ZAINICHI SENKYOというグループがある。
韓国内に居住する在日同胞が中心となって、在外選挙の広報や韓国の選挙に絡む様々な情報を発信しているグループである。
そのホームページに興味深い記事の翻訳が載ったので紹介したい。
http://zainichisenkyo.tistory.com/217
"私は望む、私に禁止されている選挙権を"
記事入力2007-06-07 09:45
[週刊東亜]
"韓国国籍を持ってはいても、日本でも韓国でも一度も選挙をしたことがありません。私だけでなく、父、兄、姉も同じです。日本でも外国人、韓国でも外国人、ならばいったい私の国はどこなのでしょうか?"
5月14日夜、在日同胞学生らが通う建国高校の英語教師李相恩(27)さんの電話の声は少し興奮ぎみだった。李さんは日本在住で韓国国籍を持っている "在日国民"であり、2004年にチェ・サンヨン氏など9人と共に、"公職選挙および選挙不正防止法"(以下、公職選挙法)に対して憲法裁判を提起した人物である。公職選挙法は選挙人名簿の対象者を、管轄区域に"住民登録"されている国民に限っており、国内に住民登録証がない在外公館員や韓国籍を持つ在外同胞の投票への参加を阻んでいる。この事件は、5月10日、憲法裁判所(以下憲法裁判所)が公開弁論を行ったことから、改めて世論の関心事として台頭している。
国内に住民登録できない在外同胞の投票参加を妨げる
裁判の過程で国民の信頼を高めるため、該当分野の専門家や参考人の意見を聞く公開弁論は、これまで新聞法や私立学校法など、社会的影響が予想される重要な案件に対して行われてきた。
特に請求側(チョン・ジソク弁護士·法律事務所ナムガン)と被請求人側(外務省·選管委)の間で賛否両論が激しく対立した今回の公開弁論は、大統領選挙を7ヵ月に控えた時点で行われたことから特別な意味を持っている。今後、憲法裁の決定に従って選挙の変数となる可能性もある。2005年を基準とした海外滞在者は114万人、永住者は170万人と推算される。彼らが大統領選挙時における当落を決定づける票が、数十万票(1997年39万票、2002年に57万票)に過ぎないことに照らしてみると、これは無視できない数値だ。
"これまで数名の方が同様の趣旨で憲法訴訟を提起してきたが、すべて棄却され、関心を集めることもできませんでした。でも、今はこのように公開弁論まで開かれ、私の家族のみんなが選挙権を持つことができるという希望を抱いています。選挙権は人間の基本的権利であり、国民の権利です。したがって、私たちも当然得て然るべき権利だと思います。 "
韓国国籍を持っている在日同胞は60万人にのぼる。彼らは植民地時代に致仕方なく日本に定着し、これまで様々な差別を受けながらも、帰化せずに韓国籍を守り通してきた第1世代とその子孫である。
李氏が参政権問題に関心を持つようになったのは、ある意味自然なことだった。彼女の父である李健雨(55·事業)さんは長い間、在外同胞参政権を取り戻すための運動を行ってきた人物だ。李さんは、そんな父親のもとで堂々と韓国人として生きてきた。
私は日本で外国人(韓国人)として生きてきた。韓国人であることを隠したこともなく、隠したいという気持ちもありませんでした。それはすべて親の教えのおかげだったと思います。日本名(通名)を使ったこともありません。日本の学校でも、 "私は韓国人だ"と堂々と言っていました。ところが私たちの兄は高校の時に差別を激しく受けました。一日に数十回も家に脅迫電話がかかってきて、"キムチのにおいや!早く帰れ!"などとひどい言葉を聞かされたので、私の方がより大きい衝撃を受けました。"
日本社会では在日同胞に対する社会的差別は今も変わっていない。このような差別のせいで日本への帰化を選ぶ人々が毎年大きく増えているという報道もあった。日本社会で楽に生きていくため、"韓国人であることを隠すために"帰化する人々が増えており、"通名"を持っている人も相当数に及んでいる。
李相恩さんは韓国の教壇に立ちたかったが、韓国社会の差別のせいで夢を成し遂げることができなかった。
高麗大学校付属高校での教育実習時の学生たちと一緒に。
"それでも私は日本人に帰化したいという考えはありません。帰化して変わることは何でしょう?私の心は韓国人なのに、どうして日本人になれるのでしょうか。日本人になって、その後私が彼らのように韓国人を差別する必要がありますか?それとも私たちのように苦しんでいる人々を見ても見ない不利をするのですか?そうしたとしても、この厳しい状況が少しも改善されることはないと思います。 "
韓国で大学に通いたかった彼女は、1999年に日本で高校を卒業し、ソウル大学路にある国際振興院の語学堂に入って韓国語と受験勉強を同時に行った。そして翌年、高麗大の英語教育科に入学した。その時から彼女は大学卒業後、韓国で教師生活をすると決めていた。
韓国で教師になるなら海外永住権を放棄しなければ
しかし、韓国社会もまた、彼女を異邦人扱いした。彼女は住民登録がないのでeメールさえ利用することができない上、医療保険の給付も受けることができなかった。(現在は一部改正されている・訳者註)携帯電話は知り合いの人の名義を借りて使用した。
"日本では幼い頃から韓国人だという事実を忘れずに生きてきました。ところが韓国で暮らすことによって、むしろ私は果たしてどの国の人間なんだろうかという疑問がわいてきました。他人は在日同胞だと言うと、日本人扱いしましたから。 "
さらに大学を卒業して教員採用試験の準備していたにもかかわらず、"海外永住権を持つ者はその永住権を放棄しなければ教員免許を得ることができない"という話を聞き、彼女は5年間の努力が水の泡になるような感覚を覚える程の衝撃を受けた。
"大学4年生の時、高麗大付属高校に教育実習を行って1年生を受け持ち、1ヶ月間教えました。深い情を覚え、お別れのときには学生たちが、"教師になったら私たちの学校に来てください。先生が担任になってください"と言ってとても感激しました。だからこそ、韓国の教壇に立ちたかったのですが... "
韓国社会に対して悲しい気持ちを覚えたが、彼女は韓国文化や韓国の人々が好きなので韓国で暮らしていきたかった。再び日本語教育学科に入って日本語教師になろうと思ったのもそのためだった。しかし、再び大学に通うだけの状況ではなかった。結局、彼女は2年前に日本に戻って母国の言葉と文化、歴史を教える"民族学校"の教壇に立つことになった。
"幼い頃は、韓国国籍を守って生きなければならないとか、韓国人と結婚しなければならないという話や、日本社会で暮らすには日本人の2倍がんばって生きなければならないという父の言葉があまり胸に響かなかった。ところが、今はその言葉が理解できます。日本人と結婚すれば、韓国に対する私の心や在日同胞として生きてきた人生を理解してもらえなさそうなので、ぜひ韓国の人と結婚したいです。"
李氏はこのように心配そうに母国を想って生きている間、韓国社会は彼女に何をしてあげたというのか。政界では在外同胞参政権問題を人間の基本権という次元ではなく、"票"の論理で眺めてきた。外交通商部は今回の公開弁論で、在外同胞に対する参政権の付与は、"居住国での現地化よりも、政府による各種支援に対する期待心理や過度の母国指向性を触発する可能性を勘案し、慎重に検討すべき"と回答した。さらに韓国社会は、一定の範囲の在韓外国人に対してさえも住民投票と地方自治選挙権を与えているが、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうちで唯一、在外国民に参政権を与えていない。
"屈することなく国籍を守る私たちの同胞のために、未来の世代のために参政権はひじょうに重要だと思います。私たちの学校でも毎日多くの同胞の子供たちが母国の言葉と文化、歴史を学んでいます。その中には、私のように母国への希望や期待を抱いて韓国の大学に進学したいという学生もいます。そのような子供たちに私が受けた衝撃や絶望をそのまま受け継がせたくありません。また、今年の大統領選挙では必ずしや投票できれば嬉しいです。 "
チョン・ヒョンサン記者 doppelg@donga.com
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます