つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

入門書

2006-05-19 23:21:35 | 学術書/新書
さて、たまにはこんなものをの第535回は、

タイトル:道教 シリーズ世界の宗教
著者:P.R.ハーツ 訳:鈴木博
出版社:青土社

であります。

もともとFacts On File社と言うアメリカの出版社から刊行された「Taoism」という本の訳書。
入門書、と書いたとおり、道教がどういうものか、どういう歴史を辿ってきたかなどを概説したもので、専門的で難解なものではない。

章立ては、

「道教の世界」
道教全体を概説した章。

「道教の起源と歴史」
歴史、とあるがどちらかと言うと起源のほうに重きを置いた章。
老子を始め、時代時代で道教の発展に大きな功績を残した荘子などの紹介、功績などを紹介している。

「教団道教の成立と発展」
歴史、と言う意味ではこちらのほうがふさわしい。
二世紀の初めに天師道を興した張陵から時代時代の道教や、各派の概説を経て、近現代の状況を紹介。

「経典と教義」
これはそのまま、道教における経典類や教義(理論)についての解説。

「儀式と瞑想」
道士が行う規模の大きな儀式から家族などの小さな集団が行う儀式や、道士や信者が行う瞑想の意味についての概説など。
儀式はどちらかと言うと、道士の行うそれが主体。

「道家思想と芸術」
道教の持つ思想、理論などの影響を大きく受けた中国芸術のうち、文学、絵画、書などを中心に概説。


「道教の現状」
いまの中華人民共和国の体制の中での道教を解説したもの。

内容はこんな感じで、ときおりコラムのように短く解説したものや、道徳経などの原文と訳があったりするけれど、概ね平易に書かれている。
解説を読むと、学術的には「成立道教」「民衆道教」「民間信仰」などと分けられているらしいが、そうした分類もしていない。
まぁ、ある程度の知識を持っているひとならば物足りないだろうが、入門書としてはいいんじゃないかな、と思う。

それにしても、出版されたのが1993年だからか、それとも別の理由か、結構訳者注みたいな感じで、補足があったり、実際はこう、みたいなのが書いてあったりと、それなりに手が加えられている。
また、解説の中で説明されている本書の内容よりもやや細かい説明のほうがあれば、歴史の部分は解説の部分だけでOKなんじゃないかと思えるくらいのものがあった。

まぁでも、ほんとうに、道教ってどんなの? ってくらいのひとにはいいんじゃないかなぁ。
ただ、これで2200円は確実に高いと思うけどね。