つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

うん

2012-04-29 14:37:28 | ファンタジー(現世界)
さて、やっと借りられたの第1012回は、

タイトル:神様のメモ帳
著者:杉井光
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'07)

であります。

これもアニメになってたね。とりあえず、ネット配信されてたので見てはいたのだけど……正直さしておもしろいとは思ってなかった。
けっこう気に入ってみてたりすると、OPやEDも自然と頭に入ってきたりするんだけど、これはもうさっぱり覚えてないし(笑)

さておき、あらすじはアニメで知ってるんだけど、ストーリーは紹介しとかないとね。

『藤島鳴海は10月に転校してきてから1ヶ月、特にクラスに馴染むこともなく、ひとりで過ごしていて、それを普通だと思っていた。
それが破られたのはある日のこと。IT選択授業がある日で、部員がひとりもいないと言う理由で入ったパソコン部に行けなくなって、屋上の階段棟の上で時間を潰していたときだった。
パソコン部と同じくひとりしかいない園芸部員の篠崎彩夏に見つかり、弱小部同士助け合おうなんて彩夏の言葉に押されて園芸部員として活動させられることになったからだった。
おまけに彩夏がバイトをしているラーメン店はなまるに連れて行かれ、そこで堂々とニートを主張する高校の先輩テツに、ミリタリーマニアの少佐、ヒモをしているというヒロに出会う。ついでに何故か流されるままにニート探偵を名乗る少女アリスにも出会ってしまう。

そんなわけのわからない状況のとき、アリスのところへ依頼者が訪れる。四代目を呼ばれた青年は、四代目が縄張りにしている界隈で行われている薬物売買の原因究明に協力してほしい、というものだった。

たったひとりで過ごしていた日常が変わった日から数日、鳴海は彩夏とともに園芸部をやっていた。これまたあの日のように彩夏に流されるまま、はなまるを訪れ、テツ先輩たちと再会し、ついでにアリスへの出前を頼まれ――何だか日常が変わってしまったような気がするそんな折り、所在不明だった、おなじニートで彩夏の兄であるトシが久しぶりに姿を見せたことをアリスから教えられ、彩夏が心配しているからと事務所にしているアパートを追い出される。
トシを連れてテツたちのいる場所へ向かった鳴海は、またもや場に流されるままゲーセン行きに付き合わされることに。ゲーセンで遊んでいた鳴海たちだったが、抜け出してしまったトシをつい追いかけてしまった鳴海は、トシと会話をし、トシがエンジェル・フィックスと言う薬をやっていることを知らされる。

それからはなまるへ行く頻度が高くなってきて、いろいろあったある日のこと、彩夏が学校の屋上から身を投げ、植物状態になってしまう。
その出来事があってからしばらく学校にも行けなかった鳴海だったが、とあることをきっかけに、彩夏の自殺未遂の真相を知るためにアリスに依頼することになる――』

いろいろ、とはいろいろなのです(笑)
それをあらすじに書いちゃうとあらすじの量が膨大になってしまうので、こんなあらすじになってしまいました、とさ。

それはそれとして……(いいんです、あらすじ書くの苦手なのはわかってます(泣))、ストーリーだけど、クラスにも馴染む気がなく、それを日常としていた主人公の鳴海が、彩夏に連れられていった先であるはなまるで出会ったテツを始めとするニートたち、そしてニート探偵と名乗るアリスと出会って変わっていく日常の中、新種のドラッグであるエンジェル・フィックスの真相究明と彩夏の自殺未遂の真相を語る、と言うもの。
ラノベに分類される小説にしては雰囲気がやや重めで、軽く読むと言うタイプのものではないのは珍しい。
で、ストーリー自体の評価だけど、よく作られていると言う印象。
鳴海が彩夏やテツたち、アリスなどとの出会いと仲間として認知される前半と、そしてトシとの出会いと彩夏の自殺未遂から動き出すエンジェル・フィックスと彩夏の自殺未遂の真相を描く後半と、流れもいいし、エンジェル・フィックスと彩夏の関係もうまく絡められているし、ストーリー展開に破綻はない。

キャラも、安易に女のコキャラを出して萌えに走るのではなく、テツたちや四代目を始めとして女性キャラよりも男性キャラのほうが多いのも珍しい。
これは別に悪い意味ではなく、安易さを求めていないと言う意味では好印象。
また、各キャラについてだけど、天才的なハッカーの能力で情報を収集し、探偵を務めるアリスや、個性も特徴も役割もしっかりしているテツたちニート陣など、それぞれキャラ立ちしていてブレはない。
主人公の鳴海についても、鳴海の一人称でストーリーが進むため、心理描写も適度。
キャラについては文句のつけるところはないと言っていいだろう。

文章面でもかなり好印象。
上記のとおり、鳴海の一人称で語られるわけだけど、一人称の視点からブレることも逸脱することもなく、また他のラノベによくある他のキャラ視点に唐突に移転したりすることもなく、一貫している。
文章の作法も、ラノベにしては――と言うより、ラノベが作法を無視しまくっていると言うべきなのだが――しっかりしている。
若干気になるところがないわけではないが、これだけきちんとした作法で書けて、表現力があるのだから、些事と言うべきであろう。

客観的に見た場合、悪いところがほとんど見当たらないので、ラノベ点を考慮するまでもなく良品、と言えるだろう。
ラノベという枠に括らなくてもいいくらい、小説としてのクオリティの高い作品。
……なんだけど、あくまで客観的に見た場合には良品、なんだよねぇ……。
いい作品だと思うし、安易な萌えに走っていないところも好印象だったりはするし、アニメ化されるくらい人気が出るのもわからないでもないんだけど、あくまで個人的には、だけどあまりおもしろい、とは思わなかった。
いい作品なのはわかるよ、うん、ホントに。……ホントだよ?
でも私個人としては別段……なわけで、続きを読みたい気にさせるだけの魅力には欠けた作品なのですよ。
だから、続きは読まないでしょう。どうせアニメで2、3巻くらいまでの話はだいたいわかってるし、アニメ自体大しておもしろいとも思わなかったし。
まぁでも、いい作品なのでオススメはする。おもしろくなかったのは私の主観なのでね。


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