さて、3冊分のオレの時間返してくれの第710回は、
タイトル:オルディコスの三使徒(1巻「妖魔の爪」、2巻「紅蓮の絆」、3巻「巨人の春」)
著者:菅浩江
出版社:角川書店 角川スニーカー文庫(初版:H4、H6、H7)
であります。
えー、ほんとうは、この3冊でノルマ3日分をこなしてやろうと姑息なことを考えていたら……そうは問屋が卸さない、らしい。
その理由は後ほどと言うことで。
王家から下賜されたラウラという宝珠に祈りを捧げることで、生活を営む世界。
ソテと言う寒村で過去の事故や容姿から不遇を託っていた少女ブラウリカは、娯楽の少ない村を訪れたビンダカイク技芸団が座を開くその日、ふたりの旅の男に出会う。
技芸団の来訪を聞いて警戒するふたりの男に疑問を抱くブラウリカだったが、その警戒は、技芸団を隠れ蓑に世を乱すマヌダハルの手先。その力で村人を惑わし、ブラウリカを除いてすべてが石と化したソテ村からブラウリカはふたりの男……オルディコスの使徒と名乗る香師イシュラーマ、夢師タグロットとともに村を離れることになる。
あともうひとりの使徒、楽師を探すふたりに連れられ、旅をすることとなったブラウリカは、兄のもとで起きたマヌダハルの腹心との戦いや、闇に染まりかけた少年との出会いを経て、ふたりが探す「光の楽師」として目覚め、オルディコスの三使徒として、マヌダハルとの戦いに挑む。
……と、こんな感じで書いてると、いかにもなヒロイックファンタジーに見えるが、ストーリーは善悪の二元論では語れない「神」をテーマにして、SFテイストもちょっと入れた物語。
1巻は、ブラウリカが「光の楽師」として目覚める物語で、当然主人公でヒロインのブラウリカが主体。
ここでは、ブラウリカの生い立ち、境遇などから光の楽師として目覚めるまでの心の動きなどがきちんと描かれ、好感が持てる。
また、3巻完結のため、伏線もきっちりと作り、この時点で勧善懲悪の二元論ではない匂いを感じさせるところもいい。
2巻は3人揃ってからのマヌダハル討伐に向けた展開だが、弱まったオルディコス神の力や怠惰な王家、貴族への不信などから、マヌダハル側の巧みな煽動などを経て、完結編へのつなぎ。
完結編となる3巻は、テーマに沿った展開とこういうヒロイックファンタジーには珍しい大団円が待っている。
で、なぜこれが1日1冊にならなかったかと言うと……テーマの扱いを大きくしすぎて、物語やキャラの扱いが薄くなったため、と言えるだろう。
おそらく、だが、設定上、神……オルディコスとマヌダハルの対立軸を勧善懲悪にならずに理屈をこねくり回そうとした結果、3巻でまとめるために汲々としてしまった、と言ったところだろうか。
特に顕著なのが3巻。
2巻のラストの出来事で陥ってしまったブラウリカの現状や、イシュラーマの思いなど、テーマを語るためにこうしたキャラの心の動きが十分に語られないため唐突な感が否めない。
また、十分でないことはキャラそのものやバックボーンを希薄にさせ、人間味を感じさせない要因ともなる。三使徒のキャラの個性だけははっきりしているだけに、余計にその個性だけが上っ滑りしてる感じがするんだよねぇ。
「神」というテーマを持ってくるのはいいが、それによって物語やキャラ(人間)というものが、理屈をこねくり回すための人形になっていては意味がない。
もし、汲々としてせず、まとめたんだとしても、テーマとか、解説とかに埋もれてキャラが人形や道具にしかなってない小説ってのは嫌いなんだよね。
まぁ、物語としてはオチはつけてくれているが、他にも「その伏線でその展開かえ?」とか、「これ、ホントに理屈通ってんのか?」とか、まぁ……ぼちぼち首を傾げざるを得ないところもあったりするわけで……。
古い作品だし、いまの作風から見れば、だいぶ違っているところがあるからなぁ、と心の中でフォローを入れたとしても、このシリーズは落第。
長くなってもいいから、もっときっちりテーマもキャラも描いてほしい、と言うのが正直なとこかな。
タイトル:オルディコスの三使徒(1巻「妖魔の爪」、2巻「紅蓮の絆」、3巻「巨人の春」)
著者:菅浩江
出版社:角川書店 角川スニーカー文庫(初版:H4、H6、H7)
であります。
えー、ほんとうは、この3冊でノルマ3日分をこなしてやろうと姑息なことを考えていたら……そうは問屋が卸さない、らしい。
その理由は後ほどと言うことで。
王家から下賜されたラウラという宝珠に祈りを捧げることで、生活を営む世界。
ソテと言う寒村で過去の事故や容姿から不遇を託っていた少女ブラウリカは、娯楽の少ない村を訪れたビンダカイク技芸団が座を開くその日、ふたりの旅の男に出会う。
技芸団の来訪を聞いて警戒するふたりの男に疑問を抱くブラウリカだったが、その警戒は、技芸団を隠れ蓑に世を乱すマヌダハルの手先。その力で村人を惑わし、ブラウリカを除いてすべてが石と化したソテ村からブラウリカはふたりの男……オルディコスの使徒と名乗る香師イシュラーマ、夢師タグロットとともに村を離れることになる。
あともうひとりの使徒、楽師を探すふたりに連れられ、旅をすることとなったブラウリカは、兄のもとで起きたマヌダハルの腹心との戦いや、闇に染まりかけた少年との出会いを経て、ふたりが探す「光の楽師」として目覚め、オルディコスの三使徒として、マヌダハルとの戦いに挑む。
……と、こんな感じで書いてると、いかにもなヒロイックファンタジーに見えるが、ストーリーは善悪の二元論では語れない「神」をテーマにして、SFテイストもちょっと入れた物語。
1巻は、ブラウリカが「光の楽師」として目覚める物語で、当然主人公でヒロインのブラウリカが主体。
ここでは、ブラウリカの生い立ち、境遇などから光の楽師として目覚めるまでの心の動きなどがきちんと描かれ、好感が持てる。
また、3巻完結のため、伏線もきっちりと作り、この時点で勧善懲悪の二元論ではない匂いを感じさせるところもいい。
2巻は3人揃ってからのマヌダハル討伐に向けた展開だが、弱まったオルディコス神の力や怠惰な王家、貴族への不信などから、マヌダハル側の巧みな煽動などを経て、完結編へのつなぎ。
完結編となる3巻は、テーマに沿った展開とこういうヒロイックファンタジーには珍しい大団円が待っている。
で、なぜこれが1日1冊にならなかったかと言うと……テーマの扱いを大きくしすぎて、物語やキャラの扱いが薄くなったため、と言えるだろう。
おそらく、だが、設定上、神……オルディコスとマヌダハルの対立軸を勧善懲悪にならずに理屈をこねくり回そうとした結果、3巻でまとめるために汲々としてしまった、と言ったところだろうか。
特に顕著なのが3巻。
2巻のラストの出来事で陥ってしまったブラウリカの現状や、イシュラーマの思いなど、テーマを語るためにこうしたキャラの心の動きが十分に語られないため唐突な感が否めない。
また、十分でないことはキャラそのものやバックボーンを希薄にさせ、人間味を感じさせない要因ともなる。三使徒のキャラの個性だけははっきりしているだけに、余計にその個性だけが上っ滑りしてる感じがするんだよねぇ。
「神」というテーマを持ってくるのはいいが、それによって物語やキャラ(人間)というものが、理屈をこねくり回すための人形になっていては意味がない。
もし、汲々としてせず、まとめたんだとしても、テーマとか、解説とかに埋もれてキャラが人形や道具にしかなってない小説ってのは嫌いなんだよね。
まぁ、物語としてはオチはつけてくれているが、他にも「その伏線でその展開かえ?」とか、「これ、ホントに理屈通ってんのか?」とか、まぁ……ぼちぼち首を傾げざるを得ないところもあったりするわけで……。
古い作品だし、いまの作風から見れば、だいぶ違っているところがあるからなぁ、と心の中でフォローを入れたとしても、このシリーズは落第。
長くなってもいいから、もっときっちりテーマもキャラも描いてほしい、と言うのが正直なとこかな。