つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

乱れてます

2006-05-15 21:09:48 | ミステリ
さて、火サスで視た時は面白かったんだけどなぁ、な第531回は、

タイトル:乱れからくり
著者:泡坂妻夫
文庫名:創元推理文庫

であります。

泡坂妻夫の長編ミステリ。
火サスでドラマ化されたのを視たことがあるのですが、さて、原作の方は……。

玩具会社『ひまわり工芸』の制作部長・馬割朋浩の依頼で、興信所の所長・宇内舞子と新米社員・勝敏夫は朋浩の妻・真棹の動向を探ることになった。
だが、朋浩の依頼に不審なものを感じていた舞子は、契約時間を過ぎた後も引き続き監視を続けることにする。
朋浩が帰宅し、真棹を連れて再び現れた……なぜか、旅行姿だった。

尾けられているのを知ってか知らずか、朋浩達の車はそのまま空港へと向かっていた。
朋浩がそのまま海外へ行くつもりなら、話をしておく必要がある、と舞子は語る。
その時――空から落ちてきた何かが朋浩の車を直撃した!

えーと……泡坂作品全般に言えることなのかも知れませんが――

蘊蓄と過去話がとにかくくどい。

今回のお題は、からくり人形の蘊蓄と江戸時代までさかのぼる過去話。
十数行に渡る説明台詞と、それに対する舞子や敏夫のちょっとしたツッコミだけで延々数ページ続けるのはどうにかして下さい――眠いです。

人形話はある程度興味がある人なら楽しめるだろうからまだいいとしても、過去話は……せめてもうちょっと簡潔にして欲しかった所。
江戸時代にこれこれこういう因縁があって、この人とこの人が知己で、こういう事件があって、というのが推理に必要な情報だというのは解るけど、やっぱり退屈。
ネタは面白いし、引っかけも上手い作家なので、くどい説明会話だけどうにかしてくれればもう少しハマれるんですが。

シリーズ化を狙ってたかも知れない舞子と敏夫のコンビもイマイチ。
舞子はある事件が元で警察を追われ、虎視眈々と復帰を狙っている気っ風のいい姉御なのですが、結局謎解き役以上の存在になってません……消化不良。
元ボクサーでかなーり純情派な敏夫も、真棹との絡み以外には特に見るべきとこなし。昔の火サスや土ワイに出てくる、意味なくモテる役回り、なだけ。

ミステリとしては面白い……のかな?
からくり屋敷にある迷路とその秘密、妙に凝った殺害方法等、題名の通りのからくり的面白さはあるのかも知れないけど、それだけといった印象。
殺されるためだけに出てきた薄っぺらなキャラクター達の裏を読む気にはなれないし、犯人も絞られすぎてて探す気が起こらない……。

かなりイマイチでした、残念。
一応、終盤戦で劇的(?)なドラマがあるのですが、それ以外の物語は平坦。
でも、ドラマはもういっぺん見たいかな、柴田恭兵が主役やってたし。(爆)

もう一冊読むかどうかは、悩み中です……。
『11枚のとらんぷ』がかなり良かっただけに、もうちょっと期待したいところ。