元禄の頃、三囲神社境内の白狐祠を守る老夫婦がいました。願い事のある人は老
婆に頼み、老婆は田んぼに向かって狐を呼びます。すると、どこからともなく狐が
現れて願い事を聞き、またいずれかへ姿を消してしまうのです。不思議なことに、
他の人が呼んでも決して現れなかったそうです。
芭蕉門下の第一人者といわれた宝井其角は、そのありさまを「早稲酒や 狐呼び
出す 姥が許」と詠んでいます。老婆の没後、里人や信仰者がその徳を慕って建て
たのがこの老夫婦の石像であると伝えられています。石像には、元禄十四年辛巳五
月十八日、四野宮大和時永と刻まれています。(墨田区教育委員会)