さて、まだまだ完全回復には程遠い第518回は、
タイトル:11枚のとらんぷ
著者:泡坂妻夫
文庫名:創元推理文庫
であります。
お初の作家さんです。
読み終わった後で、『乱れからくり』を書いた人だと知りました。(爆)
アマチュア奇術クラブ『マジキ クラブ』に一つの転機が訪れた。
真敷市公民館創立20年記念ショウにおいて、四百人の観客の前でマジックを披露することになったのだ。
数々の予期せぬトラブルを乗り越え、ステージの終幕を迎えようとした時、最後にして最大のトラブルが起こった――最後に舞台に登場する筈の女性が現れなかったのだ。
彼女は公民館から少し離れた場所にある自宅で、撲殺死体となって発見された。
だが、驚くべきことはそれだけではなかった。
死体の周囲には、奇術小説集『11枚のとらんぷ』に登場する小道具が、破壊された状態で置かれていたのである。
『11枚のトランプ』は、『マジキ クラブ』のまとめ役である鹿川が記した。
十一の短編から成るそれには、クラブのメンバー全員が登場し、数多くのマジックを披露する。
なぜ、被害者は舞台を抜け出したのか? そして、犯人が死体の周りに配置した物の意味とは?
本書は三部構成になっています。
事件が発生する第一部、『11枚のとらんぷ』を紹介する第二部、そしてすべての謎が解き明かされる第三部、の三つ。
第一部と第三部はクラブのメンバーの一人・牧桂子の視点、第二部は鹿川の視点で書かれており、どちらも平易な文ですらすら読めます。
第一部のショウの描写が素晴らしい。
私が大学時代に演劇をかじっていたこともあるかも知れませんが、舞台と客席の空気が感じられるのです……しかも、舞台袖という一番美味しい位置で!
ほとんど素人に近い桂子の視点も効果的に使われており、初めて舞台に立つような感覚で読めます、すごく楽しい。
しかし、第二部の作中作『11枚のとらんぷ』の出来はそれを凌駕します。
メンバー一人一人が披露するマジックのタネを、探偵役である鹿川が推理するというショートショートで、短いページ数ですごく綺麗にまとめています。
作者本人がマジシャンということもあって、登場するマジックもひねりの効いたものばかり、気楽な気持ちで読んでいると思わず足元をすくわれることも……。
第三部については、あまり多く書くことがありません。
鹿川の奇術講義は……長くて、ちょっとくたびれました。
ただ、今までの伏線をフルに使った謎解きは読み応えがあります。
久々に感情移入して読んでしまいました。
舞台上で失敗しておろおろしたり、肝心な時に小道具がなくなって全員で探したり、進行がズレてしまったり、といった部分の書き方がすごく上手いのです。
一つの舞台をやり終えた時の開放感、観客の反応を見る時の気分、失敗するなよ~とか考えながら仲間の演技を見ている時の感覚等々、ちょっと懐かしい気分になれました。
あ、もちろんミステリとしても良作。
『11枚のとらんぷ』だけで一つの作品として完成されているので、そこだけ読んでも面白いのですが、実は中に全体の謎を解くためのヒントがあったりします。
最後の犯人当ては……誰が犯人かは想像つきますが、特定しようとするとかなり苦労します、私はあっさり諦めました。(爆)
すごく贅沢な作品です、かなりオススメ。
昭和五十一年の作品ですが、古さはまったくありません。
ラストが唐突なのがちょっと気になるぐらい、かな。
タイトル:11枚のとらんぷ
著者:泡坂妻夫
文庫名:創元推理文庫
であります。
お初の作家さんです。
読み終わった後で、『乱れからくり』を書いた人だと知りました。(爆)
アマチュア奇術クラブ『マジキ クラブ』に一つの転機が訪れた。
真敷市公民館創立20年記念ショウにおいて、四百人の観客の前でマジックを披露することになったのだ。
数々の予期せぬトラブルを乗り越え、ステージの終幕を迎えようとした時、最後にして最大のトラブルが起こった――最後に舞台に登場する筈の女性が現れなかったのだ。
彼女は公民館から少し離れた場所にある自宅で、撲殺死体となって発見された。
だが、驚くべきことはそれだけではなかった。
死体の周囲には、奇術小説集『11枚のとらんぷ』に登場する小道具が、破壊された状態で置かれていたのである。
『11枚のトランプ』は、『マジキ クラブ』のまとめ役である鹿川が記した。
十一の短編から成るそれには、クラブのメンバー全員が登場し、数多くのマジックを披露する。
なぜ、被害者は舞台を抜け出したのか? そして、犯人が死体の周りに配置した物の意味とは?
本書は三部構成になっています。
事件が発生する第一部、『11枚のとらんぷ』を紹介する第二部、そしてすべての謎が解き明かされる第三部、の三つ。
第一部と第三部はクラブのメンバーの一人・牧桂子の視点、第二部は鹿川の視点で書かれており、どちらも平易な文ですらすら読めます。
第一部のショウの描写が素晴らしい。
私が大学時代に演劇をかじっていたこともあるかも知れませんが、舞台と客席の空気が感じられるのです……しかも、舞台袖という一番美味しい位置で!
ほとんど素人に近い桂子の視点も効果的に使われており、初めて舞台に立つような感覚で読めます、すごく楽しい。
しかし、第二部の作中作『11枚のとらんぷ』の出来はそれを凌駕します。
メンバー一人一人が披露するマジックのタネを、探偵役である鹿川が推理するというショートショートで、短いページ数ですごく綺麗にまとめています。
作者本人がマジシャンということもあって、登場するマジックもひねりの効いたものばかり、気楽な気持ちで読んでいると思わず足元をすくわれることも……。
第三部については、あまり多く書くことがありません。
鹿川の奇術講義は……長くて、ちょっとくたびれました。
ただ、今までの伏線をフルに使った謎解きは読み応えがあります。
久々に感情移入して読んでしまいました。
舞台上で失敗しておろおろしたり、肝心な時に小道具がなくなって全員で探したり、進行がズレてしまったり、といった部分の書き方がすごく上手いのです。
一つの舞台をやり終えた時の開放感、観客の反応を見る時の気分、失敗するなよ~とか考えながら仲間の演技を見ている時の感覚等々、ちょっと懐かしい気分になれました。
あ、もちろんミステリとしても良作。
『11枚のとらんぷ』だけで一つの作品として完成されているので、そこだけ読んでも面白いのですが、実は中に全体の謎を解くためのヒントがあったりします。
最後の犯人当ては……誰が犯人かは想像つきますが、特定しようとするとかなり苦労します、私はあっさり諦めました。(爆)
すごく贅沢な作品です、かなりオススメ。
昭和五十一年の作品ですが、古さはまったくありません。
ラストが唐突なのがちょっと気になるぐらい、かな。