つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

カルタ舞う

2006-08-23 23:04:24 | ファンタジー(異世界)
さて、実は最終巻まだ出ていない第631回は、

タイトル:〈骨牌使い〉フォーチュン・テラーの鏡II
著者:五代ゆう
文庫名:富士見ファンタジア文庫

であります。

先週紹介した、〈骨牌使い〉の鏡Iの第二巻です。
前巻は地固めという印象が強かったのですが、さて……こちらは?



ロナーとの予期せぬ別れ、異民族との接触、〈異言〉バルバロイの襲撃――。
運命に翻弄された末、アトリは仲間と共に北の王国ハイランドを訪れた。
彼女はそこで、〈異言〉達に狙われる理由と、自分に課せられた使命を知ることになる。

かつて大地を支配していた旧ハイランドの流れを汲み、〈詞〉の均衡を保つことを存在意義とする王国は危機に瀕していた。
〈真なる骨牌〉をその身に宿す十二人の〈骨牌〉の一人であり、〈詞〉そのものをまとめる役割を担うハイランド王が死期を迎えつつあったのだ。
王はアトリを歓待し、もっとも古き〈樹木〉と引き合わせるが――。



連続物なので粗筋が書き辛いです……。(泣)

二巻に入り、ようやく光と闇の対立構造がはっきりしてきました。
台風の目として双方から猛烈なオファーを受けていたアトリの立ち位置も明確になり、後は全面対決を待つばかり……にしては展開がゆっくりだけど。
謎の少年ロナーの微妙な立場が明らかになったり、前巻で怪しい動きをしていた人々の正体が判明したりと、ネタ消化に追われている印象が強いから、かも。

主人公のアトリですが、本巻ではお勉強に徹しています。
世界のお勉強、歴史のお勉強、骨牌のお勉強、人間関係のお勉強等を経て、ロナーに口答えできるぐらいまでには成長しました。
もっとも、その後の恋のお勉強(笑ってはいけない)に関しては……お前らいつの間にそこまで接近したんだ? と言いたくなるぐらい不自然でしたが。(爆)

一方、マクロな話では、お高くとまってるハイランドの連中の内輪揉めが描かれます。
正直、アトリがこいつらに味方する理由って弱いよなぁ……と思ってたら、前巻から引き続き登場のファウナがしっかりその方面に切り込んでくれました、偉い。
例によって物語は淡々と進みますが、さすがに終盤では結構激しい展開が見られ、くすぶっていた火種が一気に燃え上がるように破局が訪れます。

あ、ちなみに、この話はバトル物ではないのでそっちの方は期待しないで下さい。
骨牌を使ったド派手な魔法合戦とか、血で血を洗う剣の戦いとか一切なし。
戦闘が好きな方からすると地味かも知れませんが、個人的にこういう話は好きです。

一巻と同じく、作りはしっかりしています。オススメ。
前回もちょっと書いたけど、〈詞〉の設定といい、ハイランドの立場といい、やっぱりこの作品、『ゲド戦記』の影響が濃いと思うのは私だけでしょうか?
このまま行くと、最後にアトリが『影との戦い』エンドを迎えたり、ロナーと一緒に『壊れた腕輪』ごっこやっちゃったりするんだろうか……それはそれで面白そうだけど。(笑)


2006/11/06追記
最終巻出ました! レビューはこちら


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