つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

いつまで続くんだ、これ……

2012-04-14 14:20:22 | ファンタジー(異世界)
さて、とりあえずあと1冊だなぁの第1007回は、

タイトル:コーラル城の平穏な日々 デルフィニア戦記外伝2
著者:茅田砂胡
出版社:中央公論新社 C★NOVELS Fantasia(初版:'11)

であります。

図書館で借りれる茅田さんの本はあと1冊「祝もものき事務所2」だけになった。
記事にはしてないけど、「クラッシュ・ブレイズシリーズ」も全部読んでるし、残すはこれだけ。
まぁ、予約数がそれなりに多いので、3巻が出てようやく2巻なんてことにもなりかねないんだけど(笑)

さておき、本書は中編2本、短編1本で構成された外伝作品。
前の外伝とは違って、今回はデルフィニア戦記で主人公だったウォルやリィも出てくる作品となっている。
それにしても、いったいいつまでこのキャラで作品書いていくつもりなんだろうね、茅田さん。
もともとは中央公論じゃなくて、大陸書房からデルフィニアは出てたはずだから、かれこれ十何年は続いてる計算になるんだよねぇ。

ま、とりあえずストーリーは各話ごとに、

『「ポーラの休日」
デルフィニア国王ウォルの愛妾ポーラは、とある夕餉の席でウォルから休みを取らないかと提案される。住居にしている芙蓉宮から出たことのないポーラに気晴らしを、との配慮からだった。
最初は遠慮していたものの、王妃であるリィの勧めもあって、ポーラはコーラルの市街見物に出かけることになった。
そんな折、懇意にしているラモナ騎士団長の妹アランナが訪れ、市街見物に同行することに。
市街には詳しいアランナの提案で、魔法街へ行くことになったポーラとアランナ。ふたりは魔法街についてあれこれ話をしているうちに、未だくっつく気配のないイヴンとシャーミアンの話になり、ふたりをくっつけさせるために惚れ薬を買いに行くことに決定してしまっていた。

一方、そんなことが目的になっているとは知らないリィとシェラは、ウォルに頼まれてふたりの護衛のために、ふたりの後をつけていた。
女性ふたりの買い物の長さに辟易しているリィたちの前に、変装したバルロとナシアスが現れる。ふたりは魔法街で起きた誘拐事件の調査をしていると言うのだ。
折り悪く、ポーラとアランナのふたりは問題となっている占い師の館に赴き、姿をくらましてしまう。
すわ、今度はポーラとアランナのふたりまで――リィとシェラ、バルロにナシアスは大慌てで誘拐事件の解決に全力を挙げることとなるが……。

「王と王妃の新婚事情」
結婚式当日、国家間の約束事など無視して攻めてきたタンガの軍勢――結婚式を中止して戦場へ駆けつけ、タンガを退けたウォルとリィ。
戦勝に沸く中、ウォルとリィの天幕は静かだった。中止したとは言え、結婚式を挙げたふたりに遠慮して、ふたりの天幕には人が近寄ってこなかったのだが、そこではふたりが静かに闘志を燃やしていた。
色気も何もないふたりは、カード博打をしていたのだった。

「シェラの日常」
シェラがリィの侍女となってからしばらく――リィとの生活にも慣れてきたある日のこと。長雨が続いた後の晴れた日、リィは友人である黒馬のグライアで遠出をするために出かけていった。ただし、シェラが4日間煮込んだシチューがようやく食べられると言う日で、夕食までには戻ってくる、と言うものだった。
リィが出かけた後、久しぶりの晴れに西離宮の掃除や寝具の洗濯などをするシェラ。
そこへ新たな食糧管理番が西離宮で消費される食料の量が多すぎると言ってきたり、王宮の女たちに国王が頭を悩ませているもめ事について聞いたりと平穏な日常を過ごしていた。

リィがいない間は自由のきくシェラは、王宮の女たちから風邪で仕事を休んでいる女官の見舞いに行くことになり、その帰り道、どうもよろしくない雰囲気で男が貴族らしい女性に迫っている場面に出くわしてしまう。
見過ごすことができず、女性の手助けをしたシェラが待っていたのはトラブルの数々だった。』

デルフィニア戦記のファンの方には懐かしくも、楽しめる作品だろうなぁ。
「ポーラの休日」は、お約束の、実は誘拐なんかされていなくて、リィたちが勘違いで大騒ぎする作品で、オチを見ればリィたちが滑稽な道化師を演じていた、と言うもの。
「王と王妃の新婚事情」はこの人にしては(極めて)珍しく、数ページ程度のショートショートで、結婚式直後のタンガ戦での一幕を切り取ったもの。
「シェラの日常」は、平和な日常だったはずがある貴族の女性を手助けする羽目になったり、リィの刺客が現れたり、そのせいでリィが楽しみにしていたシチューが台無しになってしまうかもしれない、と言う事態に追い込まれたりと後半部分で、いろいろと展開を見せて、いったいこれのどこが「日常」やねん、とツッコミを入れたくなる内容になっていたりする。

各ストーリーの展開はともかく、こちらもまた珍しく、きちんと独立した中編、短編になっているのが茅田さんにしては珍しい。
この人の外伝作品の短編は、「レディ・ガンナー外伝」もそうだったし、「暁の天使たちシリーズ」の外伝もそうだったけど、短編連作に近く、各話に関連性があるのが今までの傾向(難点)であったので、きちんと独立して成り立っているのはいい傾向だろう。
ストーリー自体もちょっと勢いというものが足りない気はするものの、ファンならば十分に楽しめる作品となっていておもしろい。
まぁ、逆にそうでなければ意味はないんだけど……。

デルフィニア戦記のファン、もしくは茅田さんのファンならば買いの1冊であろうけど、そうでなければ人物相関図がわからないので手に取る必要はないでしょう。
まぁ、外伝作品なんてのは本編を知らなければ楽しめない側面があるので、読者限定になってしまうのは仕方がないところではあるんだけど……。

そういうわけで、読者限定という意味で総評は及第。
本編は何も考えずに単純に楽しめる作品なので、18巻という巻数をものともしない奇特な方は本編を読んでから外伝に取りかかってみてください。
基本的に本編はオススメだし、文庫版も出ているので比較的手にしやすくはなってはいるとは思うけど、さすがに18冊を無条件でオススメはしないので。


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