さて、第881回は、
タイトル:サグラダ・ファミリア[聖家族]
著者:中山可穂
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H13)
であります。
カテゴリを細分化してから、な~んか恋愛小説が増えてないなぁ……と言うことで、裏表紙の作品紹介から選択。
でも分類は「小説全般」だったりして……。
さて、恋愛小説だとばっかり思って借りてきた本書ですが、ストーリーは。
『ピアニストとして様々な場所で演奏をし、生活していた響子のもとへ、1本の電話がかかってきた。
電話をかけてきた人物、それは2年前、別れた恋人の透子だった。
一生の恋人とまで思っていた相手だったが、子供が欲しい透子と子供嫌いの響子はやむなく別れることになってしまっていた。
その透子は、取材でパリに行った際に計画的に妊娠し、子供を作り、日本に戻ってきていた。
連絡してきたその日からしばらくして、透子は息子の桐人を連れ、響子に会いに来るようになる。
短い間でも恋人としての関係を取り戻しつつあったふたりだったが、それもまた1本の電話で断ち切られてしまう。
ひどく遠くからかけているような透子からの電話。
その日、透子は事故に遭い、帰らぬひととなっていた。
桐人の父親の恋人であった照と言う男性との出会いと残された桐人。
響子は、透子の言葉に導かれるように一風変わった家族への道を歩み始める。』
純粋に恋愛小説……とは言えないんだよねぇ、この作品。
前半は、響子と透子のふたりの過去や、桐人を出産してからのふたりが描かれ、恋愛小説っぽいところがあるものの、後半は透子が事故死してから、照を交えた桐人と響子の物語に移っていくから。
裏表紙の煽り文句に「とびきり切ない愛の名品」とあり、確かに「愛」を描いたものではあるんだけど。
とは言え、それはカテゴリの話で、物語としてどうか、と言うと、ほぼ終盤に至るまで、透子に対する愛情や、桐人との関係など、響子の姿がしっかりと描かれていて、なかなかおもしろく読めた、かな。
響子と透子の関係も、どろどろした部分はなく、雰囲気としては透明感があるような感じもするので、ゲイのカップルで、異質なセクシュアリティを扱ったものながら、けっこうあっさりと読める。
終盤に至るまで……はいいんだけど、このラストのほうがねぇ。
なんか、照とともに桐人を育てることにしてからの響子の変化が急すぎる感じがするのが尻切れトンボ気味で残念。
と言うか、響子さんや、いきなりキャラ変わってんぜ、とツッコミ入れたくなるくらいだったのでね。
このあたり、もっとページ数増やしてじっくり書いてほしかったかな。
ラストのほうの重要なところがいまいちなのは痛いが、それ以外はおもしろく読めたし、あれこれと知ったピアノ曲の名前とかが出てきて、曲を思い起こしながら読んだりするのは、個人的に楽しかったし、総評としてはそう悪くはない。
でも、いいところばかりではないので、良品とは言い難いけど、十分及第ってところかなぁ。
タイトル:サグラダ・ファミリア[聖家族]
著者:中山可穂
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H13)
であります。
カテゴリを細分化してから、な~んか恋愛小説が増えてないなぁ……と言うことで、裏表紙の作品紹介から選択。
でも分類は「小説全般」だったりして……。
さて、恋愛小説だとばっかり思って借りてきた本書ですが、ストーリーは。
『ピアニストとして様々な場所で演奏をし、生活していた響子のもとへ、1本の電話がかかってきた。
電話をかけてきた人物、それは2年前、別れた恋人の透子だった。
一生の恋人とまで思っていた相手だったが、子供が欲しい透子と子供嫌いの響子はやむなく別れることになってしまっていた。
その透子は、取材でパリに行った際に計画的に妊娠し、子供を作り、日本に戻ってきていた。
連絡してきたその日からしばらくして、透子は息子の桐人を連れ、響子に会いに来るようになる。
短い間でも恋人としての関係を取り戻しつつあったふたりだったが、それもまた1本の電話で断ち切られてしまう。
ひどく遠くからかけているような透子からの電話。
その日、透子は事故に遭い、帰らぬひととなっていた。
桐人の父親の恋人であった照と言う男性との出会いと残された桐人。
響子は、透子の言葉に導かれるように一風変わった家族への道を歩み始める。』
純粋に恋愛小説……とは言えないんだよねぇ、この作品。
前半は、響子と透子のふたりの過去や、桐人を出産してからのふたりが描かれ、恋愛小説っぽいところがあるものの、後半は透子が事故死してから、照を交えた桐人と響子の物語に移っていくから。
裏表紙の煽り文句に「とびきり切ない愛の名品」とあり、確かに「愛」を描いたものではあるんだけど。
とは言え、それはカテゴリの話で、物語としてどうか、と言うと、ほぼ終盤に至るまで、透子に対する愛情や、桐人との関係など、響子の姿がしっかりと描かれていて、なかなかおもしろく読めた、かな。
響子と透子の関係も、どろどろした部分はなく、雰囲気としては透明感があるような感じもするので、ゲイのカップルで、異質なセクシュアリティを扱ったものながら、けっこうあっさりと読める。
終盤に至るまで……はいいんだけど、このラストのほうがねぇ。
なんか、照とともに桐人を育てることにしてからの響子の変化が急すぎる感じがするのが尻切れトンボ気味で残念。
と言うか、響子さんや、いきなりキャラ変わってんぜ、とツッコミ入れたくなるくらいだったのでね。
このあたり、もっとページ数増やしてじっくり書いてほしかったかな。
ラストのほうの重要なところがいまいちなのは痛いが、それ以外はおもしろく読めたし、あれこれと知ったピアノ曲の名前とかが出てきて、曲を思い起こしながら読んだりするのは、個人的に楽しかったし、総評としてはそう悪くはない。
でも、いいところばかりではないので、良品とは言い難いけど、十分及第ってところかなぁ。