つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

どっちだったっけなぁ

2006-05-14 21:56:37 | 小説全般
さて、読んでみてわかったの第530回は、

タイトル:オルゴール
著者:伊集院静
出版社:講談社文庫

であります。

表題作を含む3編の短編と、テーマに沿って描かれたショートショートが2テーマ15編、収録された短編集。

「オルゴール」
演出家の香取行雄と、ヴァイオリニストを目指しながら指の怪我でそれを断念した石本木葉子と言う女性との物語。
木葉子の父親が死んだことから故郷の山口に帰郷する新幹線の中、そして山口でのふたりを描いた作品。

「鏡の中の女」
テレビ制作会社で働くことになった堂田善一と、その会社で出会った双子の樋口不二子、早苗姉妹との奇妙な恋愛を描いた作品。
短編の中では、これがいちばん読めたかな。
鏡のようにそっくりな女性と、ラストに冒頭の情景に戻るところが鏡と言うものをうまく使っていると思った。

「女優志願」
山口の萩から女優になりたいと上京してきた香子と、それに関わった男たちの末路を描いた作品。

「スタンドの天使たち」
これはテーマごとのショートショートの恋愛小説群で、文字通り、スタンドを舞台の中心にした作品集。
ラグビーや競馬、バスケットボール、ボートなどの様々なスポーツを通して、結婚と言う出来事の中で揺れ動く女性の姿を描いたもの。

「恋愛時計」
これもテーマごとのショートショートの恋愛小説群。
こちらは「スタンドの天使たち」とは趣を異にして、40代、50代の男性を主人公にした作品集。

この作家は名前は知ってたけど、男性作家だったっけなぁ、女性作家だったっけなぁと憶えてなかったんだけど、読むとあぁ、男だな、とわかったなぁ。
文章がホント、男性作家の書き方なんだもんなぁ。
どういうことがあって、どういう心の動きをしたか、そういったのを淡々と簡潔に書いてるし。

まぁ、そうは言っても、個人的な好みとしても、短編集としても、悪くないんじゃないか、と思う。
男性作家にしては。

まぁ、いちばんよかったのは「鏡の中の女」だけど、ショートショートのうち、「スタンドの天使たち」は、基本的なテーマや構成は変わらないながらも、きっちりとまとめられていて、どれも読ませてくれる作品になっている。
でも、あっさりしてるのが、前日の「嘘なら優しく」と同様、物足りなさがある。

まぁ、不満はあるにはあるけど、滅多に読まない男性作家だし、悪くないと思ったので及第、かな。
……ちと点数甘めだけど。