つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

これもアニメから入りました

2012-04-01 15:23:02 | ファンタジー(現世界)
さて、ややこしいのを読んだ後のラノベって和みますねぇの第1003回は、

タイトル:れでぃ×ばと(Ladies versus Butlers!)
著者:上月司
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'06)

であります。

上月司って読んでいますね(相方が(笑))
でもたぶん、と言うか、確か――私も読んだ気がします。
やっぱりブランクの長さはいかんともしがたく、目録見るまでこの人の作品を読んだと言う記憶がまったくありませんでした(爆)

さて、そんな著者の新シリーズですが、作品はアニメから知りました。
Amazonってどういう選考基準でオススメを決めるのかわかりませんが、しつこく薦めてくるのでレンタル(をい(笑))で見て、原作を読みました。

では、ストーリーはと言うと、

『日野秋晴は困っていた。この体勢はかなりまずかった。不慮の事故とは言え、体勢は女生徒を押し倒している構図で、片手はボリューム感満点の胸の上。
このままではいけない。そうは思うものの身体が固まって動いてくれない。
そして女生徒がそのことに気付いた瞬間――地獄の鬼ごっこは始まった。

時は少し遡って私立白麗陵学院正門。そこで秋晴は迎えを待っていた。
生粋の金持ちお嬢様ばかりが通う元女子校の白麗陵。共学化に伴い新設された従育科――執事やメイドを育成する学科に編入してきたのだ。
やや遅ればせながらやってきた迎え。編入試験のときにも見た事務員と、ひとりの女生徒。
その女生徒は秋晴を見るなり驚いて絶句して――秋晴を連れて事務員から離れていく。何故か見覚えのあるような気がする女生徒――彩京朋美は、昔のことをあれこれ言いふらすなと釘を刺す。

そのことで幼いころから数々のトラウマを植え込まれた朋美のことを思い出す。あれこれと昔のことがフラッシュバックしたり、何故こんなお嬢様学校に通っているのか、など考えつつも、お互い昔のことは口にしないことで交渉成立。
朋美の案内で学院を案内されることになったのだが、途中、朋美がトラブル解決のために呼び出されてしまう。
とは言え、約束の四時までに職員室に顔を出せばいい秋晴は、ひとりで学院内を見て回ることにしたのだが、それが災難の始まりだった。

不良っぽい見た目に眉の古傷、右耳には安全ピンの三連ピアスと、どう見てもヤンキーな秋晴がぶらぶらと散策していると不意に呼び止められた。
呼び止めたのは、どう見ても外国産、特徴的な金髪縦ロールの美少女。だが、その縦ロールは秋晴を見るなり、その姿形から不審者扱いをしてくる。しかも秋晴の言葉など聞く耳持たずで。
付き合っていられない――軽くいなして、ついでに見事な縦ロールをドリル扱いして、その場を去ろうとした秋晴に美少女――セルニア=伊織=フレイムハートは、プライドを傷つけられて怒り心頭、秋晴に襲いかかってきた。

なかなか鋭い攻撃を躱しはしたものの、体勢を崩したセルニアと秋晴はもつれ合うようにして転がり……件のセルニアを秋晴が押し倒す、と言う構図に相成ったわけだった。』

うむ、「乃木坂春香の秘密」に似た匂いがぷんぷんします(笑)
短編連作という形式や基本秋晴の一人称で進む体裁、お嬢様属性のキャラたち、従育科のメイドたち……かぶるところはそれなりにあるので、似た雰囲気に見えてしまうのは仕方ないでしょう。
まぁ、不幸体質の秋晴と「乃木坂春香の秘密」の裕人とはキャラは違いますし、裕人の語るうざったい比喩表現がないので、こちらのほうが遙かに読みやすいんですが。

さておき、現在12巻まで出ている本書ですが、第1巻の内容は、各種紹介と言ったところでしょうか。
白麗陵に編入して再会した腹黒幼馴染みの朋美、イギリス貴族の血を引くプライドが高くて思い込みの激しい金髪ドリルのセルニア、とある事情で男装して従育科に通う大地薫、天然系超絶ドジっ子の四季鏡早苗と言ったヒロインなどのキャラ紹介に、舞台となる白麗陵の紹介、どこが執事やメイドを育てるんだと言わんばかりの従育科の授業内容とそれを取り仕切る教師長の深閑、数少ない同じ従育科の男子生徒などの脇キャラの紹介などなど。
シリーズとして続けるに当たっての基本事項が第1巻では語られることになります。

ストーリーは……まぁ、バカっぽいです(笑)
と言うか、過剰なくらいおバカです。
基本線は、秋晴が各ヒロインたちが巻き起こす災難に巻き込まれると言うもので、その災難がまずあり得ないくらいバカなネタで進んでいきます。
朋美と大地は比較的常識派なので、朋美が絡むと秋晴のトラウマが刺激されはするものの、そう大きなことになりませんが、他のキャラ――特にセルニアや四季鏡が絡むととんでもないバカっぷりが発揮されます。
ここまで来ると、いっそ気持ちいいくらいです。
キャラもそれに見合った個性の突き抜けたキャラが多く、常識と言う言葉を遙か彼方へ飛ばしてくれるバカさ加減に花を添えてくれます。
文章は……ラノベだからあえては語りますまい……。いろいろ突っ込みたいところはあるけれど、ラノベだからと寛容になるのが吉でしょう。

いちおう、作品紹介には「ちょっぴりえっちなハイソ系禁断(!?)ラブコメディ」とありますが、1巻からはラブコメっぽい要素はほとんど見受けられません。
まぁ、いちおう12巻まで読んでいるので、おいおいラブコメにはなっていきますが、1巻だけ見ればどこがだ? と疑問には思います。
「ちょっぴりえっち」という部分は、まぁ、それなりです。どこかの駄作のようにヤってるシーンがあるようなことはなく、かわいらしい程度のエロさ加減です。
そういう方面を期待するとやや肩透かしを食らうような気はしないでもありませんが、「ちょっぴり」に偽りはないので文句は言えません。
と言うか、あとがきでエロコメと担当に言われて認知されつつあると書いてありますが、そこまでエロいかなぁ、この作品。
ホントにかわいらしい程度ですよ?

で、総評ですが、ラノベ点も加えて良品をあげてもいいのではないでしょうか。
話の流れも悪くないし、テンポもいい。何も考えずに単純に楽しめる軽い作品で、短編連作と言うことで読みやすさもある。
1巻だけ見ると紹介が主で物足りない部分はありますが、2巻以降、基本路線は維持しつつも、朋美、セルニアと言ったメインヒロイン以外のサブヒロインとのエピソードも絡めてラブコメは進展していきます。
キャラものとしても、個性の際立つキャラが多いし、各キャラとも立っていますのでお気に入りのキャラも見つかるでしょう。

そういうわけで、12巻までとりあえず楽しく読ませてもらっているとところも含めて良品とします。
たったひとり相手のラブコメに14巻以上もかけている「乃木坂春香の秘密」とは違って、いろんなキャラとの絡みを交えつつ、完結の道筋をつけてくれているので、シリーズとして安心して手を出せるでしょう。


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