昨日、佐保川の満開の木の下で、ひとりのおばあさんが陸を見て、ニコニコしながら近づいてきた。「大きい犬やなあ」と陸に手を伸ばしてきた。陸はじっとしたまま、尻尾を振っている。「大きいけど、おとなしいなあ」と、おばあさんは陸をなでなでした。そして陸を見ながら「犬好きやけど、ばあさんやから、もう飼われへんのや」と寂しそうに笑いかけた。最後に陸をひとなでして「あんた、長生きするんやで」と言い残して、また歩いていった。
きっと、さっきのおばあさんは、最近飼っていた犬が亡くなったのかも知れない。長生きするんやで、と言ったのは、だからなのだと気付いた。そして飼えんのやを意味することは、これから犬を飼い始めたとしても、・・・。この先は考えないでおこう。それは、そういうことなのだから。やがて陸も老いる。私たちだって老いる。だから陸にはできる限り長生きしてもらわなければ。その先は、考えたくないから。やがて桜は散るけれど、来年にはまた咲く。今は桜だけを楽しもう。おばあさんも、長生きしてくださいね。