つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

はやったのいったい何年前だ

2007-01-06 15:41:21 | その他
さて、カテゴリ増えたよなぁとしみじみ思うの第767回は、

タイトル:グリム、アンデルセンの罪深い姫の物語
著者:松本侑子
出版社:角川書店 角川文庫(初版:H11 単行本初版:H8)

であります。

一昔……いや、二昔か……?
もっと前かもしれないけれど、流行りましたよねぇ、一時期、「本当は恐ろしいグリム童話」とか、絵本やディズニーなど、子供のころは当たり前のようにハッピーエンドだったりした優しい物語の原書が、ほんとうはすごい残酷な話だったりするのよ~、って内容の本。

本書も、そうした中のひとつ、と言えるものだが、著者のあとがき曰く、原典にある差別性などを残しつつ、パロディとして、また著者の小説として書いたもの、らしい。

で、本書で扱われている童話は、

眠り姫 → 「眠り姫が性に目覚めるとき」
白雪姫 → 「白雪姫の魔女裁判」
赤ずきん → 「おませで可愛い赤ずきん」
シンデレラ → 「シンデレラと大足の姉たち」
青ひげ → 「青ひげの失楽園」
人魚姫 → 「男の国へ行って死んだ人魚姫」
マッチ売りの少女 → 「マッチ売りの少女娼婦」

の7作。

ストーリーは、基本的に原典を踏襲しているので、ここで言うまでもないが、確かに、「シンデレラ」で姉たちがガラスの靴を履けるようになるために、母親につま先やかかとを切り落とされたり、「赤ずきん」で二匹目の狼に熱湯をかけて殺すなどのシーンはきっちり描かれている。

ただ、「マッチ売りの少女」の話だけは趣を異にして、物語よりもマルクスが「共産党宣言」をした当時の少女売春の情勢を語るのに比重が傾いている。

作品の特徴として物語の最後に、その童話で語られている教訓が書いてある。
これがまた、いまから見れば当時の感覚ってすごいのね、ってくらい。
あとは、「シンデレラ」の足の小ささに中国の「纏足」の話を持ってきたり、キリスト教的な男尊女卑の当時の社会を皮肉ってみたりと、なかなか毒が感じられるところが特徴かな。

しかし、フェミニズム的な批評がどうとか、いろいろと意図してこうしたパロディを書いているらしいが、さして興味のない話題なので「ふぅん」で終わってしまうなぁ。
差別性がどうのって話は、「へぇ、そうだったんだ」と感心して読めるが、それ以外にはなぁ。
分析タイプには、いろいろと解釈のしようもあるだろうし、おもしろいのかもしれないけれど、私みたいなタイプには筋のわかっている話をなぞるだけ、って感じでいまいちおもしろみに欠けるかな。

パロディはパロディでも、「ルードヴィッヒ革命」みたいなのだったら、楽しく読めるんだけどなぁ(笑)


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2 コメント

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魔女裁判ですよね (ぱいぽ)
2007-01-07 16:26:21
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
確かにいっとき、話題の本としてぞくぞく出ましたね。
白雪姫のあの靴は絶対魔女裁判とは思っていましたが、やっぱりそんな言及がされていましたか。7歳の子が魔女裁判…ね。なかなかです。シンデレラの纏足も面白いですね。ふむふむ。図書館で見ることがあったら手にとってみます。
あけまして (LINN)
2007-01-07 17:53:56
おめでとうございます。
こちらこそ、今年もよろしくお願いします(^^

いろいろとたくさん出ていましたが、当時、まったく手にしていなかったですねぇ。
話の筋はわかるので、原典の特徴さえ小耳に挟んでしまえばあえて読む気はしませんでした。

しかし、手に取りますか……。
実は、ぱいぽさんもあの当時、手に取っていないクチですな?(^^

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