つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

貴方ならどこの国に行きますか?

2006-07-24 23:33:28 | その他
さて、キリ番なぞくれてやるわ、と吠える第601回は、

タイトル:あなたの知らないガリバー旅行記
著者:阿刀田 高
文庫名:新潮文庫

であります。

初手から大変失礼なことを伺いますが――。

『ガリバー旅行記』を御存知ですか?

知ってるよ、小人族の国に行って縛られたり、巨人族の国でペットにされたりする話でしょ~?
――と答えた貴方、ではその続きは?

もし、始終空ばかり見つめている怪しい人々や、知性溢れる馬達が出てきたことを知らないとしたら、貴方はガリバー旅行記の第一部、第二部しか読んでいないか……あるいは、子供向けに脚色された当たり障りのないおとぎ話の面しか知らないことになります。

船が難破して、気が付いたら小人の国にいました。戦争に巻き込まれたりもしたけど、掌サイズの家畜等、珍しいものを手にして無事帰国出来ました。
船が難破して、気が付いたら巨人の国にいました。ほとんどペット扱いだったけど、それなりに面白い体験をした後、無事に帰国できました。
これだけなら、まぁ、メルヘンと言えないこともありません。

しかぁし! 真のガリバー旅行記は、そんな御子様向けの話ではないのですよ!(力説)

気になる方は、原書を当たってみて下さい。
初手の『リリパット国渡航記』の書き方からして既にメルヘンではありません。
特に、馬の国を訪れる第四部『フウイヌム国渡航記』に至ってはもう、とてもじゃないけど絵本になんてできっこない凄まじさで……。

で、本書はそんなガリバー旅行記の解説本です。
前十二章で、ガリバー旅行記第一部~第四部までの内容、作者であるジョナサン・スウィフトの人物像、その他の著作等について、お喋り口調で解りやすく教えてくれます。

ガリバー読むだけでも解るのですが、スウィフトという人物はかなり変わった性格の持ち主だったようで、それに関する指摘が結構多いのが楽しい。
かなり人間嫌いなんじゃないかと思えるような記述に対するツッコミ、女性嫌いに見えて実は気に入った相手はちゃんとキープしてたのでは? といった推測等々、当のスウィフトに聞いてみたくなるような話が満載。
それと並行して筆者自身のエピソードも数多く語られているため、ガリバーに興味がある方だけでなく、阿刀田ファンも楽しめる内容となっています。

にしても……小人族同士の戦争が当時の世相を如実に反映してたことに気づかなかった私は、かなり抜けているかも知れません。(爆)
卵の割り方の違いから反目し合うというかなりふざけた理由から始まったものなんだけど、宗教絡みの争いなんだから、ちょっと想像すれば解りそうなものなのですが……悔しいっ。
他にも、第二部『ブロブディンナグ国渡航記』が物語として印象が薄いのは何故か? とか、第四部に登場するフウイヌムとヤフーの語源とか、原書読んだ時には気づかなかったことについて色々と勉強させて頂きました。

ちょっと読みづらかったり、退屈な部分もあるガリバー旅行記を面白い作品に変えてくれます、オススメ。
『ギリシャ神話を知っていますか』にも手を出してみようかなぁ~。


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