。
波照間島で知った小さな手がかりをもとに、偽札の真相を探る莉子だったが、得られた情報から辿り着いたのは空振りばかり。
馴染みのものと言えば、力士シールの存在だけだった。

一方、小笠原もハイパーインフレの影響を受けて休刊した週刊角川の記者として、何かの手がかりがないかを独自に調査して、ひとりの怪しい人物に辿り着く。
しかし、それも勘違いで挙げ句の果てにはストーカー容疑で警察に捕まってしまう。

何も得られなかった失意のうちに東京へ戻ってきた莉子は――しかし、意外なところから偽札の真相を突き止める。』

引きに引いて、1巻の解説でも煽りに煽ってくれた2巻。
どんなトリックでハイパーインフレを解決してくれるのか、かなーり期待して読んでいたのだけど……。

はっきり言って、かなり拍子抜け……。

偽札で円の国際的信用がなくなった世界、ハイパーインフレで混乱する日本……話がかなりでかくなっているので、さぞかし大々的なトリックでもあるのかと思いきや、あまりに静かなトリックとその解説にがっくり来たのが正直なところ。

とは言え、ストーリーの作りは問題ない。
1巻で出てきた力士シールの存在と意味や、工芸官藤堂のまるで逃亡者のような行動、偽札のトリックまで、よく調べ、よく練られた作品だと思うし、2冊に渡って散りばめられた伏線をすべて回収して終わっている。
1巻解説であったけど、鑑定士を名乗る前に教導者として出てきた瀬戸内が重要な役回りをする、と言うのもそのとおりで、かなり重要な立ち位置にいて、意外性もある。
2巻の後半に至るまで、解決の糸口がまったく見えず、莉子の行動がほとんど空振りだったりするので、どう収拾つけてくれるのか、心配になったところもあったけど、ストーリー展開についてはまずくない。

ただ、ちょっと気になるのが小笠原のキャラ。
莉子が東京を離れ、波照間島を拠点に調査をしている間に記者魂を発揮して独自に調査をするのだが、これが1巻で見る小笠原のキャラからはまったく感じられないこと。
こいつってこんなに熱いキャラだったか? って感じだし、どちらかと言えば莉子に淡い好意を抱く若者と言った印象だっただけに、これには違和感がある。
でもまぁ、逆に言えば、気になるところと言えばそれくらい。

ストーリー展開に難はないし、小笠原のキャラに引っかかるところはあるけど、他のキャラは行動原理に一貫性があってしっかりしている。
偽札騒動の犯人にも意外性があるし、力士シールとも絡んでいてミステリとしてはよく練られているだろうと思う。

ただ……。
やっぱり1巻で期待させすぎじゃないかなぁ、ってのが……ねぇ……。
総じてストーリーもキャラも悪くないのだけど、オチにがっくり来たのだけは残念。
1巻読んで、解説も読んで、煽られていただけに、静かな着地点に期待外れの印象があるのはしょうがないと思う。
これさえなければ、文句なしに良品をつけられるんだけど……。

とは言え、過度な期待をせずに1巻2巻と読んでいけば、ミステリとしての出来はかなりいいのではないかと思う。
死人が出るわけでもないし、こういうところは好印象だし、客観的に見れば、良品と言ってもいいだろう。
ただ、3巻読むかなぁ……。
また巻末に煽り文句なんかがついてるけど、2巻のオチの拍子抜けを考えるとあんまり期待できないからなぁ。
そのうち、気が向いたら借りて読むかもしれないけど、今の時点では読みます、とは言えないなぁ。


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